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サンウルブズ最年長の大野均、開幕節の脳震盪と盟友引退を語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
空中で相手と競り合う大野。気迫で周りを引っ張る。(写真:ロイター/アフロ)

日本代表として歴代最多の96キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇る37歳の大野均は、2月27日、世界最高クラスのスーパーラグビーでもデビューした。日本から初参戦するサンウルブズのロックとして、東京・秩父宮ラグビー場でのライオンズとの開幕節に先発。13―26で敗れた。

地元の福島県郡山市にある日大工学部キャンパスで楕円球と出会った大野は、人づてに入部試験を受けた東芝で一気に台頭した。身長192センチ、体重105キロという体躯と恵まれたスピード、献身的な資質が持ち味で、朴訥な人柄と酒豪ぶりから人気も高い。

2015年の9、10月には、4年に1度のラグビーワールドカップに3度目の出場を果たした。9月19日の予選プール初戦では、過去優勝2回の南アフリカ代表を34-32で下し、大会24年ぶりの白星を掴む。歴史的な3勝を挙げ、帰国した。

サンウルブズからは、存亡の危機がささやかれた昨年8月にオファーが届いた。「自分が断ったことでチームが消滅したら後悔する」と契約を決めた。いまはチーム最年長選手として、ラインアウトのサイン発動役などを担う。

3月2日は、14日の第3節(対チーターズ・シンガポールナショナルスタジアム)に向け、東京・辰巳の森ラグビー場で練習をおこなった。一部別メニューとなった大野は、開幕節では28分まで出場していた。その直前、タックルした際に脳震盪のような症状を覗かせたがそのまま立ち上がってプレー続行を試みていた。足がふらついたまま相手の攻撃方向を追いかけ、力尽きてタッチラインの外へ出た。

練習後には単独取材に応じた。1日に引退した同じ東芝のチームメイト、廣瀬俊朗のことも語った。廣瀬は2012年春から2年間、日本代表のキャプテンを務めたリーダー格。昨秋のイングランド大会では試合出場こそなかったものの、チームに影響力を与えた。引退後はスポーツ界を越えて見聞を広めつつ、選手会の発足や指導者になるための勉強に力を注ぐとしている。

以下、3月2日の大野の一問一答(全て当方質問)。

――きょうはスクラム練習など、一部のメニューの際は個別調整をされていました。

「脳震盪(に近い状態)もあったので、そのケアを」

――その脳震盪のようになった瞬間。どんな状況だったのですか。

「おそらくタックルの時、逆ヘッドの状態で入っちゃって(相手のお尻ではなく、膝の側に頭を入れてしまった)」

――それでも、ふらふらになりながらもう一度タックルしようとしました。

「まぁ、(頭のなかは)揺れてたんですけど、大外(のスペース)が危ないと思って、とりあえず走ろう、と」

――2月初旬の合流時と比べ、ラインアウトの状態はいかがですか。

「大分、精度も上がったし、オプション、バリエーションも増えた。ここからは相手にも研究されるので、その裏をかくなどの駆け引きが見られると思います」

――スーパーラグビーの試合に出たという実感は、ありますか。

「実感というか、まだまだこれから、ああいうタフな試合が続くな、と」

――次の相手はチーターズです。

「ライオンズに似ていて、ブレイクダウン(接点)でさらに激しくくるというイメージです」

――向こうには、南アフリカ代表ロックのルード・デヤハーがいます。あの日の南アフリカ代表戦に出場した、身長205センチの巨漢です。

「ラインアウトでもいい動きをしている。フォワードのキーマンになってくるので、ロックとして、止めないといけないと思います」

――試合とは直接関係はありませんが、廣瀬選手が引退をしました。

「年下ですけど尊敬できる男だった。これからどういう道に進むかは模索していると思うのですが、どの道に行ってもいいものを残してくれる。楽しみですね。どんなことを成し遂げるのか。何をやっても、いい方向に導いてくれます。もともとそんな風なこと(辞意)を言っていた。人生のなかでやりたいことがあるようなことを」

――廣瀬さんの記者会見では、大野選手の話題も出ました。「ジョンさん(東芝で現役最年長の42歳までプレーを続けた元日本代表フルバック)を超えて欲しい」と。

「いや、そこは意識していないですけど…。自分のなかで区切りがついたら辞めるし」

――新たな世界を見たいま、区切りはつくのですか。

「取りあえず今シーズンは、サンウルブズでラグビーができて楽しい。シーズンが終わった後に、これがいいものであって欲しいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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