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気象予報士 就職は雨模様

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
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先日(6月18日)の日経新聞に、「気象予報士 就職は雨模様」という記事が載りました。朝刊最終紙面で、しかも扱いが大きかったので、気象業界に携わる者としては、有り難い(応援)記事だったと思います。

ただ「気象予報士」という資格にこだわるあまり、「苦労して難しい資格を取ったのに仕事がない・・・」というステレオタイプの記事になっているように感じました。

記事の見出しにもありますが、気象予報士試験は今年の8月で20周年を迎えます。私も第一回の試験を受けましたが、ケアレスミスと考えすぎで落っこちてしまい悔しい思いをしたことを覚えています。どういうわけかその後、「気象予報士試験は難しい」というふうにマスコミ等でも取り上げられるようになりました。

当時、気象予報士に合格するには、基礎学力があっても600時間くらいの学習量が必要と言われていましたが、塾講師によると現在では平均で1000時間くらいはかかるようです。それでもその後、就職難という事もあったのかも知れませんが、受験生は増加傾向が続き気象予報士の数も増えていきました。

そして現在では約9000人の気象予報士が誕生していますが、ここへきて受験生が減りはじめ、また気象予報士自体も活躍の場が減っているのではないかと言うのが、新聞記事の指摘です。

まぁ、それはその通りなのですが、私が違和感を持つのは「資格=職業」としての図式です。そもそも資格とは、その職業の最低限のスキルを、政府なりその職業に携わる団体なりが保証するものに過ぎません。とすると、それは資格を取ったから自動的に職業になるというものではありません。

したがって、気象予報士を取ったから予報業務を、というのは短絡的だと思います。

アメリカのマクロ経済学者、ミルトン・フリードマンは『資本主義と自由』の中で、「職業免許制度」について論じています。フリードマンは弁護士も医師も、およそ資格というものは自由主義の原則から言えば要らないものだと述べています。

ある病院のクオリティや信用が高くて医師の技術が高ければ、確かに資格は不要のものになります。

実際には、そのクオリティや信用の基盤が要りますから、ある程度国家などの認証は必要なのかも知れません。しかし重要なのは、やはりその職業人のスキルなのでしょう。

個人的に言えば、私は気象予報士試験はもっと簡単になって、どんどん気象予報士が増えた方がいいと思います。職業と言うのは、お金をもらってスキルアップしていくものであり、気象業務ということに関して言えば、実務の中で育っていくものだと思います。ですから、自動車の運転免許と同じように、一定程度の知識があれば、どんどん気象予報士を誕生させたほうが気象業界の発展につながるのです。

気象予報士9000人と言いますが、 日本の成人比では、わずか0.01%です。まさに一万人に一人しかいないわけで、気象予報士は少なすぎるのです。

気象予報士の職業的価値を上げようと、この資格試験をもっと難解にとか、更新制度を考えている向きもあるようですが、本末転倒と言わざるを得ません。

気象予報士試験の垣根が低くなって、もっと他分野から予報士業界に参入する人が増えてこそ、予報業務も増えていくのだと、私は思います。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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