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「子どもの集まりじゃない」。サンウルブズ最年長の大野均、長期遠征を展望。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

日本代表として歴代最多の96キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇る37歳の大野均が3月24日、日本を離れた。国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズの最年長選手として、長期遠征に挑むためだ。

試合がなかった第2節を挟んで開幕3連敗中のチームはこの先、約3週間をかけてシンガポール、南アフリカを回る。26日にシンガポール・ナショナルスタジアムでおこなわれるブルズとの第5節以降は、キングス、ストマーズ、チーターズと順に南アフリカベースのチームと敵地で激突する。

地元の福島県郡山市にある日大工学部キャンパスでラグビーを始めた大野は、身長192センチ、体重105キロという体躯と「泥臭い」と自認する献身的なプレーを長所に国内有数の伝説的な選手に成長。日本代表としては、4年に1度あるワールドカップに3大会連続で参戦している。特に昨秋のイングランド大会では、過去2回優勝の南アフリカ代表に34-32で勝った。サンウルブズの一員としても開幕から全試合に先発出場中だ。

離日前最後の練習を終えた23日の夕方、報道陣を前に長期ロードへの意気込みを語った。質疑のなかでは、ここまでやや苦戦しているラインアウト(タッチラインから投入されたボールを取り合う空中戦)についての所感を話している。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――(当方質問)長いツアーが始まります。

「まずは、ブルズ戦に集中しています。2週間前のチーターズ戦(12日にシンガポールであった第3節。前半に15点リードを奪うも31-32で逆転負け)で、身体は慣れたと思います」

――手には消毒液やプロテインをお持ちです。

「練習前に、遠征に関するミーティングがあって。このように衛生グッズも渡されて…。南アフリカは悪い国ではないですが、日本とは環境も違って、日本にないような雑菌もいるということなので。(予防接種は)希望者だけ、受けていましたね。自分は受けていないです」

――南アフリカのラグビーはフォワード主体。かねて憧れは。

「はい、パワフルですよね。また、南アフリカはラグビーの環境が整っていると思うので、それを観るのも楽しみです」

――(当方質問)ラインアウトを向上させるため、どんなことを意識していますか。

「(自軍ボール時の)ダミーの動きですね。ボールを捕らない選手が、相手(のジャンパー)を釣る(引きつける)。また、(跳躍などの)スピード。それがサンウルブズの強みだと思うので、もっと突き詰める必要がある」

――(当方質問)イングランド大会の日本代表は、9割超の自軍ボール保持率を保っていました。相手より身長で劣る点ではサンウルブズも当時のジャパンも同じでした。

「あの時は大会、それこそ南アフリカ代表戦に向けて、半年間も準備をしていた。その分、皆が試合に集中できた。逆にサンウルブズとしては1週間ごとに相手も変わってゆく。そのなかでは、自分たちが持っているものをブラッシュアップさせてゆくしかない。1つのサインを使えば、その裏のサインを、そのまた裏を…という駆け引きが必要になる。それについては(サインを出す)コーラーである自分の責任。しっかり相手を分析していきたいと思います」

――リーダー格として。

「選手との何気ない会話からメッセージを受け取って、それをスタッフに伝える。やることは変わりません」

――練習前、マーク・ハメットヘッドコーチや堀江翔太キャプテンらとミーティングをしていました。

「南アフリカに行ってからのコンディショニングをどうするか。ハマー(ハメットの愛称)は選手の意見を尊重しています。『自分はこう思うけど、皆はどうだ』と。例えば、今回はシンガポールに行ってすぐに南アフリカへ行く。シンガポールは暑いので、脱水症状が心配される。そこで、『チームとして夜の行動を制限すべきか』という話になりました。脱水状態でアルコールは…ということです。ただ選手からは、『子どもの集まりではない。そこまでチームとしての決まりを作るべきではない』という意見もありました」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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