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台風18号があまり発達しない理由

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
9月13日午前9時(水蒸気画像)

今朝03時、小笠原諸島の南東海上で台風18号が発生しました。

この台風は二日ほど前から、マリアナ近海で熱帯低気圧としてウロウロしており、いつ台風になるのか、注目されていました。

マリアナ近海は海水温が高い海域であり、しかも日本付近に やってくる強い台風は、この海域で発生したり、成長することがよくあります。(有名なのは伊勢湾台風)したがって、この海域の事を、昔の予報官は「台風のエリート養成所」などと言って、注意喚起を呼びかけたりしていました。

今回の18号もその海域出身で、しかも今年は海水温が30度以上と高いので、一見台風が急激に発達するようにも思えます。しかし今回は、それほど発達することはないのではないかと考えらています。

なぜ、発達しないのか?少し理屈っぽいかもしれませんが、理由を以下に書いてみます。

台風が発生・発達する条件はいくつかありますが、まず対流圏下層で低気圧性渦度があること。渦を巻く力が弱いと、台風のエネルギーである水蒸気を、効率よく集めることが出来ません。

次に上空と地上付近の風の差(鉛直シアという)が小さいこと。風の差が大きいと、台風の渦が壊れてしまいます。

さらに対流圏中層が湿っていることというのも、重要な条件です。なぜなら、台風中層が乾燥していると、台風上層から降ってきた雨が蒸発し、雨が蒸発するときに熱を奪うからです。

つまり中層に乾燥域があるということは、台風域内の温度を下げ、水蒸気の潜熱をエネルギーとする台風にとっては、発達が抑えられることになってしまいます。

(注:水は蒸発するときに熱を奪い、水蒸気が水に戻るときに、その熱を出す)

衛星画像をご覧いただくとわかりますが、台風の北西方向に、黒い部分(乾燥域)が舌のように侵入しています 。この乾燥空気の存在が、今回の18号がいまひとつ発達しきれない理由だと考えられます。

もちろん、これは現在の状況を述べただけで、今後の台風の進路等については、最新の予想データを参考にしていただきたいと思います。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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