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ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ就任会見ほぼ全文【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
左から2人目がジョセフ新ヘッドコーチ。現役時代はナンバーエイト。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチが9月5日、都内で会見。笑顔を交えながら抱負を語った。

現役時代は当時の規定によりニュージーランド代表、日本代表と2つのナショナルチームでキャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を獲得したジョセフヘッドコーチは、昨季までニュージーランドのハイランダーズを指揮。国際リーグのスーパーラグビーでは一昨季の優勝を達成した。

日本代表は、昨秋のワールドカップで歴史的な3勝を挙げるなど国内での競技人気を一時的に過熱。2019年のワールドカップ日本大会を見据え、スーパーラグビーにも日本のサンウルブズが今年度、初参戦した。

もっとも日本協会とサンウルブズとの連関性強化などについては、選手サイドも問題視する。人望の厚さに定評のある新たなボスには、諸事の軌道修正も期待される。

新指揮官の任期は2019年12月31日まで。日本代表は9月中旬に45人程度の新スコッドを発表し、10月にミニキャンプをおこなう予定だ。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場で、イングランド大会4強のアルゼンチン代表とテストマッチ(キャップ対象試合)がある。以後、欧州ツアーも組まれている。

9月に来日したばかりのジョセフ新ヘッドコーチはこの日までに、国内最高峰トップリーグの第2節数試合を視察。都内ホテルでの会見には岡村正・日本ラグビー協会会長、坂本典幸・同専務理事、薫田真広・男子15人制日本代表ディレクター・オブ・ラグビーとともに出席した。

以下、会見中の一問一答(編集箇所あり)。

岡村会長

「このたび日本代表のヘッドコーチに、元ニュージーランド代表選手で、オタゴハイランダーズの指導者として優勝経験のあるジェイミー・ジョセフ氏が就任すると決定いたしました。ジョセフ氏は日本でのプレーをいたしまして、日本代表選手として、1999年のワールドカップにも出場しております。日本ラグビーはもちろん、日本の文化を熟知していらっしゃいます。これからの日本代表のヘッドコーチとしては最適な人物だと認識しております。いままでの経験を活かし、サンウルブズを含めた日本代表の強化に努めますよう、我々としては期待しております。

昨年のラグビーワールドカップで南アフリカ代表に勝利するなど、輝かしい結果を残した。世界の強豪に勝てる、強い日本を作って欲しいと思っております。2019年は、ロンドン大会以上の成績を目指して、日本はもちろん世界中からリスペクトされるチームにし欲しい。日本らしく規律を守り、激しいタックルと素早いテンポで80分間最後まで走り抜ける、そういうチームを作って欲しいと思っております」

坂本専務理事 

「すでに以前の記者会見でお話ししました通り、1月20日に契約しました。ニュージーランド協会との契約もあった関係で、9月1日に来日し、すでに任についていただいています。契約期間は2019年12月31日まで。日本でのワールドカップを終えて、その後のレビューをしてもらうまでとなります。

彼と契約した理由が3つあります。

ひとつめは彼が日本を大好きで、日本を理解していること。規律、インティグリティ(高潔さ)を実現してくれるリーダーであると思います。反則の少ないチームを作っていただきたいと思っています。

ふたつめは彼の世界中のネットワーク。彼はスーパーラグビーで挫折も味わい、優勝も経験。日本での経験もアリ、トップリーグとの長い間の交流もあります。その広い人脈に期待しています。代表チームのヘッドコーチの経験はありませんが、それに等しい経験を積んでいると認識しています。

みっつめは、彼が選手との対話を重視していること。個人個人のプランニングを作り、チームを作る。そういう手法を、共有しながらやっていきたい。

新たに、『チームジャパン2019』の総監督をお願いしたい。これはジャパン、ARCのジャパン(5月のアジアラグビーチャンピオンシップには若手中心で参戦か)、U20(20歳以下日本代表)のカテゴリーを総体的に観てもらいます。サンウルブズも観てもらう。サンウルブズのヘッドコーチは近々発表させていただきたいと思っています。

土田雅人担当理事のもと、薫田さんには強化運営の責任者を、ジェイミーにはチームジャパン2019の総監督をやってもらいます。総監督を英語にどう訳すかはこれから議論をしたいと思いますが、日本語でいう総監督です」

ジョセフヘッドコーチ

「(冒頭のみ日本語で)こんにちは皆さん。ジョセフでございます、ありがとうございます

このような機会を与えてくださった日本ラグビー協会に感謝したい。2019年にこの国でおこなわれる。大きなチャレンジです。ここに座っていると、顔を存じ上げるメディアの方もいる。日本でプレーした頃からいらっしゃる方なのだと思います。

多くの外国人が日本に来る時は何かの犠牲を払いますが、私は違います。以前もプレーヤーとして日本にいましたから、楽しみにしていました。

当時は私と妻で日本にいましたが、離日から本日に至るまでの間に子どもが4人できて、こうして20年ぶりに日本に戻って来れて、嬉しく思います。以前はサニックス(現役時代のプレー先)にはお世話になり、いい経験ができた。日本を離れてからも、ラグビーが常に私の人生の大部分でした。プロコーチになってから12、13年の月日が経っています。ここで培ったものを、日本で活かしたい。

昨年のワールドカップに挑んだヘッドコーチや選手に敬意を払いたい。同じことが先日のオリンピックでも起こった。男子7人制日本代表の活躍は、選手たちの努力があってのもの。こうしたワールドステージに日本が出ていかなければいけないと、私も決意しました。

本日、多くの方が私に『2019年の目標は何か』という質問をなさりたいのだと思う。ひとつ申し上げたいのは、日本のラグビー界で新しい景色が広がる段階に来ているということ。プロ化が進み、サンウルブズもできたことで個々の選手が色々な形でスーパーラグビーに参戦する。テストマッチは6月、11月にある。トップリーグがある。国として3つのことが常におこなわれる、新しい景観のなかでラグビーをやっていくことになります。一言でいえば難しいが、代表強化にとっては一番いい環境です。

なぜか。アルゼンチン代表を例に挙げると、彼らも我々と似た歩みだった(ニュージーランド代表、オーストラリア代表、南アフリカ代表とのラグビーチャンピオンシップに参戦)。最初は苦しんだはずですが、昨年のワールドカップでトップ4に入った。2019年、我々もやれない理由はないと思います。

来日したばかり。日本のチームについては基礎の部分はわかっているが、もっと理解を深めたい。これから2~3週間をかけて日本のコーチやプレーヤーを訪ねて、顔を合わせて、会って話したい。そんなことを考えております」

――いまの日本代表チームの長所と課題は。2019年に向けて、どう強化するか。どんなラグビーをするか。

ジョセフヘッドコーチ

「自分の周りのラグビー関係者と情報を交換していて、そのあたりから話したいですが、2015年のチームはスキルに長けていました。ボールを持っているシーンではランニングゲームをしていて、持っているエナジーを全てつぎ込む激しさがありました。それは日本代表の強み。これをもっと進化させないといけない。持っているスキルをフィールドいっぱいに発揮して、どんどんボールを動かす。それを強みにしたい。

パワーの部分では、これからもっと日本が世界に追いつかないといけないところですが、パワーゲームのなかでも、持っている強みを生かせばやっていける。

世界のラグビーの傾向を観ると、いくつか注目点がある。ひとつがキックングゲーム。相手のストラクチャーを崩すキッキングゲームが多くの部分を占めると見受けられますが、そこでも一定のエリアでボールをきちんと動かす。それを賢くやれるチームが、勝っていける。それも強みにしていきたいと思っています。

キックのスキルも求められる。ここは3年間使って、伸ばしていきたい。そこも含め、いまあるアタッキングの要素をもっと進化させたい。

セットピースは、優秀だったマルク・ダルマゾコーチが去ったので、そこは心配。ただ、ここもインターナショナルで必要な要素なので、よく考えていきたい。我々が強みを発揮できるエリアをあぶり出していきたいと考えています。

ラグビーの大部分を占める戦術面では、いかに相手と自分たちとの違いをあぶり出し、発揮させるか。スピード、アジリティ、様々な部分の強みを発揮する機会をどう作り出すか。その戦術について、もっと話し合わなくてはいけない。私の傍らには、優秀なアタッキングコーチ、トニー・ブラウンがいる。彼も日本の経験があり(三洋電機でプレー)、日本のことを熟知している。スマートなコーチだと思います」

――11月のテストマッチで結果を出さなくてはならない一方、出場過多になった主力選手もいるが。

ジョセフヘッドコーチ

「選手のことに関しては、1つずつ我々が決断をしなければいけない。さまざまな世界の舞台で活躍するコーチを観ても、それほど包括的に物事を観るコーチはいない。プログラムを作ること自体が大変なものになっていくと思います。

自分が考えているのは、個々のグラウンド上での評価より、チームを強くすること、チームの結果を出していくことを大事にしようと思います。

トップチームとやるには経験も必要。だからこそサンウルブズとスーパーラグビーへの参戦が必要で、11月のテストマッチで少しでも強いチームとやっていくことも必要です。ワールドカップまでの間、トップレベルでの試合経験をどれだけ多くの日本人に積ませるかも肝だと思っています。毎回、試合には勝敗がついてきますが、結果を求めるメインターゲットはワールドカップ。そこへ向けて責任を持ってプランを考えるのが、私の役割」

――イングランド大会の結果への考察。

ジェイミーヘッドコーチ 

「率直に、南アフリカ代表戦はびっくりしました。ただ――これはあくまで私のコーチングの勉強のためですが――大会前の宮崎合宿で、ジョーンズさんと過ごす時間がありました。彼らがどれほどの努力を重ね、彼らがどんなプログラムを取り組んでいたかを自分の目で観られた。ジョーンズさんが考えたプランがあって、それが形になったのだと考えます。

ワールドカップは4年に1度。それに向けたプランを立てるのは大きな仕事ですが、今度はその仕事が私はそれにのしかかっている。裏を返せば、努力をすればあれだけのことがすごいことが起こり得る舞台だと思います。プレーヤー、コーチと一緒になって、やっていきたい」

――トップリーグを観て気になったことは。

ジェイミーヘッドコーチ 

「レベルは非常に上がっている。その理由はたくさんあると思います。来日したばかりなので決めつけては言えませんが、申し上げられるのは、コーチの強化が実っているのではないかということと、外国人選手のスタイルがいい影響を与えているということ。さらに――ここが特にわくわくした気持ちにさせるのですが――日本人コーチの活躍が裏にある。例を挙げれば、ヤマハ(開幕節で3連覇中のパナソニックを撃破)、チームのブランドを試合で見せてくれた。これからのラグビーを考えると、いいサインだと思います。ただ単にプレーヤーのレベルが上がっているのではなく、ゲームのレベルが上がっている」

――入閣を希望するコーチ。日本人コーチでスタッフに入って欲しい人は。

ジェイミーヘッドコーチ

「名前は挙げられないのですが、外国人コーチでは、私のよく知っているS&Cの優秀なコーチもいます。年間活動量が詰まっているなか、どんな風にチームを強化させるかをよく知っている。私とともにコーチ陣のチームを作っていきたい。

日本のラグビーの質を上げようとしたら、日本のコーチのレベルを上げないといけない。日本人コーチの強化も欠かせない。来たばかりで詳しくはわからないのですが、東芝の冨岡(鉄平)さん、ヤマハの清宮(克幸)さん。サントリーの沢木(敬介)さん…。彼らのインテリジェンス、日本のコーチのレベルアップが感じられる。これをリフレクトさせたいので、薫田さんとも話をしていきたい。コーチのレベルアップの役割も私のひとつ。私が日本代表ヘッドコーチの任期を終えて去る時、そこに貢献できたと思える形で去りたい」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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