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次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第7節)【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
リコーのエリソン。元ニュージーランド代表で、スーパーラグビーでの経験も豊富。(写真:アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグ第7節(10月15日~10月16日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。

昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。

1 左プロップ

川俣直樹(パナソニック)…コカ・コーラ戦に右プロップで先発予定も、試合前日に左プロップでのプレーが決まった。日本代表右プロップの畠山健介曰く「東京と大阪くらい違う」という位置でも問題なくプレー。後半12分には相手守備網の外側を蹴破ってトライを決めた。

2 フッカー

湯原祐希(東芝)…豊田自動織機戦に後半15分から出場。チームは3連敗も、スクラムで相手の反則を連取していた。なお近鉄戦のリザーブに入った森雄基(リコー)は、5点ビハインドを背負って迎えた後半29分から登場。5点のビハインドを背負うなか、35分のトライで同点に追いつき(直後のゴール成功で勝ち越し)、続く38分ごろにはハーフ線上付近で複数人によるランナーへの絡みつきで魅せた(相手の反則を奪い、ガッツポーズ)。

3 右プロップ

ルアーン・スミス(トヨタ自動車)…NTTコムに13―19で屈するも、出場した時間帯はスクラムで好姿勢(伸びた背筋が地面と平行)を貫く。3点リードで迎えた後半序盤のワンシーンでは、接点へ身体を差し込んで相手の攻めを寸断した。

4 ロック

ヒーナン ダニエル(パナソニック)…コカ・コーラ戦では前半13分、連続攻撃を締めくくるトライを記録。強烈なドミネートタックルも放った。

5 ロック

アイザック・ロス(NTTコム)…トヨタ自動車に勝利したこの日も、得意のパス、突進で攻撃ラインを活気づける。相手の守備ラインを引き延ばすような幅広い攻撃陣形にあって、目の前の防御にタックルされながらすぐ隣の選手にオフロードパスを渡す巨躯がいるのは大きい。

6 ブラインドサイドフランカー

ジャック・ポトヒエッター(サニックス)…クボタに1点差負けの接戦を演じる。後半34分にキックオフのキャッチミスから失点も、それ以前の働きを鑑みれば責められまい。ボール保持者へのサポートや自陣ゴール前でのタックルなど、接点で相手を敵陣方向(およびタッチラインの外)へ押し込むプレーを連発。インサイドセンターのロビンス ブライス(後述)との鋭い飛び出しでパスミスを誘ったのは、7点差を追う後半15分頃だった。

7 オープンサイドフランカー

栗原大介(NTTコム)…自陣深い位置でいくつかあった防御局面では、低い姿勢で相手を押し戻すタックルを連発。後半9分には、グラウンド中盤右ラインアウトから順目(左側)に回り込み、大きく突破。右タッチライン際での勝ち越しトライをアシストした。他に守りで光ったのは布巻峻介(パナソニック)。自陣ゴールラインを守る前半24分頃の防御(相手とぶつかる瞬間に膝をついていたため反則を取られたが、腕はしっかりとボールへ吸い付いていた)、続く29分のジャッカル(倒れ込む選手のボールへ真正面からかぶりつき、そのまま相手のノット・リリース・ザ・ボール=寝たまま球を手離さない反則を誘発)など、ゲームの流れそのものに直結するプレーを重ねた。

8 ナンバーエイト

ヴィリー・ブリッツ(NTTコム)松橋周平(リコー)がボールタッチ数と推進力で魅せるなか、NTTコムの金髪の獅子はリアクションと激しさで接戦を締めた。前方のハイボールに対して猛烈なスピードで突っ込んだのは前半4分頃。続く13分には、自陣でパスを渡した味方をそのままサポートし、待ち構えていた防御役をこれまた猛烈なスピードで引きはがした。ラストワンプレーは、味方の下敷きになって足を痛めた直後のビッグタックル。トヨタ自動車のキーマン、ルアーン・スミスをタッチラインの外へ弾き出し、そのまま自分もグラウンドを去った(その代わりに出たラポーニ・ウォーレンボスアヤコもランニングスピードとノーサイド直前のジャッカルで光る!)。

9 スクラムハーフ

アンドリュー・エリス(神戸製鋼)…接点脇の選手を引きつけ、パス。もらった人は真っ直ぐ前に出られる。その、好循環を作った。キヤノン戦の流れを決定づけた序盤のトライシーンは、敵陣深い位置へ進むやゴールラインと平行なパスで味方の突進スピードを引き出していた。田中史朗(パナソニック)も然り。

10 スタンドオフ

タマティ・エリソン(リコー)…こちらも、味方の前進を促すパスを連発。目の前のタックラーを(時にその隣のタックラーも)しっかりと引きつけ、パス。なかでも接点からパスを受け取り、再び接点後方へ折り返す「内返し」は効いた。トライシーンでのパスが光ったのは、ホンダに47―25で勝った大田尾竜彦(ヤマハ)も同じ。山沢拓也(パナソニック)も、スライスを利かせたタッチキックや凸凹の守備網を突っ切るランで才能を示した。

11 ウイング

山下楽平(神戸製鋼)…キヤノン戦の前半21分頃。タックラーとタックラーの間を突っ切り、敵陣の深い位置で南アフリカ代表フルバックのウィリー・ルルーのハイタックルを誘発。エリスがトライした25分は、敵陣ゴール前の接点脇に飛び出す。目の前の大きな2選手の間を、身軽なステップで走り抜けようとしていた。後半中盤には、鋭い出足でのタックルで相手の連続フェーズを断つ。常に探っているのは、「勝負に直結したプレーをするための最短ルート」か。

12 インサイドセンター

ロビンス ブライス(サニックス)…攻めては身軽なステップでビッグゲインを連発し、全員が献身的に動く防御ライン上でも相手を倒しきるタックルを放つ。

13 アウトサイドセンター

ジャック・フーリー(神戸製鋼)…前述の山下楽のトライシーンの直前には、接点周辺の相手の死角へ駆け込むランで前進。お互いが疲れるハーフタイム直前には、相手の持つボールに手をかけるタックルで落球を誘った。他会場では、シェーン・ゲイツ(NTTコム)が自陣ゴール前でのピンチを防いでチャンスメイクに奔走。そのゲイツとマッチアップしたイェーツ スティーブン(トヨタ自動車)もスペースをえぐる走りと相手のミスを逃さぬトライで魅せた。宮澤正利(ヤマハ)は、小さくとも強い身体を1対1の局面でアピール。

14 ウイング

伊藤力(ヤマハ)…定まったコースを突っ切る思い切りと、タッチライン方向へステップを踏みながら相手から逃れる走り。この2つを掛け合わせ、ホンダから3トライを奪取。思い切りの良さは、ターンオーバーのきっかけとなるタックルももたらした。ティム・ナナイ・ウィリアムズ(リコー)は、エリソンが一時退場で抜けた際にスタンドオフをそつなくこなしていた。タックルでも光った。

15 フルバック

松島幸太朗(サントリー)…最後尾から陣地を獲得するのがフルバックの仕事なら、NEC戦の松島は、相手の落球を誘う高い弾道のキックでそれを全う。7―0のスコアで迎えた前半17分のことだった。持ち前の突破力も披露。ゲラード・ファンデンヒーファー(ヤマハ)も、スピードとロングキックで快勝劇を演出した。

<備考>

・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)

・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。

・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。

・次節以降の詳細などはこちら

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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