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サンウルブズ、ハリケーンズ戦大敗に「聞いていただきたい質問が…」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
カークキャプテンを筆頭に献身も実らず(写真は昨季のもの)。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは2月25日、本拠地の東京・秩父宮ラグビー場で発足2シーズン目の開幕節に挑み、前年度王者のハリケーンズに17―83と大敗した。

立ち上がりこそ鋭い防御を繰り出したサンウルブズだったが、次第に飛び出すタックラーの背後に大きなパスをつながれ、5、7分と立て続けにトライされる。以後も攻め込むさなかのインターセプトなどからもスコアを許し、クラブ創設以来2番目に多い失点を喫した。

チームは3月4日、準ホームのシンガポール・ナショナルスタジアムでキングスと対戦。前年度はサンウルブズが1勝1分13敗だったのに対し、キングスは2勝13敗だった。

試合後はフィロ・ティアティアヘッドコーチとナンバーエイトのエドワード・カークキャプテンが公式会見に応じた。従来なら公式談話を残したのちに質疑応答に移るのだが…。

以下、一問一答(編集箇所あり)。

ティアティアヘッドコーチ

「皆さん、お元気ですか? 何か質問があればお願いします」

――きょうの勝敗だけを見据えれば、早めの選手交代で流れを変えるアイデアもあったような。戦前のイメージを含め、ベンチワークについてはどうお考えですか。

「いい質問です。ただ、交代に関してはハッピー。怪我などによるやむを得ない交代はありましたが、よかったと思っています」

――今日の試合内容。

ティアティア

「ハリケーンズは前年度のチャンピオン。厳しい試合になることは予測していました。嬉しかったのはサンウルブズの選手があきらめなかったこと。それがハッピーです。

ハリケーンズはいいプレシーズンを送ってきて、そこでゲームプランを積み上げていたと思います。私たちは18日しか練習をしていないのが現実ですが、それでもいい場面を見せられた。スクラムは強いチームへもプレッシャーをかけられました。3トライを取れたのもハッピーです。すぐに向上しなければいけないことがあるのも確かです。キングス戦に向けて短い期間で、調整していきたい。また怪我人も多いので、次の試合に影響しないことを望みます」

――昨季は4月16日、ブルームフォンティン・フリーステイトスタジアムでチーターズに17-92と大敗。その翌週の4月23日、東京・秩父宮ラグビー場でジャガーズに36-28で勝利しています。

ティアティア

「全員にチャンスを与えているつもりです。23人がサンウルブズのジャージィを着て臨みました。私自身、スコアを気にするコーチではなく、1人ひとりの成長を観て、組織として向上していきたいと思っています。

確かにブルームフォンティンの大敗はコーチとしてもタフでしたが、人生においては困難から立ち上がるのが大切。今回が困難というわけではないですが、困難から立ち上がるのは大切ではないでしょうか。サンウルブズのブランドを上げるためにも、キングス戦でいい試合をしたい。思い切り、やるのみ。相手の映像を観て、こちらのゲームプランを作りたいと思います。またきょうの我々の映像も観て、何を向上させていくべきかを分析していきたい」

――準備したことはどれくらいできたか。

カークキャプテン

「明日、陽がまた昇ると思っています。最後の20分間は、やりたかったプレーができた(後半29,37分にトライを挙げる)。ハリケーンズは4試合中、スコアを相手に取らせないシーズンもある。こちらがトライを決めた。そういう部分を評価していただければ。シンガポールに行く選手はハングリー精神を持って前進してほしい。シンガポールもホーム。その気持ちで挑んでいきたいです」

――ハリケーンズの印象は。

カークキャプテン

「私自身、ニュージーランドカンファレンスはクイーンズランド(レッズ)時代からどういうものかわかっていた。インターナショナルレベルのチャンピオンと戦えてうれしく思う。6人のオールブラックスが遠征に来てくれた。これはいい経験になる。今回は南アフリカカンファレンスに切り替えていかなくては。ハングリー精神を忘れず自分たちのプレーを試していきたい。これはワールドカップ(2019年の日本大会)に向けたキャンペーンでもありますが、いい準備段階になっていると思います」

実はカークが言葉を発する時、ティアティアヘッドコーチは手元にメモを記していた。最後の質問を受けて話をした末、そのメモに目をやりながら「これはスーパーラグビーにとって素晴らしいモーメントです」と強調した。

――シンガポール遠征のメンバーについて。

ティアティアヘッドコーチ

「今回、27名を連れていく予定です。メディカルチェックをおこない、選んでいきたい。これまで怪我でメンバーを失っているので、これ以上失わないよう祈るばかりです。月曜にはチーム内でのメンバー発表をして、週の後半に公式に発表をします。楽しみにしていてください。

…実は、聞いていただきたい質問があったのですが、私から話をさせていただきます。

今日は、我々のチームで12人の選手がデビューをしてくれた。本当にスーパーラグビーにとって素晴らしいモーメントです。本当に素晴らしいことです。皆さんにぜひ書いていただきたいと思っています。

うち9人はスタートで、3人が入ってくれていいインパクトを与えてくれました。

伊藤(平一郎、プロップ)、サム・ワイクス(ロック)、ジーン(マルジーン・イラウア、フランカー)、ヴィリー・ブリッツ(ナンバーエイト)、内田(啓介、スクラムハーフ)。本当にいいデビューをしてくれた。田村煕は、(兄の優に続き)きょうだいでスーパーラグビーをプレーした。田村ファミリーにとって素晴らしい快挙です。

ティモシー・ラファエレはセンターからスタンドオフへのシフトもあったが、快挙を成し遂げてくれた。中鶴(隆彰、ウイング)は昨季のトップリーグのMVPでしたが、きょうも活躍してくれた。福岡堅樹(ウイング)も活躍できる瞬間があった。

リザーブでは日野(剛志、フッカー)、谷田部(洸太郎、ロック)、江見(翔太、ウイング)…。特に江見は本当に素晴らしいプレーをした。本当にお願い申し上げたいのですが、選手1人ひとりが出し切ってくれたのを祝福していただければ光栄に思います」

ここで質疑は打ち切られた。追ってハリケーンズの会見時間も迫っていたため2人は離席したが、指揮官は「続けましょう」とも話していた。好人物との評で鳴らすティアティアヘッドコーチは、以前にも若手選手への質問がなかったことを疑問視していた。繊細な舵取りは続く。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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