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パナソニック・ディーンズ監督&堀江キャプテン、口揃えて「メンタル、大事」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
サンウルブズで戦っていた堀江。(写真:アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグで3連覇中のパナソニックは、10月22日、キヤノンとの第8節で29―16と勝利。通算戦績を6勝2敗とした。ロビー・ディーンズ監督と堀江翔太キャプテンが試合後の記者会見に出席した。

おもな話題に挙がったのは、今季のトップリーグを戦う選手の出場試合数の管理。国際リーグであるスーパーラグビー、日本代表としての活動、トップリーグと、3足の草鞋を履く日本ラグビー界の有力株について、ディーンズ監督は「物事をシンプルに考えなければいけない。それは、選手を大切に扱う、ということです」と提言した。

昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表の副キャプテンを務めた堀江は、今季、第4節以来の先発となっていた。選手側の視点から、精神や肉体の状態維持について話した。

会見中は、10月20日に逝去された平尾誠二さんに関する質問も挙がった。

以下、会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ディーンズ

「非常にいい試合、タフな試合でした。キヤノンさんは明確な戦略戦術を持っていた。我々のブレイクダウンにプレッシャーをかけて、我々のテンポを作らせない試合をしようとした。後半、そこを修正して外側のスペースでトライを取れた。ボーナスポイントを取れて勝ったことは嬉しく思っています」

堀江

「自分らのミスでテンポを作れなくて、苦しい時間帯もあったんですけど、その部分を後半に向けて修正できましたし、自陣でディフェンスしている時もコミュニケーションを取って、(1人のランナーに対して)2人でディフェンスできたのはよかったね。ただ、一発でトライを取り切ろうとしてしまったところは、(今後も)修正したい」

――「一発でトライを…」とは。

堀江 

「前よりはやりたいアタックができていて、完成しつつあるんです。だけど、ブレイクダウンでのボール出しや、変にオフロードパス(タックルされながらボールを繋ぐプレー)して…というところで、我慢(してボールキープ)することができない部分があった。オフロードをするのはいいけど、ちゃんとボールを次に繋げないと…ということはこれから選手同士で話していきたいです。

ハーフタイムに大きく何かを変えるということはなかった。ただ、ラインアウトはサインがもろバレしていた! 後半はそれをうまいこと修正して、(ロックの谷田部)洸太郎がリードして取れるようになった。その辺の修正能力の点では、成長できたと思います」

ディーンズ

「キヤノンさんには去年までパナソニックでプレーしていた野口裕也(スタンドオフ)がいます。ラインアウトに関しては、その成果が出たんだと思います」

堀江 

「野口、ラインアウトのサインは知らないでしょ」

――第4節以来の先発でした。

堀江 

「身体はこの試合に向けて作っていたので、身体の方がよかったです。メンタル(の状態)はそんなに戻らないけど、元気よくプレーできたと思います」

――メンタル、とは。

堀江

「やっぱり、ラグビーばかりしていたら、辛くなっていくでしょう。いくら(最前線から)離れたってリザーブはリザーブですし、キャプテンはキャプテン。(メンバー外となって)上(スタンド)で試合を観ていても気になるので。でも、そのメンタルの部分も、他のリーダーがリーダーシップを発揮してくれているので、シーズン初めの時よりは大分、クリアになってるかなと思います。

僕自身、チームに100パーセントコミットしたい思いもある。ボディーはだいぶ楽になりました。ロビーさんもそれを気にしてくれていた。大学を出てすぐにニュージーランドへ行ったりして、去年はワールドカップ。ハイレベルな場所でのプレーをずーっとやってきている。ロビーさんは『選手生命が潰れる前に、我慢するところは我慢した方がいい』と言ってくれている。

僕も、初めてのことなので、一応、昭和の人間なので、『行け』と行く人間なので、僕もどうしたらいいかなというのがあるんです。ただ、いまこういうことを初めて経験して、次の世代の選手に助言ができれば。『日本代表を強くする』という目標があれば、年間の試合数を制限することがあってもいいと思いますし。

(自身のメンタルの状態は)サンウルブズ(2月から8月に活動した、スーパーラグビー=国際リーグの日本チーム。堀江はここでもキャプテンを務めた)から帰って来た頃はひどかった。やる気が沸いてこなかった。『どうしたらチームが良くなるか』と考えて、自分にフォーカスをおけなかったので。ボディーが休まって、自分にフォーカスを当てる時間があると楽になる。

僕は、代表を頂点に置くのは当たり前のことと思っているので。もちろんいまはパナソニックに100パーセントコミットしていますけど、代表に入ったら、そこでどれだけ誇りを持って戦えるかを考えてやっていきたい」

ディーンズ 

「物事をシンプルに考えなければいけない。それは、選手を大切に扱う、ということです。

選手は所属するトップリーグのチームに対して、サンウルブズに対して、日本代表に対して忠誠心を持っている。そのなかでどんなマネージメントをするかを考えなければいけないんです。どんな考えのもと、解決するか。それはプレーヤーファーストという考えです。これで解決ができる。

選手1人ひとりの状況ややって来たこと、将来は違う。では、選手たちと実際に話しながら、どういうことを思っているのかを一緒に考えながら(試合出場などの)プランを考えるのが大事だと思っています。

食事でも、目の前に美味しいものがありすぎると満腹中枢が刺激される。あとから満腹感できつくなる。選手も、目の前にあるいい試合をやり過ぎて精神的に追い込まれると、元に戻るのが難しくなる。翔太が言ったように、メンタルの部分は大切。どれだけ身体が動くとしても、その身体を動かすのはメンタルです。ラグビーのようなコンタクトを伴うスポーツのなかで、精神が追いつかないかないまま試合をするのは危険な行為であると思っています。翔太は2週間後、ジャパンのジャージィを着てグラウンドに立つ時には100パーセントの状態です」

――ゲームキャプテンとして1週間を過ごされたなか、意識したことは。

堀江 

「アタックでもディフェンスでも、自分たちにフォーカスを置いてみよう、と。北川智規さん(前節まで3戦連続でゲームキャプテンを務めたウイング)、(堀江と同学年でインサイドセンターの林)泰基、シュン(今秋ジャパン候補入りした2年目の布巻峻介) から、そういう声も出てきていたので、その声をしっかり聴いきました」

――日本代表について伺います。10月23日から第2回合宿を経て、10月30日からテストマッチ(国際間の真剣勝負)を4試合おこなうツアーへ出かけますが…。

堀江 

「そこに自分たちが100パーセントコミットできるよう、いい準備をしていきたい。明日からしっかり頭を切り替えて、日本代表のラグビーを明確にする。選手全員が日本代表のやるラグビーを理解できるようにしていきたいです」

――20日に逝去した平尾誠二さん(元日本代表監督で「ミスターラグビー」と謳われた)について。

堀江 

「僕が平尾さんの話をするのはおこがましい。凄く有名で、平尾さんを知らない人はほとんどいなくて、僕からしたら遠い存在で…。僕はやっとここまで上がって来て、これから平尾さんの経験なり何なりを聞くはずだった。その意味では残念だった。そう考える選手は多いと思います。あのニュースには、皆、口には出さないけど驚いていたと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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