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ブーメラン台風10号、来週前半に日本上陸へ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ヨーロッパ中期予報センター発表の29日夜の予想。(初期値24日12UTC)

ライオンロック(獅子山)----。実に勇ましい国際名のついた台風10号は、大きな脅威となって、日本に近づいています。もし上陸すれば、2週間で台風4個上陸という、異常事態となります。

現在の状況と今後の進路

25日15時発表の台風進路図。気象庁。
25日15時発表の台風進路図。気象庁。

現在10号は、沖縄の西の海上にゆっくりとしたペースで南西に進んでいます。中心気圧は945hPa、最大風速45メートル、上から2番目に強いカテゴリーである「非常に強い」勢力となっています。26日(金)まではほぼ停滞を続ける予想ですが、問題はその後です。

27日(土)には、最上位のカテゴリーである「猛烈な台風」へと発達し、進路を急に北東へと変える見込みです。

台風10号は、高い海水温の上を進むため発達する予想。気象庁。
台風10号は、高い海水温の上を進むため発達する予想。気象庁。

急激にUターンする動きから、「ブーメラン台風」とでも名付けましょうか。

日曜日には、再び「非常に強い」勢力まで戻るものの、29日(月)夜から30日(火)朝にかけて、東北から四国地方のどこかに上陸する可能性が高くなってきています。

関東史上、最強の台風となる恐れ

日本に上陸した台風の中で、気圧の低い順に並べるとこうなります。

1 925hPa/1961年・高知県

2 929hPa/1959年・和歌山県

3 930hPa/1993年・鹿児島県

4 935hPa/1951年・鹿児島県

5 940hPa/1991年・長崎県

5 940hPa/1971年・鹿児島県

5 940hPa/1965年・高知県

5 940hPa/1964年・鹿児島県

5 940hPa/1955年・鹿児島県

5 940hPa/1954年・鹿児島県

(1951年以降。気象庁の台風データより。)

共通点は、いずれも西日本に上陸していることです。台風は、九州・四国・東海・近畿地方の順に上陸数が多く、ついで関東地方となっています。関東が台風の直撃にあったのは、この60年間でおよそ10回だけです。

また、関東では、上陸時の気圧が945hPa未満の台風は観測されたことがありません(参考:デジタル台風)。

ややもすると、今回の台風10号が、関東の観測史上最強の台風として、上陸する可能性だってあるのです。

富士山測候所記念日に直撃か

ところで、台風上陸の予想される8月30日(火)は、富士山測候所記念日です。

写真提供:磯弘さん
写真提供:磯弘さん

新田次郎著「芙蓉の人」の題材ともなっていますが、富士山観測所は1895年8月30日に、民間人・野中至氏が私財を投じて建設を完成させました。

この、日本一究極な場所に位置する測候所では、数々の日本記録が観測されました。その一つが、日本一の最大瞬間風速となる、91.0メートルの突風。この風は、1966年台風26号によりもたらされました。

26号の台風上陸時の中心気圧は、960hPa。残念ながら富士山測候所では、もう風速観測は行われていませんが、もし台風10号が日本直撃となると、これ以上に強烈な風が吹くこともありえます。

来週は大荒れが予想されますので、最新の気象情報に、どうぞご注意ください。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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