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兄弟で日本代表へ? 東芝新人・田村煕の「狙われている」意識とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
明治大学時代の田村。正確なキックも持ち味。(写真:アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグで昨季準優勝した東芝にあって、新人の田村煕が今季開幕節から3戦連続で先発出場を果たしている。

身長175センチ、体重89キロと決して大柄ではないが、人垣を走り抜ける感覚とボディバランスでファンを魅了。現在は司令塔のスタンドオフを任されるが、明大時代は最後尾のフルバックに入るなど複数のポジションでプレーできる。

日本代表として昨秋のワールドカップイングランド大会に出場した兄の田村優とは、東京・秩父宮ラグビー場での第2節で対戦。NECを25―8で下したこのゲームは、スポーツ紙などで「兄弟対決」として描かれた。

冨岡鉄平ヘッドコーチに「大したもんだよね。飄々としている。それが不確かな自信のもとではない。筋の通ったプレーをしている」と期待される。9月11日には神奈川・日産スタジアムでおこなわれたキヤノンとの第3節を、21―19と辛くも制していた。17日、静岡・ヤマハスタジアムでヤマハと全勝対決に挑む。

以下、一問一答(一部編集箇所あり)。

――まず、改めてキヤノン戦でのプレーを振り返ってください。

「ノータッチキック、ハイパント処理…。そういう自分の個人ミスがなかったら、もう少し楽な展開だったかもしれないと思っています」

――とはいえ、1点差を追う後半35分頃、自陣から守備網を突き破って一気に駆け上がりましたね。チームはその後、逆転。緊迫した場面で、あの大胆なプレーができた。

「前半の最初の方、自分が逆目(それまでのボールの流れとは逆の方向)に動いて、(フランカーのリアム・)メッサムにパスして…というシーンがあったんですけど、この時、相手のラックサイド(密集近辺)のフォワードの立っているところが空くと感じていました。僕がキックを蹴る時も、1枚、(キックチャージのため)飛び出してくるんですが、その内側が空く。それをよく観て…と。あの時間帯にあのプレーをするのは危ないと言えば危ないですけど、あのままキックチャージからスコアされる方が痛かった。サポートを信じて、行ったという感じです」

――大胆なプレーというより、確実なプレーを選んだ印象なのですね。

「それで抜けたシーンは他にもありましたし、空いているというのは見えていたので。捕まったら危ないですし、ミスったら負けていたので…結果オーライですね」

――ちなみに日産スタジアムは、ワールドカップ日本大会の決勝戦がおこなわれる舞台でもあります。

「ロッカールームを含め、環境はめちゃくちゃよかったです。ラグビーをしていない分、芝は硬くて傾斜がなかったりしましたが、やりやすかったです。…ラグビー場って、真ん中(タッチライン付近)が浮いていて、外へ行くに向かって…(なだらかに下ってゆく)」

――ここまで、成長できた実感はありますか。

「スタンドオフなので、まずはチームのやることを理解して遂行するというのを第一に置いています。フルバックだった大学時代に比べ、思い切ってやるというより組み立てる意識。ただ、それをできるようになったという感覚は…ないですね。クボタとの第1節(秩父宮で22―19で勝利)の時もかなり狙われていて、タックル数もいままでにないぐらい多かった。どこのチームだって、10番(スタンドオフ)に1年目の日本人がいたらそこを狙うと思う。ディフェンス面では、本当に集中しないとだめです。それは次の試合も、これからもそうです」

――次のヤマハ戦に向けては。

「いつも取材されるたびに言っているんですが…。僕個人としては、どこの相手も自分より上。去年までの順位やいままでの経緯に関係はなく、です。東芝も強いですが、ヤマハも強い」

――日本代表キャプテン経験者のリーチ マイケル選手など、将来のジャパン入りを期待する方も出てきていますが。

「うーん、ここまでの試合で身体を当ててみた感じでは、クボタの立川さん(理道・日本代表センター)はレベルが違いましたね。ボールを持つと、周りが立川さんを観てしまう。オプションを一杯、持っている。あの人がボールを持っているシーンはほとんど、ゲイン(突破)している。あの人のなかで迷いがないというか。相手を抜きに行く時もしっかりと仕掛けている(鋭い出足で手相手を一定の場所に引きつける)し、パスをする時も抜きに行くかのように仕掛けてからパスをしている」

――改めて、田村優選手については。

「兄弟だから言うのではなく、スキルは高かった。NECは調子が悪いですが(開幕3連敗中)、ファーストフェイズ、セカンドフェイズといい流れのアタックをしている時は、強かった。僕が大学生の頃、NECが勝った試合を観た時は『強いな』と思った。あれくらいの試合のできるチームだというのは、間違いない。自分には人のことを見る余裕はないですけど、何かが変わったら…とも感じます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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