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「なりたい選手」が入ったということ。秋の日本代表ツアーメンバー発表。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
田中史朗曰く、ジョセフヘッドコーチのイメージは「男気」。(写真:アフロスポーツ)

ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いるラグビー日本代表は10月29日、31日から活動するツアーメンバー32名を発表。記者会見にジョセフヘッドコーチ、強化責任者の薫田真弘・男子15人制ディレクター・オブ・ラグビー、トニー・ブラウンアタックコーチ、立川理道キャプテンが出席した。

新体制のもとでは10月に2度、候補合宿を開催。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場でイングランド大会4強のアルゼンチン代表とテストマッチ(国際間の真剣勝負)があり、以後は欧州ツアーも組まれている。

今回のチームでは立川と堀江翔太の2名キャプテン制が敷かれる。共同キャプテン制度は、ジョセフとブラウンが昨季までいたハイランダーズ(国際リーグのスーパーラグビーで2015年度に優勝)で採用されたシステム。堀江と立川は、スーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズでもリーダーシップを発揮してきた。

選出された32名中、初選出は17名。昨秋のワールドカップイングランド大会に出場した選手は31名中12名のみが選ばれた。

同大会でキャプテンだったリーチ マイケルは「2019年(ワールドカップ日本大会)にピークを持って行く」と強調して早々に辞退し、オファーがあったものとみられる五郎丸歩も所属するフランス・トゥーロンでの活動に専念。マイケル・ブロードハースト、スーパーラグビーのチーフスでもプレーする山下裕史、今季サンウルブズ入りした真壁伸弥らとともに、10月に発表された候補メンバーにも名を連ねていない。

候補入りしていた選手のなかでは、サンウルブズの主力でもある稲垣啓太、日本代表初の100キャップ(テストマッチ出場数)まであと2と迫った大野均は怪我のため選外となった。小野晃征、マレ・サウは、「諸事情」で加わらなかった23~25日の第2回合宿に続いてリストから漏れた。

記者会見では薫田氏、ジョセフヘッドコーチ、立川キャプテンが順にコメントし、質疑応答は最初にテレビ局の質問を3つ、その後ペン記者の質問を5つ、受け付けた。その後の囲み取材は行われない予定だったが、帰り際に薫田氏らが応答。不参加となった選手については「怪我」「諸事情」という説明が強調された。

以下、一問一答(編集箇所あり)。

薫田 

「現時点で一番日本代表のジャージィを着たいというメンバーを選びました。新しい選手も揃っていますが、彼らにとっての今回のツアーは、これからの3年間に向けて重要で、これからのラグビー人生で一番タフなチャレンジをする期間だと思っています。50名弱のスコッドから(候補メンバーを選び)10月に2回のキャンプを行いまして、最終的にこの32人を決定しました。トップリーグ、サンウルブズとはこれから連携を図っていきます」

ジョセフ

「今回の会見にはトニー・ブラウンにもご参加いただいたこと、ありがとうございます。新しくメンバーを発表できることに嬉しく思っています(以下、あいうえお順にメンバーを発表)。キャプテンは2名おります。立川と堀江を選びました。共同キャプテン制は、トニー・ブラウンと私で過去に遂行したことです。同じ方向性で事に当たるうえでは効果的です。今回初選出は17名。若いチームを引っ張るにあたり、若いキャプテンに全責任を置くのは荷が重いとも思いました。これから強豪と戦ううえでは、この体勢で進みたいと思います。

サンウルブズと連携して、この共同キャプテン2名とともに前進したい。

私は9月1日に来日しましたが、それ以降、日本代表のスローガンをどうすべきか考えていました。僕1人で考えるのではなく、チームのメンバーを選んでから、選手たちと一緒になって考えたいと思うようになりました。1回目のキャンプで、リーダー陣と話しました。私が『どんなチームを作っていきたいか』『ファンからどんな風に見られたいか』といくつかの質問を投げかけ、選手たち自ら、テーマを浮かび上がらせました。『ONE TEAM all attitude for Japan』です」

立川

「今回、日本代表のキャプテンに選んでいただいて光栄に思っています。前回のワールドカップ以上の成績を求められていると思いますので、堀江さんと先頭に立って頑張っていきたい。『ONE TEAM』というテーマをリーダー陣、スタッフと作り上げる。チームには色んな海外の選手、若い選手、ベテランもいます。そんななか、色んな経験を活かしてチームをひとつにして戦うということに重きを置きたくて、このテーマを決めました」

<テレビ局の質疑>

――新しいリーダーを育てる意思があると伺っていますが。

ジョセフ

「2人の共同キャプテンは日本のベストプレーヤーでリーダーシップは申し分ない。いままでも日本代表を務めていて、ジャージィの意味を理解している。次のワールドカップに向け、チームを引っ張ってくれる。忘れちゃいけないのは、この2名は選手。パフォーマンスが大事です。ただ、リーダーシップを発揮しながら事にあたってくれると期待しています」

――どんなラグビーを。

ジョセフ

「テストマッチに向けて準備期間は短い。相手も強い。ただ、それを心配するだけではなく、アタッキングのマインドセットで臨みたいです。スピードを重視した戦いをしたいと思っています。フォワード陣は去年のメンバーから何名か抜けてしまったが、バックスは充実している。同じ顔触れも揃っている」

立川 

「準備期間は短いけど、スマートにアタックしたい。自分たちの形を信じてやっていきたいと思っています」

――キャプテンに指名されて。

立川 

「僕自身、あまりキャプテンというキャラでもないと思っていました。チーム(国内所属先のクボタ)でも今年からやっていますけど、いままでさまざまなキャプテンとラグビーをして、いい経験をしている。それらを吸収しながら、自分らしく、ポジティブに、チームをひとつにできるようにしたいと思います」

<ペン記者から>

――2人キャプテンの提案を受けて。

立川 

「お互いがサポートしあう。スタッフ、堀江さん、リーダー陣と、意見がぶれずに皆がまとまってやっていくことが大事だと感じます。責任を1人が負うのではなく、2人で分散させるメリットがある。サンウルブズでも堀江さんと2人でやってきたので、そこについては問題ないと思います」

――ジョセフヘッドコーチ、または薫田さんに伺います。稲垣選手、小野選手ら、選外となったワールドカップ経験者についてお話をお願いします。

ジョセフ

「稲垣のように怪我やコンディションの問題で選べなかった選手もいますし、諸事情で選べなかった選手もいます。ただ、今回の会見では、プレーする選手たちにフォーカスを置いてお話ししたいと思っております」

――ワンチームになるには。

立川 

「意見を交換して、コミュニケーションを取りながらチームになっていくのが大事。試合を通じて浅春特徴や性格がわかってくる。まだぎこちない部分もありますけど、2019年に向け、このツアーから1つのチームになって行ければ」

ジョセフ 

「今回は過去の日本代表と比べ、かなりユニークな編成です。チームに若い選手が多く、一方、仲谷選手のように35歳で初選出された人がいる。このチームがまとまって成功するには、早く同じ方向を見るのが大事。そのために共同キャプテン制を敷いたのです」

――共同キャプテン制は当座しのぎのものか。ずっと続けるか。

ジョセフ

「正直申し上げて、まだそこまで考えたことがございませんでした。ただ、良いチーム環境を作る必要がある。それができてこそ最高のパフォーマンスができる。同じ目的を持つことが大事です」

――攻撃についてどのようなイメージを。

ブラウン 

「チームとしてどう機能するか、という意味。アタックでもワンチーム、です。キーワードはスピード、スペース、スキルの3つです」

<メンバー>

・左プロップ

三上 正貴(東芝/178センチ/115キロ/33キャップ)

山本 幸輝(ヤマハ/181センチ/118キロ/0キャップ)

仲谷 聖史(ヤマハ/170センチ/105キロ/0キャップ)

・フッカー

堀江 翔太(パナソニック/180センチ/104キロ/44キャップ)

木津 武士(神戸製鋼/183センチ/114キロ/43キャップ)

日野 剛志(ヤマハ/172センチ/100キロ/0キャップ)

・右プロップ

畠山 健介(サントリー/178センチ/113キロ/75キャップ)

伊藤 平一郎(ヤマハ/175センチ/115キロ/0キャップ)

山路 泰生(キヤノン/180センチ/108キロ/0キャップ)

・ロック

谷田部洸太郎(パナソニック/190センチ/107キロ/6キャップ)

梶川 喬介(東芝/188センチ/105キロ/0キャップ)

アニセ サムエラ(キヤノン/198センチ/118キロ/0キャップ)

ブラインドサイドフランカー

マルジーン・イラウア(東芝/187センチ/105キロ/0キャップ)

ヘル ウヴェ(ヤマハ/193センチ/115キロ/0キャップ)

オープンサイドフランカー

布巻 峻介(パナソニック/178センチ/96キロ/0キャップ)

三村 勇飛丸(ヤマハ/178センチ/96キロ/0キャップ)

ナンバーエイト

アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム/189センチ/112キロ/9キャップ)

松橋 周平(リコー/180センチ/99キロ/0キャップ)

スクラムハーフ

田中 史朗(パナソニック/166センチ/72キロ/54キャップ)

矢富 勇毅(ヤマハ/176センチ/85キロ/16キャップ)

小川 高廣(東芝/172センチ/73キロ/0キャップ)

スタンドオフ

田村 優(NEC/181センチ/91キロ/38キャップ)

小倉 順平(NTTコム/172センチ/80キロ/0キャップ)

インサイドセンター

立川 理道(クボタ/180センチ/95キロ/46キャップ)

ティモシー・ラファエレ(コカ・コーラ/186センチ/98キロ/0キャップ)

アウトサイドセンター

アマナキ・ロトアヘア(リコー/191センチ/107キロ/0キャップ)

ウイング

山田 章仁(パナソニック/182センチ/88キロ/15キャップ)

福岡 堅樹(パナソニック/175センチ/83キロ/17キャップ)

カーン・ヘスケス(サニックス/178センチ/100キロ/14 キャップ)

レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/177センチ/92キロ/0キャップ)

フルバック

松島 幸太朗(サントリー/178センチ/87キロ/18キャップ)

笹倉 康誉(パナソニック/186センチ/92キロ/3キャップ)

※ポジションは過去の日本代表や各選手の所属先での起用方法に基づき、当方が編纂。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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