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サントリー日本選手権制覇。ミスで失点後、流大キャプテンが見たものとは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
胴上げに笑みをこぼす沢木監督。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

日本のラグビーシーズンを締めくくる日本選手権の決勝戦が1月29日、東京・秩父宮ラグビー場であり、サントリーが前年度王者のパナソニックに15―10で勝利。国内最高峰のトップリーグに続き、2冠を達成した。

9-3とリードして迎えた後半16分、キックオフを確保した後にスクラムハーフの流大がキックチャージを受ける。相手ロックのヒーナン・ダニエルのトライを許すなどし、9―10と逆転された。しかし、チームは動じなかった。互いの防御が試合を引き締めるなか、スタンドオフの小野晃征が20、25分とペナルティーゴールで加点し、無敗での完全制覇を決めた。

沢木敬介監督、流キャプテンが公式会見に応じ、ゲームを総括した。

以下、一問一答(編集箇所あり)。

沢木監督

「皆さん、お疲れさまでした。素晴らしいパナソニックさんのディフェンスに対して、自分たちの予定していたアタックはできなかったんですけど、選手たちはすごく我慢して…。まぁ、これもラグビーだと思います。今年は色んな状況に対応するトレーニングを、ずっと積んできました。上手くいかない時にどうするか、次に何をするか…。きょうは、グラウンド上の選手同士でコミュニケーションを取って、それができた。本日はありがとうございます」

流キャプテン

「ゲームプランとしては、予定していたものではなかったです。ただ、ファイナルは勝つことが大事。1点差でも勝つ。3点(ペナルティーゴール)を積み重ねて、我慢強くラグビーができたのがこの結果だと思います。意思を持ってプレーできたことがこの結果に繋がったと思います。サントリーで優勝できて本当に嬉しく思います」

――予定外だったこと。

沢木監督

「サントリーとレフリーの間でブレイクダウン(ボール争奪局面)の解釈にずれがあったので、ボールの継続が難しかった。ただ、それにはしっかりと対応しなきゃいけない。そこでペナルティーを取って、スコアまで持っていけたというのは、そういう状況下でベストな判断ができたからだと思います」

――試合中のコミュニケーションについて。

流キャプテン

「後半はパナソニックの攻撃でブレイクされることがなかったので、しっかりと敵陣に行くことを考えました。ペナルティーを取るだけ、と、冷静にゲームプランを変えながらできたと思います。ハーフタイムから我慢することが大事だと言っていたのですが、僕のチャージでトライを取られた後も、『もう1回3点を取ることが大事だ』と話し合いました」

――思うように攻められないことのストレスはありませんでしたか。

流キャプテン

「パナソニックさんは、ディフェンスが広くてワイドに立つ。逃げずにダイレクトプレーでブレイクを狙っていきたかった。何度かそれが上手くいったのですが、ラインブレイクの後のブレイクダウンや僕らのボールの動かし方がうまくいかないところもあった。キックを使いながら、我慢強くボールを継続していくようにと(プランが)変わりました」

――しばしば試合が中断した時は何を話していましたか。

流キャプテン

「もう1回ペナルティー(を誘うこと)を意識しよう、また、相手よりも走る。それを皆に伝えました。相手よりも走ることで数的優位が生まれますし、ボールキープもできる。そこをサントリーのプライドのひとつでもあるので、そう確認しました」

――後半終盤、相手の山沢拓也選手のキックパスへ、松島幸太朗選手が鋭く反応。高い跳躍で捕球しましたが。

流キャプテン

「何も心配なく。『ああ、来るな』という感じで観ていました。松島は『マーク』という声も出していたので(自陣22メートルエリアで『マーク』と叫びながらキックをノーバウンド捕球すると、その場でフリーキックが与えられる)。あそこでキックパスされた時のフルバックの対処法としては、理想の形。よかったと思います」

――目が潤んでいるように見えますが。試合後に思ったことは。

流キャプテン

「まぁ、色んなことがあった1年なので。僕も悩んで色んな失敗もしながら、他のリーダーに支えてもらいながら、ここまで来たので。色々と考えることはあって…。泣いているつもりはなかったのですが、そう見えたのであれば…。きょうは僕もミスをした中で粘り強く戦ってくれて、すごく感謝をしたのと…。スタッフも本当にハードワークして、選手の何十倍の時間をかけて準備をしてくれて。ノンメンバーも、本当にパナソニックの動きを分析してくれて、当日のサポートもしてくれた。ノンメンバーにも感謝をしたいと思っています」

――活躍したジョージ・スミス選手については。

沢木監督

「皆さん知っているように、こういう試合でなにが必要かを理解して一貫性のあるパフォーマンスをしてくれました」

――選手たちへの点数は(シーズン序盤に「15点」など、厳しい点数を発していた)。

沢木監督

「きょうのゲームの内容であれば、全然だめですよ。でも、今季変わったのは、選手が自分の意志を持ってハードトレーニングをできていた。去年の悔しさを力に変えて、成長したい、勝ちたいと…。その部分では成長しています」

――チームのディフェンスへの評価は。

流キャプテン

「パナソニックさんはカウンターからのアタックが持ち味。リアクションを意識しました。きょうはタックルした後に起きるスピードが良かった。全員が立ってハードワークできたことが、いいディフェンスに繋がったと思います」

――勝敗を分けたプレーとその理由は。

沢木監督

「スコアした後のキックオフをマイボールにして、そこから自分たちが意図したキックが蹴れていた。1本、チャージされた人もいますけど(隣で流キャプテンが苦笑)、あの後、いいコミュニケーションが取れていた」

――キックチャージされた瞬間と、その後の気持ちの切り替えについては。

流キャプテン

「それまでも、キックオフの後は僕のキックで敵陣へ行くようにゲームを組み立てていた。もっとキックチャージが来ることを想定していたら…。

あの時は、(スタンドオフの小野)晃征さんが(チャージにくる選手を)ブロックしてくれようとしていたけど、それよりもはるかに高い(ロックのダニエル・)ヒーナン選手がチャージに来た(身長差は25センチ)。想定外というか、僕のミスかな、と素直に受け止めています。

失点を許して、逆転をされたわけなんですけど、インゴールでの皆の発言、表情がすごく前向きで、『我慢して、ディシプリンを守ろう』『敵陣にいることが大事』と口を揃えていて。マツ(松島)が『これはチームのミス』と言ってくれて、救われもしました。

僕自身、あまり引きずるほうではないですが、ちょっとだけヤバいなと思いました。でも、皆の姿を見て、言動を聞いて、次に向かいました」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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