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日本代表、アジアラグビーチャンピオンシップ制覇。会見詳報。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は初戦の内田キャプテン。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は5月28日、東京・秩父宮ラグビー場で香港代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ最終戦をおこない、59―17で勝利。4戦すべてを制し、大会優勝を決めた。この日は前半20分までに0―10とリードされるも、時間を重ねるごとに本来の地力の差を示した。

昨秋、ワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げたメンバーはゼロというなか、中竹竜二ヘッドコーチ代行と内田啓太キャプテンが若手中心のチームを引っ張った。

今度のゲームを最後に、一時解散。カナダ代表やスコットランド代表と試合をおこなう6月のツアーに備えては、今回戦った32名(追加招集を含む)のうち14名にイングランド組19名などが加わった43名のスコッドが発表されている。5月30日以降、この43名が30名程度に絞り込まれる見込み。

ここではスーパーラグビー(国際リーグ)に日本から参戦するサンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチが代行を務める(その折のメンバーは5月10日に発表予定)。ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチは、現在務めるスーパーラグビーのハイランダーズとの契約上、秋以降の着任となっている。

中竹ヘッドコーチ代行は、2006年度から4季務めた早稲田大学監督時代に「日本一オーラがない監督」を自任。五郎丸歩を副キャプテンに据えた2007年度を含め、2度の大学選手権制覇を果たしている。この大会終了後はかねて率いていた20歳以下(U20)日本代表のヘッドコーチとして、6月、イングランドでのワールドラグビーU20チャンピオンシップに挑む。

内田キャプテンは国内最高峰トップリーグ王者のパナソニックで2季目を迎える、身長179センチ、体重86キロの大型スクラムハーフ。甘いマスクと当世風のツーブロックヘアで、女性人気も高い。国同士の真剣勝負であるテストマッチには15試合に出場も、イングランド大会時はバックアップメンバーに回っていた。

以下、試合後会見時の中竹ヘッドコーチ代行、内田キャプテンの一問一答の一部(編集済み。※は当方質問)。

中竹 

「最終戦。香港も凄いプレッシャーで来ると想像しました。その通り、最初からすごいファイトがあって、セットプレーでもプレッシャーをかけられた。受けに回ったというか、苦しい時間帯がありました。後で選手に聞けば、思わぬアクシデントがあったと選手から聞いていました。アクシデントが続いた中、どう対応するかを見ていましたが、選手はよく地に足をつけて修正をした。ロッカールームでも、選手たちが修正ポイントを理解していた。そのまま40分、楽しもうと言ってきました。

短すぎる準備ではあったものの、終ってみれば本当にいいチームだった。これまでの指導キャリアのなかでトップに来る。選手からたくさんのものを学んで心から感謝しています」

内田 

「集大成。全てを出す意気込みで試合に入りました。試合前、予期せぬことは起こると言ってきていました。苦しい時間帯もありましたけど、一丸となれたことが勝因かなと思います。素晴らしいチームでキャプテンができたことを誇りに思います」

――予期せぬこととは。

中竹 

「キックオフです。パニックになっているなと思ったら、本来マイボールからのスタートだったのが、相手ボールになっていた。あとは、ブレイクダウン(接点)、スクラムでも…。こちらは今週、いいコミュニケーションを冷静に取っていたので、対応できた」

内田 

「いま中竹さんが仰ったのが全て。ゲーム中に何かが来る予想はしていたけど、まさか試合前のコイントスで僕らが勝ってマイボールを選んだのに、その逆に…。想像していたやつの上がきちゃったので。パニックにはなりました。レフリーの方には言いましたけど、話を聞いてくれない感じでした。ただ、皆、悟った感じでポジショニングはつきましたけど」

――0―10のスコアにされてから。

内田 

「苦しい時間にどうしようかという話は(事前に)していた。1人ひとりハドルを組んで、僕の顔を見て、何をやるか整理をするという部分で冷静に話をしていた。ペナルティーのところでは、リリース(接点でのボールへの絡み)に対して厳しい笛が吹かれていた。ラックは捨てて、ディフェンスの数で(次に敷く守備網の厚さ)で勝負しようと話しました」

――序盤の問題点、具体的には。

内田 

「一番はさっきも言ったペナルティーのこと。あとはディフェンスのスペーシング(守備網の配列のバランス)です。ブラインドサイドが多くなったり、オープンサイドが少なくなったり、と。それで外でブレイクされて、得点されて…という場面が多かった」

――どこで落ち着いたか(※)。

内田 

「(前半24分の)1本目のトライは、一番いい形でした。まずキックで敵陣に入って、いい位置からの攻撃で…と。この形が一番シンプルで取れる、敵陣で勝負するのがスタイル、ともう一回、話し合えた。ここから、自分たちのプランでやり切れたと思います」

――最も成長した人は。

中竹 

「よく聞かれるのですが、挙げられないぐらい全員、伸びた。わかりやすいのはトライ、タックル、ハイパントキャッチと1個1個武器を見せ続けた児玉健太郎。ただ、谷田部洸太郎は低いタックルを連発。僕からしたら、その伸び率は僅差です。キャプテンもリーダーシップだけではなく、ラン、パス、キック、カバーディフェンスとプレーも伸びた」

――選手から学んだこととは。

中竹 

「当然、僕自身ラグビーのプレーキャリアとコーチキャリアが少ないので、全て戦略を提示するより、リーダーに相談しながら進めてきました。ゲームテーマ、アタックテーマを決めるんですが、最後は徐々にリーダーだけで決めてもらい、その理由を説明してもらいました。そこでは地に足の付いた説明があり、聞いていて、こちらの方が伝え方について勉強になりました。油断があった時のキャプテンの一言、落ち込んでいるなという時の他のリーダーの盛り上げ…。組織を動かす人間として学ぶところがありました。私がたくさん学ぶと同時に、他のコーチングスタッフにも選手から学ぼうと言っていました。ノンメンバーも含め、チーム一丸となって戦えたなと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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