Yahoo!ニュース

次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第5節)【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
今季からサントリーのキャプテンを務める流。第6節はリザーブスタート。(写真:アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグ第5節(9月30日~10月2日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。

昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。

1 左プロップ

稲垣啓太(パナソニック)…3連覇中の王者、NTTコムから3勝目を挙げる。ヤマハに敗れた初戦などで苦しんだスクラムは、新人の坂手淳史(後述)、ベテランの川俣直樹とともに優勢を保つ。相手の反則を誘うタックルとジャッカルなど、試合出場過多が懸念されるなか生来の持ち味を発揮。

2 フッカー

坂手淳史(パナソニック)…堀江翔太キャプテンが控えに回った位置へ入り、先発。タックルを重ねる。後半4分にはフルバック笹倉康誉のトライをアシスト。抜け出したロック谷田部洸太郎を援護し、相手を引きつけながらのパスを放った。

3 右プロップ

山下裕史(神戸製鋼)…豊田自動織機に完勝。小刻みにパスを繋ぐ戦法を貫く。スクラムでも姿勢の崩れぬこの人は、パスの出し手に引きつけられた相手の真横を駆け抜け、突破。

4 ロック

大戸裕矢(ヤマハ)…リコーに攻め込まれる時間帯もあったが、ヤマハの防御網は滅多に崩れず。特に前半は倒れた選手の起き上がるスピードが速い。そんななか背番号4を付けた大戸は、前半15分、自陣22メートルエリア右で相手スクラムハーフのパスをインターセプト。人と人とがぶつかり合うエリアでパスをカットするのは、その周辺に多くの味方タックラーが揃っていたからでもあるか。個人プレーでありながら、チームプレー。前半23分頃には味方とともに突っ込んでくる相手をタッチラインの外へ出し、同37分頃には自陣ゴール前で落球を誘うタックルを放った。

5 ロック

アニセ・サムエラ(キヤノン)…サントリーに惜敗も、ランナーとして縦への推進力を披露。

6 ブラインドサイドフランカー

グラント・ハッティング(クボタ)…近鉄にチャンスを渡して惜敗も、身長201センチの巨躯を活かした防御は圧巻だった。後半初頭のキックオフで、相手が捕球した球をもぎ取って前進。インサイドセンター立川理道キャプテンのトライのきっかけを作る。その他の場面でも、長い腕を相手に巻き付けてのタックルを放つ。この日相方を務めたピーター・ラピース・ラブスカフニもランナーとして機能。

7 オープンサイドフランカー

布巻峻介(パナソニック)…前半25分、スタンドオフのベリック・バーンズが大きく突破した先の接点へ駆け込み、邪魔立てする相手防御にぶちかまし。その場で身動きを取れなくさせることで、その脇のスペースをスクラムハーフ田中史朗が駆け抜けられた。直後、ロックのヒーナン ダニエルがトライ。その3分後にも、グラウンド中盤左中間でジャッカル。相手の連続攻撃のテンポを鈍らせ、味方に防御網を作る時間を与える。逆サイドで別の選手がターンオーバーを決めるのは、自然な流れかもしれなかった。実際にプレーに参加していない折は、声で味方を動かす。

8 ナンバーエイト

新井信善(サニックス)…昇格したてのサニックスが、昨季準優勝の東芝に完勝。両軍の背景と試合展開を鑑みれば、いまのところ今季のベストゲームとされよう。ハイライトをチェックすれば外国出身バックスの走りが見事に映るが、挑戦者は肉弾戦でも引けを取らなかった。ロック福坪龍一郎、フランカー田村衛士キャプテンらが腰を落とし、相手をはがす。なかでも身長179センチと小柄でフッカー兼任の新井は、後半17分、敵陣深い位置での相手のモールの深部へ身体をねじ込む。ターンオーバー。かくして、試合を決めるスコアをもぎ取った。前節でもノーサイド直前のジャッカルを決めるなど、人が交わる場所で強さを示す。

9 スクラムハーフ

流大(サントリー)…後半3分、自陣22メートル線付近左のラックから球を拾うと、狭い側のスペースを突く。直進。フルバック松島幸太朗にパスを繋ぎ、60メートル独走トライ(身をかがめつつ飛びかかるタックラーをかわす!)を見届ける。相手の目の前で相手の嫌がるプレー選択。

10 スタンドオフ

ベリック・バーンズ(パナソニック)…試合開始早々、長距離のタッチキックを放つ。以後、陣地を支配して快勝。敗れた羽野一志曰く「無回転のボールなど、色んな種類のキックを蹴られた。捕りづらかった」。ランとパスとの配分も絶妙。スタンドオフに求められる「エリア獲得」は、単純な「キック力」だけでは実現しえないことがわかる。後半20分、肩の脱臼のため交代。パナソニックファンならずとも残念に思うことだろう。

11 ウイング

山下楽平(神戸製鋼)…サイズを知性と競技理解度で補う。前半24分、敵陣深い位置まで攻め込むなか、左タッチライン際で止めを刺す。飛び出したタックラーの背後でパスを待ち、そのタックラーと入れ違いになる格好でインゴールを陥れた。後半20分頃、左タッチライン際で球を持つと、相手防御へ突っ込む際に身体をくるりと回転。タッチラインの外へ押し出されず、そのまま攻撃を継続させる。続く21分頃には、背後へ蹴られたボールへ反応。ゴールライン上で、相手のJJエンゲルブレヒトのトライを防ぐ。そして同24分、ペナルティーゴールから速攻を仕掛けたスタンドオフのイーリ・ニコラスのキックパスを捕球。リーグ戦7個目となるトライを決めた。

12 インサイドセンター

ヴィリアミ・タヒトゥア(ヤマハ)…前半17分のトライシーンに象徴されるように、球持てば防御網を勢いよく突っ切る。同23分には自陣ゴール前での防御で強烈なタックルを立て続けに放つなど、下働きでも目立つ。

13 アウトサイドセンター

ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ)…フィールドの前後に好配球を重ねたインサイドセンターのティモシー・ラファエレとコンビを組み、ホンダを制圧。後半16分にはこぼれ球を約40メートル、ドリブルしてトライ。防御でも飛び出しと危険地帯へのカバーで速さを示す。

14 ウイング

アンドリュー・エブリンハム(サニックス)…接点に寄り添い、球を持ち出してトライをアシスト。その他の場所では相手の死角でゴールラインと平行な軌道のパスをもらい、最も効率的な突破を決める。前半18分には、自陣深い位置の右タッチライン際でフルバックのジェイミー・ジェリー・タウランギ(後述)からパスをもらってグラウンド中盤ど真ん中までするり前進。ボールタッチを増やす努力と、最小限の労力で大きなスペースを攻略する知性が光る。

15 フルバック

ジェイミー・ジェリー・タウランギ(サニックス)…ダンスの走りとオフロードパスを連発。後半7分には、自陣からエンジンをふかしてハンドオフを交え、前進。一転、ロングパスをスクラムハーフ濱里耕平に繋ぎ、最後はウイングのエブリンハムがトライ。ロングキックと快足が売りのゲラード・ファンデンヒーファー(ヤマハ)然り、今季の新外国人フルバックには、日本代表資格取得の待たれる選手が多い。

<備考>

・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)

・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。

・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。

・次節以降の詳細などはこちら

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事