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薫田真広・日本代表ディレクター・オブ・ラグビー、非公開理由&辞退者に言及。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
薫田ディレクター・オブ・ラグビー(左)はジョセフヘッドコーチの「立ち姿」に好感。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は、10月31日からジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ就任後初の秋のツアーを開始。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場でイングランド大会4強のアルゼンチン代表と、以後は欧州でジョージア代表、ウェールズ代表、フィジー代表とテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。

もっともこの日の練習は、完全非公開。選手への直接取材も禁じられた。報道陣のリクエストなどの結果、急きょ薫田真広・男子15人制日本代表ディレクター・オブ・ラグビーのメディアブリーフィングが実施された。薫田ディレクター・オブ・ラグビーは、約30分程度の質疑を通しこの日の練習の中身、今回のツアーを辞退した代表選手について話した。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――初日の練習を非公開とした経緯。

「皆さま(報道陣)のお気持ちを十分にわかったなか、試合を中心にスケジュールを考えた結果、こうなりました。毎週トップリーグ(国内最高峰)の試合があって、月曜の練習は(強度を)上げることができない。練習内容は、選手のゲーム理解に時間を費やすもの。ゆっくり、ゆっくり(動作確認)をすることで、戦術が全て見えてしまう…それを考慮したということです。午前はジムワーク。サイモン・ジョーンズS&Cコーチが個別のプログラムを作っています。お昼にはリーダーズミーティングがあり、午後はユニットの練習がありました」

――それは、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチの意向だと説明して問題ないのですか。

「そうですね、勝ちにこだわって、と」

――今後もこういう状態が続くのか。

「今後は広報を通して『どうなっているのか』という議論はあるかもしれません。初っ端の練習についてはジェイミーとしても『決めたことでしょ』という思いがありますが…。変えることは変えないといけない」

――きょうの練習参加者は。

「(32人)全員、プラス、バックアップの内田啓介選手。(内田が故障者と入れ替わるかどうかは)木曜日までに判断する」

――5日に戦うアルゼンチン代表は昨秋のワールドカップイングランド大会で4強入り。非常に強い相手ですが。

「我々にとってもチャレンジです。彼らはランキングも(日本代表より)上ですし、ラグビーチャンピオンシップ(ニュージーランド代表などとの対抗戦)に参加していることからゲームに慣れているというアドバンテージもある。こちらは事前のミニキャンプは2回したのみで、若い選手も多い。ただ、新しい選手には期待をしていますし、そういうところを記事にしていただきたいなと思います」

――昨秋のワールドカップイングランド大会で3勝したメンバー31人のうち、今回選ばれたのは12名のみ。それ以外の選手の多くは、辞退または落選しています。

「チームとしてそれを追い続けていては仕方がない、と。この間の会見(10月28日のメンバー発表時)に私から言わせていただいたのですが、(日本代表の)桜のジャージィを着たい人を選んだ、と。2018年頃、ご指摘のあったような選手といまの若い選手を比べる時期はくる、かも、しれません。ただ、我々としては、新しい選手へ投資をしていきたい。そこにご理解をいただいて、フォーカスして欲しいと思います」

―― 一部の実績のある選手は、いまの日本代表に求心力を感じていないかもしれない。寂しくありませんか。

「誰とは言いませんが、いま、何に疲れているのか。フィジカルが疲れているとは思えないので…。彼らにとって、ワールドカップ以上の刺激がないということだと思います。代表は名誉のためだけにやるものでもない。ただ、お金でやるものでもない。その辺のバランスを考えて、個々が冷静に判断できるかどうかだと思います。我々は、純粋に日本のラグビーのために何かをしたいと思っている選手を、ピックアップするということ」

――今回の辞退者が復帰を熱望した場合は。心情的に、いまのメンバーを選びたくなってしまいませんか。

「パフォーマンスで選びます。あとはチームのバランスというものも考えて。ウインドウマンス(代表活動期間)については、チームが選手を派遣するということがレギュレーションで定められています。それを、どういう事情であれ辞退するというのは…。ペナルティー(を設ける)とは言いませんが、『来ないのであればもう選ばないよ』『チームが断っているのであれば、レギュレーションに沿って…』と考えています。トップリーグとも連携を図りますし、こちらがどう判断するか、です。代表から引退するのであれば、それはそれで仕方がないですが」

――今回の辞退者へペナルティーは課すのですか。

「ありもなしも、ないです。彼らがそういうこと(辞退の意向)であっても、冷静になってみて、どうだ、と。それが明日になるのか、明後日になるのかはわからないですが」

――選手の精神的な疲弊への理解は。

「いつまで疲れているのだろう、という感じです。正直に言いまして。2019年に日本でワールドカップがあるのは当たり前なので」

――「諸事情」で辞退と説明された選手のなかには、日本代表でプレーすることを望んでいる選手が多いと聞いています。

「そういうものは、我々のところに来ていないです」

――辞退者とは個別の話し合いはしていますか。

「していないです。次(の展開)が生まれてこないので。呼ぶための過程では話をしましたが、『疲れた』という選手にこちらから何か新しいことは…。新しい選手に新しいことを教えるのが先決かと。正直に言いまして、(今回)選ばなかった選手は、基本的に、ない、です」

――パフォーマンスが良くても、ですか。

「それは見ないわけではない。ただ、いまいる選手を大切にする方が先です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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