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サンウルブズ中鶴隆彰、怪物サヴェアにどう勝つ? 山田章仁から得た財産とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本選手権決勝。相手の福岡堅樹(写真右から2人目)もサンウルブズで先発。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは2月25日、発足2年目となるシーズンの開幕節をおこなう。本拠地の東京・秩父宮ラグビー場で、前年度王者のハリケーンズとぶつかる。

怪我人が続出したサンウルブズは、先発15名中7名がスーパーラグビーデビューとなる。そのなかの1人は26歳のウイング、中鶴隆彰。2016年度の国内最高峰トップリーグで、17度もインゴールを割ってトライ王とシーズンMVPを受賞した。身長177センチ、体重80キロと小柄ながら、スピードと切れのある動きで今季のサンウルブズへの追加招集が叶った。

早稲田大学から加わった2013年度からの3シーズンで通算15試合出場、10トライという記録を残していたが、昨季の公式戦での出番は2試合のみ。昨今の活躍には「シンデレラボーイ」との冠もつく。

ハリケーンズ戦では、ジュリアン・サヴェアを対面に迎え撃つ。年齢は中鶴と同じだが、身長192センチ、体重106キロと大柄だ。力感ある走りで、ニュージーランド代表として52キャップ(国際真剣勝負への出場数)を獲得。文句なしの突破役だ。

果たして、中鶴自身はこの対決をどう捉えているのだろうか。2月23日、東京は辰巳の森ラグビー練習場での調整後、複数の記者に囲まれるなか見解を示した。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――サヴェア選手、どう観ますか。

「本当に世界的な、フィジカルのあるウイング。自分としては積極的に勝負して、何かを掴みたいです」

――「勝負」のイメージ。例えば。

「止まって、そこから急加速で…。アジリティで勝負したいです。ディフェンスでは低く、鋭くいこうと思っています。サンウルブズに入るのが決まってから、You Tubeなどでサヴェアのプレーを観るようにしています。チームでもハリケーンズの試合のビデオを用意してくれているので、それも見るようにしています」

この人の白眉は、鋭さと速さだろう。「止まって、急加速」。その瞬発力で、右タッチライン際を一気に駆け抜けたいところか。

駆け抜けてからのフィニッシュに関しては、18日、お灸をすえられている。

福岡・ミクニワールドスタジアム北九州での壮行試合の前半32分頃。右タッチライン際を快走も、対するトップリーグ選抜のウイング、山田章仁にトライを阻まれた。

駆ける中鶴を背後から追いかける山田は、その相手を捉えると下半身を地面に滑り込ませ、グラウンデングを防いだのだ。

試合はサンウルブズが24-12で勝ったが、去り際、中鶴は山田と何やら言葉を交わしていた。直後に出演したテレビ番組の発言によれば、「ああいうところを決め切らないと、と言われました」とのことだが…。

――山田選手には何と。

「章仁さんはもともとトレーニングを一緒にやっている、兄弟子みたいな感じ。他愛もない話をしました」

――サヴェア選手とのマッチアップのなか、あの時と同じような場面がやってきたら…。

「そもそも下(自身とグラウンドの間)に入られることを頭に入れて、身体を回転させるなりしてトライをしたいと思います」

失敗は成功のもととはよく言ったものだ。あの瞬間に得た教訓を肥やしにし、本番ではインゴールへ球をねじ込む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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