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大学V8の帝京大学・松田力也、日本選手権サントリー戦へ「いい判断させない」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
「強気のラン」も持ち味とする。卒業後はパナソニックへ進む。(写真:アフロスポーツ)

大学選手権8連覇中の帝京大は1月21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で日本選手権の準決勝に出場。トップリーグ王者のサントリーに挑む。

相手のサントリーは今季、前年度9位からのV字回復に成功。今度のカードに向け、沢木敬介監督は「相手をリスペクトして、100パーセントスマッシュするだけです」と断言する。

かたや帝京大は今季、20世紀の新日鉄釜石や神戸製鋼が日本選手権などでマークした7連覇を越える偉業を達成。かねてから、日本選手権での勝利および優勝もチーム目標のひとつに掲げている。日本選手権での大学生チームの出場は来季からなくなることもあり、この一戦への注目度は高まっている。

そんななか、淡々と意気込みを語るのは副キャプテンの松田力也だ。1年時から司令塔のスタンドオフを務め、常勝集団をけん引。昨年6月には日本代表にも初選出され、スコットランド代表戦などで最後尾のフルバックとしてプレーした。

18日の練習後、即席取材に応じて勝負のポイントなどを語った。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――サントリー戦に向け、どんな準備をしていますか。

「まずはチームとして自分たちのやることを明確にしました。やらなくてはいけないことを精度高くやることが大事なので、ミスが出ないよう、1つひとつ準備しているという感じです」

――やらなくてはいけないこと。例えば。

「タックル。また、サントリーさんは(陣形の)幅を持ってアタックをしてくるので、(守備網を作りながら)誰が誰を見る(マークする)のかを明確にするということです。また、サントリーさんのテンポでボールが運ばれないよう、ラック(接点)でファイトするところはファイトをしていければと思います」

――ボールを持った際は、どう敵陣へ進みますか。

「ボールを動かすなか、必ずスペースは生まれてくる。そこをしっかりいいタイミングで抜けるよう、コミュニケーションを取っていきたいです」

前にボールを投げられないラグビーの試合において、敵陣へ進む際の最大のツールはキックとなる。もっとも今季の帝京大学は、しばし自陣からでもランとパスでスペースを攻略。キックを使わずして敵陣に進むことがある。その意志の表れが、「必ずスペースは生まれてくる。そこをしっかりいいタイミングで抜けるよう」なのだろう。

一方、1月9日の大学選手権決勝(東京・秩父宮ラグビー場)での松田はキックを多用。対する東海大学の防御網が前へせり上がるのに対し、その背後へ鋭い弾道を放つ。自らの判断で、33―26での勝利を下支えした。

その点に触れると、改めてあの日の見立てを明かす。

「相手の裏をかく判断」という、司令塔の仕事内容を再確認させられる。

――東海大学戦では、好判断のキックで敵陣へ進んでいた。

「東海大学さんは、(自軍の重量級の)フォワードを後ろに走らされる方が嫌だったと思うので。後ろに走らせることで相手の体力を奪いながら、自分たちのフォワードを前に出した方が、絶対にいいプレーができる…。それであの選択をしました」

――今度は横幅の広いサントリーの防御網を前にして、どうキックを使うか。見所のひとつとなりそうです。

「いつも(最後列両端の)ウイングの上がり方、立ち位置などは見ている。試合のなかで判断ができればいいと思います」

――相手の司令塔役は、接点周辺でパスを配給するスクラムハーフが流大キャプテン。こちらは2014年度の帝京大学のキャプテンでもあります。また、松田選手の対面にあたる小野晃征選手は、2015年秋のワールドカップ日本代表です。

「流さんは、(ともにプレーしていた時は)絶対に敵にしたくないと思っていました。常に冷静にゲームを作ってくるでしょうし、小野さんも多くの経験をされている。9、10番がサントリーのキーだと思います。それに対し、しっかりとプレッシャーをかけていきたいです」

――流選手もまた、相手防御の裏側へのキックが巧みです。あのプレーを、させたくない。

「そうですね。(笑いながら)でも、そこは上手く狙ってくるとは思います。実際に一緒にやってきたためにわかることもありますし、あれから進化されていることもあるかとも思います。…とにかく、9番、10番に前を向かせない、いい判断をさせないことが大事になります」

仲が良く、頼っていた先輩を「敵に回す」際の心境を述べる。そんななか、この意を示していた。

「9番(スクラムハーフ)、10番(スタンドオフ)」の仕事が「相手の裏をかく判断」なら、相手の「9番(スクラムハーフ)、10番(スタンドオフ)」にその仕事をさせづらくする…。

ゲームリーダーとして、モチベーターとして、学生最後の大会に挑む。

――ちなみに、ご自身とは別のポジションの動きについても伺います。例えば、フォワードが8対8で組むスクラム。大学選手権決勝でも、東海大学にやや苦しめられたように映りましたが。

「どうなるかはわからないですが、ゲームの状況に応じて、バックスとしても対応していきたいと思います」

――東海大学戦。組み合うフォワードの近くへ歩み寄り、何度も激励していました。

「押されている部分もありましたが、互角に渡り合えている部分もあったので。…モチベーション高く組んで欲しいですし、チーム全員が、そういう気持ちでいる、ということを示した、という感じです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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