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リオ五輪に選手2名を派遣。「感動した」東芝・冨岡鉄平ヘッドコーチの提案。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
14日に帰国したリオ五輪日本代表へ「感動した」と東芝の冨岡ヘッドコーチ。(写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ)

日本ラグビー界の最新のトピックスや親会社とクラブのあるべき関係について、東芝の冨岡鉄平ヘッドコーチが思いを明かした。

2002~06年度にチームの主将を務め、通算7つの国内タイトルを獲得してきた冨岡ヘッドコーチは就任3季目(前年度の肩書は監督)。昨季の日本最高峰トップリーグでは3連覇したパナソニックとの決勝戦を1点差で落とし、準優勝に終わっている。8月26日から開幕する今度のシーズンでは、7季ぶりの王座奪還を目指す。

現在開催中のリオ五輪では、男子7人制ラグビー日本代表が優勝候補のニュージーランド代表を破るなどして4位入り。東芝からは豊島翔平、徳永祥尭が参加していた。

元東芝監督の瀬川智広ヘッドコーチの辛苦などを踏まえ、冨岡ヘッドコーチは、トップリーグに加盟する15人制の国内強豪チームが7人制の専任選手の保有を請け負うことを提案。より議論を深める必要があるとしながら、具体的なプランを語った。

単独取材に応じたのは8月12日。この日は東京・東芝グラウンドでサントリーと練習試合をおこない、14―40と大敗していた。

以下、一問一答。

――きょう(12日)のゲームの位置付けは。

「もちろん、現状で一番いい試合をしないといけないと思ったし、現状の力を図るうえでもベストメンバーで臨んだんですけど…。まぁ、良くないね! 非常に良くない」

――悔やまれる点は。

「ジャージィの責任というところがまだまだ…感じられないところもあった。負けてもいい試合はひとつもないのに、そういう位置に(選手を)立たせられたのかという僕の反省もある。選手たちはしっかりとやることをやった。その結果は受け止めなきゃいけない。しっかりとビデオ見て反省点を出してやっていくだけです。現状は、サントリーの方が全然いい」

――改めて、オリンピックの7人制ラグビー。ご覧になりましたか。

「感動しました。人間の、日本人の可能性を凄く見せてくれた。地球上に、日本人だから勝てないという理由は今後、存在しないと思った。(準決勝に残ったのが)南アフリカ、フィジー、イギリス…。戦略によっては(強豪国に)勝てるというところを証明してもらいました。感動したよね? 色んな意味で日本ラグビーの可能性を感じた」

――東芝から参加した1人の豊島翔平選手は、一時は「バックアップメンバー」と発表されながらも大会登録選手となりました。

「あれはもう、関係ないです。正当な競争をしてメンバーが入ったんだから。もともと外れていた選手が全試合に出たわけで、本当に、よく頑張ったと思う」

――今度の結果を得るまで、瀬川ヘッドコーチはさまざまな工夫や試行錯誤を重ねました。

「(15人制の)代表よりも苦しんだと思うよ。招集もままならないわけだから。声をかけても『ダメだ』と言われ続けて、それでも戦ってくれた選手と、結果を出してくれて…」

――以後、7人制日本代表が安定的なスコッドをどう確保するかが課題とされそうです。トップリーグの期間中を含め、各チームの理解や協力が問われます。

「7人制というカテゴリーを、日本ラグビーのどこにどう位置づけるのか(を考える必要がある)。オリンピックであれだけ結果を出したのですから。

例えば、今後はトップチームが責任を持ってセブンズに特化した選手を1~2名確保するとか…。トップリーグ全チームがそうしたら、32名になるわけでしょう。1名ずつでも16名。企業が彼らの面倒を見て、活動のない時は(各クラブの)一緒に練習をして、代表の活動には無条件で出す…とかね。実際、我々企業がどこまで責任を背負うかの答えは出ないけど、より強い協力体制は必要ですよね」

――東芝の母体は昨年、不適切会計問題に揺れました。チーム、いかがですか。

「大変ですね。はい。もちろん、『乗り越えました』と言う状態には来ていないですよ。我々も社員の一員ですから、現状を受け止めて、きちんとした認識を持たなきゃいけないなと思う日々ですよね。会社はまだまだ元気がないし、混とんとしている部分も見えるんですけど…。だからこそ、ラグビーが、スポーツの力を見せなきゃいけないと思うんですよ」

――苦しい状況だからこそ、ラグビー部を保有すべきという機運を作りたい、と。

「僕らは、ここまで大事にしてきてもらって、色んな逆境にあっても会社がサポートしてきてくれたわけです。そしていま、東芝140年の歴史で一番の有事だと言われているんですよ。ここはラグビーが頑張って、元気なところを見せて、社員の方々を元気づけたいと思うし、そういう思いが強いですよね。ラグビーができることを感謝して、頑張ろうと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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