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エイバルで主力を張りながら招集が見送られた乾貴士 肩透かしを喰らった「代表待望論」

森田泰史スポーツライター
メッシと対峙するなど、乾は確実にスペインで成長している(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

この男を、日本代表に呼んでほしかった。そう考える人は少なくないのではないだろうか。

今季スペイン移籍2年目を迎えている乾貴士は、エイバルで左サイドハーフとして躍動している。1月22日に行われたリーガエスパニョーラ第19節バルセロナ戦では、2005-06シーズンに大久保嘉人(現FC東京)がマジョルカで記録した39試合を上回り、スペイン1部の日本人選手最多出場記録を更新。現在、その記録を47試合にまで伸ばしている。

「なぜタカは代表に呼ばれないんだ?」

あるスペイン人サッカー関係者は首を捻った。エイバルが拠点を置くバスク出身の彼にとって、乾が日本代表に招集されない事実は不可解だったに違いない。

■ヨーロッパリーグ出場を睨むエイバルで主力を張る乾貴士

エイバルはリーガ第28節終了時点で8位に位置。6位レアル・ソシエダとは勝ち点7差で、来季のヨーロッパリーグ出場権獲得も夢ではない状況だ。そのエイバルで、乾はここまで1470分に出場している。これはチーム内で8番目の数字だ。確かにゴールこそないものの、ホセ・ルイス・メンディリバル監督率いるチームで完全に主力になったと言える。

しかしながら代表戦にはしばらく縁がない。乾が最後に日の丸を着けたのは、2015年3月31日に行われたJALチャレンジカップのウズベキスタン戦(5-1)。この試合では先発して61分までプレーしている。ヴァイド・ハリルホジッチ体制で試合に出たのは、この1試合だけだ。

奇しくも、ハビエル・アギーレ日本代表前監督は乾を高く評価していた。2014年のキリン・チャレンジカップで乾を“試運転”させたメキシコ人指揮官は、アジアカップで乾をスタメン起用し続けた。

4-3-3の3トップの一角として、本田圭佑(ミラン)と岡崎慎司(レスター・シティ)とともに乾を据えた。準々決勝でアラブ首長国連邦に1-1の末PK戦で4-5と敗れたが、乾は4試合すべてに先発出場。オサスナ、アトレティコ・マドリー、サラゴサ、エスパニョールとスペインの名門クラブを率いた名将は、エイバルでの活躍を見越すように乾を代表で重宝していたのである。

■スペイン移籍後、変貌を遂げた乾のプレースタイル

約2年代表戦から遠ざかっている乾だが、ハリルホジッチ監督はその間彼を追い続けていたのだろうか。以前の乾は足元でボールをもらいドリブルを仕掛けるタイプの選手だったが、エイバルに移籍してからそのプレースタイルは変貌を遂げている。

“エイバル・スタイル”とさえ称される激しい前線からのプレッシングを持ち味とするチームで、彼はチェイシングの先鋒として指揮官の評価を得た。エイバルのスタッフは「タカの最初の2、3歩はリーガのどの選手にも止められない」と口にする。

今の乾はオン・ザ・ボールで技術を見せ付けるだけの選手ではない。そのオフの動きが、確かにチームの支えとなっている。そして、それはそのままハリルホジッチJAPANで生かせる類のものであったはずだ。

だが23日、戦いの舞台は切って落とされる。アウェーでのUAE戦。ハリルホジッチ監督の手腕に注目が集まる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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