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次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第8節)【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
畠山は秋の日本代表ツアーでも活躍が期待される。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグ第7節(10月22日~10月23日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。

昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。

1 左プロップ

東恩納寛太(キヤノン)…パナソニックに敗れたが、スクラムでは背筋を地面と平行に保って安定を誘う。自陣ゴール前での巨漢タンゲレ・ナイヤラボロの突進へのタックルなど、防御でも働く。石原慎太郎(サントリー)もフッカーの青木佑輔のリードのもと、スクラムで仕掛ける。対する豊田自動織機の反則を奪った。

2 フッカー

樫本敦(近鉄)…サニックスに15―20で惜敗。後半17分、敵陣ゴール前スクラムで反則を誘うと、再度スクラムを選択。じりじりと押し込み、ナンバーエイトのレプハ ラトゥイラのトライを導いた。ジャッカル(前半25分はフランカーのタウファ統悦と2人がかりで反則を奪取)やロータックルも重ねた。

3 右プロップ

畠山健介(サントリー)…豊田自動織機を相手にスクラムは終始、優勢。接点での泥臭い防御でも魅せた。

4 ロック

ジョー・ウィーラー(サントリー)…パスコースへの高い出現率で、お家芸の連続攻撃を支える。フォワード陣が作る陣形の先頭でパスをもらい、ぐいと突進。一連の流れで2度それをおこなったことで、後半12分の中つる(雨冠に鶴)隆彰(後述)の4トライ目を導いた。サポート役としても、ボールへ絡みつく相手をハードに引きはがした。

5 ロック

グラント・ハッティング(クボタ)…NECとは15―15というロースコアゲームを演じた。タックル、ランを繰り出せば、ほぼ必ず相手を敵陣方向へ押し込む。フランコ・モスタート(リコー)も相手ボールラインアウトのスティールや突進、ジャッカルで光った。

6 ブラインドサイドフランカー

モセ・トゥイアリイ(ヤマハ)…NTTコムとの接戦にあって、ダブルタックルの「2人目」としてランナーの持つボールへ上腕を差し込む。トンプソン ルーク(近鉄)も後半12分頃、敵陣ゴール前左でこぼれ球へ反応して攻撃権を獲得。間もなく右大外へ回り込み、突進。献身的。

7 オープンサイドフランカー

ピーター・ラピース・ラブスカフニ(クボタ)…試合映像のなかにずっと映り続ける。どんどんボールをもらいに行く。守っては5点リードの後半16分ごろ、自陣22メートル線付近で勢いに乗る相手ランナーを待ち構える。味方のタックルでそのランナーが倒れそうなところ、ボールへ絡みついて反則を誘った。西川征克(サントリー)も密集の真上を乗り越えるようなランやボールへの絡みで魅せる。

8 ナンバーエイト

ワイクリフ・パールー(トヨタ自動車)…コカ・コーラ戦の前半23分頃、自陣で相手ランナーへセカンドタックルに入ってそのままボール奪取(そのふたつ前のフェーズでは、鋭い出足でランナーを押し返しにかかっていた)。前半34分、左タッチライン際をウイング彦坂匡克がトライした場面でも魅せる。その直前まで、トヨタ自動車は接点脇に駆け込むフォワードが杭を打つことでボール保持。その流れでボールをもらったパールーは、相手タックラーの接点側の肩へ駆け込み、タックルを食らいながら近くの味方へパス。周りが縦突進を重ねるなか、それと異なる動作で防御網を切り裂いた。徐々にコカ・コーラの防御網は後退させられ、ロングパスによる彦坂匡のトライが導かれた。松橋周平(リコー)は昨季準優勝の東芝に逆転勝ち。決勝トライを決めたこの人は、幾度も球を持って壁にぶち当たった。ホラニ龍コリニアシ(パナソニック)は、ビッグタックルで攻守逆転&スコアのきっかけを作った。

9 スクラムハーフ

アンドリュー・エリス(神戸製鋼)…左右に散らばった選手が自在にゲインラインへ仕掛けるのが、神戸製鋼のアタック。それを指揮するエリスは、地面の球を持ち上げ、接点際の防御を引きつけ、その都度異なる角度のパスを放つ。目の前に誰もいないと見るやランを仕掛け、タックラーを背負いながらオフロードパスも繰り出す。まさに指揮者。

10 スタンドオフ

山沢拓也(パナソニック)…自陣からのカウンターアタックでするすると前に出て、敵陣で対峙したタックラーの背後へゴロキック。その弾道をセンターのリチャード・バックマンが追いかけているように、周りと連携しながら強みを発揮している。注目の大学生トップリーガーは、試合に出るほど着実に力を発揮している。田村優(NEC)も限られたチャンスに顔を出し、チームの全得点に絡む。それ以外の局面でも再三、防御網の穴を突いた。

11 ウイング

アンダーソン フレイザー(神戸製鋼)…ハイボールキャッチをスコアに繋げた。例えばスコアを20―0とした前半30分、敵陣ゴール前右ラインアウト時の密集の裏へ、スクラムハーフのエリスがハイボールを蹴る。アンダーソンは弾道へ真っ直ぐ突っ込み、こぼれたボールをエリスが抑える。トライ。空中戦に強い人を活かす珍しい例か。背後へ蹴られたボールを追いかけて捕球するや、タックラーを次々とかわしたことも。それはお互いの足の止まりそうな試合終盤の出来事。ホンダとの39―24という点の取り合いを引き締めた。

12 インサイドセンター

ヴィリアミ・タヒトゥア(ヤマハ)…ラインアウトから展開されたボールをもらって守備網に亀裂を入れた。後半8分頃には突破された区域をカバーするなど、防御でも存在感を示す。濱野大輔(リコー)も強力なタックルとランを繰り出す。

13 アウトサイドセンター

ジャック・フーリー(神戸製鋼)…前半14分、ホンダを相手に2本目のトライを決めた。その起点となる連続攻撃で、この人が妙技を繰り出した。相手と十分に間合いを取ってパスをもらい、スピードをつけてタックラーへ仕掛ける。捕まる直前にゴールラインと平行なパスを放ち、ウイングの山下楽平を走らせた。止めを刺したのは、山下楽からボールをもらったフランカーの橋本大輝キャプテン。フーリーは防御でも魅せた。大外からの飛び出しで、相手のパスコースを断つ。ホンダに快勝。他会場ではアンソニー・ファインガ(近鉄)も、大きな突破→次のフェーズで密集へのサポートと、仕事量で貢献。

14 ウイング

中つる(雨冠に鶴)隆彰(サントリー)…ステップを切るほどスピードに乗り、4トライを奪取。ステップといえば、小松大祐(リコー)も出色。大外へ走ると見せかけ、タックラーが近づくや中央方向へステップ。そのまま目の前のタックラーの懐の奥を突破するような走りを繰り出した。彦坂匡克(トヨタ自動車)は、味方がシンビンで駆けた後半10分台の防御で目立った。自陣ゴール前スクラムに対するライン防御では、強力ランナーであるウィリアム・トゥポウの走路へプレッシャーをかけ攻撃の選択肢を削る。さらに続いたラインアウトからの攻撃に対しても、鋭い飛び出しでターンオーバーを決めた。

15 フルバック

ジェイミー・ジェリー・タウランギ(サニックス)…踊るようなステップで相手のタックラーの芯から逃れ、フリーだったウイングのアンドリュー・エブリンハムにパスを渡す。その流れで、前半28分のフランカー鶴岡怜志のトライを演出した。ウィリー・ルルー(キヤノン)も守備の凸凹をえぐった。

<備考>

・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)

・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。

・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。

・次節以降の詳細などはこちら

<参考>

第1節

第2節

第3節

第4節

第5節

第6節

第7節

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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