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ヨーロッパで落雷被害多発 雷から身を守るには

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:アフロ)

28日(土曜)、ヨーロッパ各地で落雷による被害が多発しました。

ポーランド南部では下山中の40代の男性が雷に打たれて死亡。その他3人も負傷。

ドイツ西部では、サッカーの試合中に落雷が起こり、30人以上が病院に搬送され、審判ら大人3人が重傷。

フランス・パリでは誕生日パーティーが開かれていた公園に雷が落ち、子供8人を含む11人が負傷。このうち子供2人が重傷。

(ニュース出典:AFP通信Sky News)

警察によると、ドイツでは「落雷当時は雨が降っておらず、空も暗くなかった」、そしてパリでは「樹木のそばに逃げていた人々が負傷した」といいます。これらは、一見安全な状況や行動のようにも聞こえますが、実はそうではないのです。

青空でも雷の危険

空が晴れていたら誰もが安全だと油断するでしょうが、実は青空でも雷の音が聞こえたら、落雷の危険があります。雷の音が聞こえる場所は、雷雲からおよそ15キロほどしか離れていません。雷の音が聞こえたら、雷の射程圏内と考えて早めに避難したほうがよいのです。

過去の記録には、雷雲から80キロ先に、雷が検出されたことがあります。

2014年夏、愛知県扶桑町で野球をしていた高校生が亡くなった痛ましい事故がありましたが、その際も雨が上がり、空は晴れていました。

樹木の下はとても危険

嵐が近づいて来たら、雨もしのげるし、あの高い木の下に逃げ込もうと、多くの人が思うでしょうが、これは最も恐ろしい行動です。雷は高いところに落ちる性質があり、特に周りに何もない場合は、その木が雷の標的となり、その下にいる人も感電する危険が高くなります。周りに木の他に何も隠れる所がなかったら、木から少なくても2メートルは離れて、雷が通り過ぎるのを待つのが賢明です。

2013年夏、東京都荒川の中州で釣りをしていた人たちが木の下に逃げ込み、1人が死亡、2人が負傷を負ったという事故がありましたが、その時、たった一人軽傷だった男性は、木から3メートル以上離れたところにいたといいます。

世界と日本の雷事情

アメリカでは年間400人以上が落雷の被害を受け、そのうち60人ほどが死亡しています。またインドでは、落雷が最も死者数の多い自然災害で、年間で平均1500人が死亡。世界では特にアフリカで人的被害が多く、その中でもマラウィが突出して死亡率が高くなっています。一方日本では、年間約3人とも言われています。

ちなみに、アメリカの研究によると、雷に当たった人のうち、約1割が死亡、7割に長期的に深刻な障害が残るといいます。

夏は雷シーズン

日本の落雷被害の最も多いのが夏で、その中でも7・8月が特に多くなっています。これからの落雷シーズンに備え、十分な知識を持って身を守ることが大切でしょう。

<雷の役立つサイト>

気象庁 「雷から身を守るには」

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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