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インドネシア皆既日食が見られる確率は30%か?

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
2010年7月イースター島・撮影 森田正光
2010年7月イースター島・撮影 森田正光

日食病

2016年3月9日午前、インドネシアの島々から太平洋にかけて皆既日食が見られます。

日本からも多くの方が日食ツアーなどに参加するようで、私の知人からも「今回も見に行く」との連絡をいただきました。

私自身もカリマンタン島のバリッパパンというところへ弾丸ツアーで観察に行く予定です。私が皆既日食を見に行くのは今回で5度目ですが、周囲の人からはなぜ何度も行くのだろうと呆れられています。

それは私が、多分「日食病」に罹っているからだと思います。日食病という言葉が誰によって言われだしたのかは分かりませんが、一度皆既日食を見るとその美しさに感動して、何度も何度も皆既日食を追いかけるというのが、病の特徴的な症状です。

ここで皆既日食という言葉をくどく使っていますが、実は日食には皆既の他に金環日食と部分日食があります。太陽の縁が消えずにリングのようになるのが金環日食で、4年前の5月に日本でも観測されました。

しかし、金環日食と皆既日食では太陽が月に隠されるという点では同じでも、まったく違う現象だと私は思います。

作家の故・赤瀬川原平さんは、著作「じろじろ日記」の中で「金環食が10万円だとすると皆既日食は100万円ぐらい」と述べていますが、私自身はもっと大きな差があるように思います。金環食は太陽の一部が消え残ることによって、空がまっ暗くならないのです。もちろん肉眼で見ることもできないし、皆既の時のように空に星が出ることもありません。

私の中で日食の記憶があるのは、小学生の時です。ローソクの煤で黒くしたガラスの破片で見たと覚えていますが、現在では、この方法は目を傷める危険なやり方と分かっていますので、太陽を見るときは必ず日食メガネを使う事をお薦めします。

ちなみにこの日食は1958年4月19日に起こったもので、八丈島では金環日食が観測されたと、記録に残っています。

インドネシアは雨期

さて、今回のインドネシア日食ですが、はっきりいって条件は良くありません。皆既日食が起きる陸地の皆既帯は位置的には雲の出やすい赤道近傍で、しかも現在は雨期です。スマトラ島パレンバンの雨量は3月が一番多くて200ミリを超えます。

気象衛星の画像などでも毎日のように雲が湧き出ているのが観察されます。さらにコンピュータの雲量予想でも、雲の出ない領域を見つけるのが難しいくらい雲だらけの予想です。

ざっくり言ってインドネシア全体では、この時期は70%くらいが雲におおわれ、私見では皆既日食が見られる確率は30%くらいと覚悟しています。

ただひとつ楽観的な見通しを述べれば、今年はエルニーニョが発生している事です。エルニーニョ年はインドネシア近海の対流活動が弱まることが多く、その意味ではいつもの年よりは雲が発生しにくいと言えるでしょう。

ところで、曇りや雨の時の皆既日食はどうなるかというと、これはただ単に、突然空が雷雨の時のように真っ暗になるだけで、その後、こんなに苦労して来たのにという残念な気持ちが徐々に湧いてきます。

ときには地平線上が夕焼けのように赤くなることもありますが、それも雲が厚ければみられません。

なお今回の日食は、日本では部分日食となります。東京でも最大15%くらい欠けた太陽が水曜日(9日)の午前11時過ぎに見られます。

繰り返しますが、観察されるときは絶対に肉眼で見ないようお願いします。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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