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4大会連続でU-20ワールドカップ出場権を逃した責任は誰が取るべきなのか?

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
AFC U-19選手権準々決勝 日本は北朝鮮相手にPK戦の末、敗れた。

後半38分に同点ゴールとなるPKを決めていたU-19日本代表の絶対的エース、南野拓実がPK戦の5人目のキッカーとして歩き出した時、僕は嫌な予感がした。試合中にPKを蹴っている選手がPK戦でもう一度PKを蹴るのは、猛烈なプレッシャーがかかるからだ。尚且つ、失敗すれば敗退が決まるシーン。

僕はミャンマーの首都、ネピドーのウンナ・テイディ・スタジアムのスタンドから祈った。「頼むから決めてくれ」と。

しかし、その祈りは届かなかった。南野拓実が1回目と同じコースに放ったシュートが北朝鮮のGKに弾かれた瞬間、U-19日本代表の「世界への扉」は閉ざされたのだったーー。

重すぎる「8年間の空白」

来年ニュージーランドで開催されるU-20ワールドカップの出場権をかけたAFC U-19選手権準々決勝、日本代表は北朝鮮代表相手に1-1のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦スコア4-5で準々決勝で敗退した。

U-20ワールドカップは2年に1度開催される国際大会である。アジアの出場枠は4カ国。その前年に行われるAFC U-19選手権の準決勝に勝ち進んだ4チームに自動的に出場権が付与される仕組みだ。

これでU-19日本代表は4大会連続でAFC U-19選手権の準々決勝で敗退することとなり、サッカー選手の成長過程で非常に重要な19~20歳の世代で、世界の舞台を体験できない「8年間の空白」を作ってしまった。

フル代表は5大会連続でワールドカップ出場を果たしているが、将来のフル代表候補と成り得る「ダイヤの原石」たちが、世界の強豪相手に磨かれる経験を逃してしまうのはゆゆしき事態だ。

PDCAサイクルを4回まわして成果が出なければ統括者の引責が妥当

ひとつの組織が目標を定めて活動を行って、8年間も結果を出せない状態であれば、その活動の統括者は責任を取って然るべきである。

例えば、僕の本業である経営コンサルティングの業界では、クライアントと協議して取り決めたプロジェクトが納期に間に合わなかったり、大幅な予算超過などの問題を起こした場合、現場の責任者であるプロジェクトマネジャーではなく、そのプロジェクトのトップである統括パートナーのクビが飛ぶのが常識である。これは何もコンサルティング業界に限ったことではない。通常の企業経営でも同じことだ。

1度や2度の失態であれば現場監督の引責で十分かもしれないが、今回は4回連続での目標未到達である。管轄サイドの責任問題に発展しない方がおかしい。

財団法人や株式会社といった組織の形態について言及するつもりはない。体制がどうであれ、PDCAサイクル(※)を4回まわしても一向に改善されない現状において、その組織の統括者の責任追及がなされないなど言語道断だ。

※PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4ステップを繰り返すことで、業務を円滑に進める事業活動の基本的手法。

結果の出ない改善策は評価に値しない

PDCAサイクルにおいて最も重要なのはCheckステップである。Doステップの結果が悪かった場合、どこに問題があるかを特定した上でその原因を分析し、アクションプランを練る。このCheckステップで課題認識を誤ると、無駄な改善策を施すこととなり、サイクルが空回りするわけだ。

今大会に向けては、Jリーグで優勝経験のある鈴木政一氏をU-19日本代表監督に招聘したり、J3にJ-22選抜を発足させて、若手の出場機会を増やしたり、各クラブが主力選手の出し惜しみをしないように調整したり、過去の反省を活かして様々なアクションプランが実施された。

日本サッカー協会としては、やれることはやったと自負していることだろう。しかし、それでも結果が伴わなかった。競争の世界では結果が全てである。結果に結びつかない改善策など、評価に値しないのだ。それはつまり、Checkステップにおける原因分析が誤っていたことを意味する。

当然、J-22選抜発足は長期的視野に立った施策であって、1年目ですぐに結果に結びつくものではないことは重々承知している。では、短期ですぐに成果の出る施策は同時並行で行ったのか?成果の出る周期を短期・中期・長期に分けてアクションプランを練るのが、問題解決手法の基本中の基本だ。

メンタルの強化こそU-19日本代表に必要な施策

僕が提唱するアクションプランの代替案は「メンタルの強化」だ。U-20ワールドカップ出場権を獲得した北朝鮮代表、ミャンマー代表の試合を現地で実際に観てみたが、勝利に対する執着心が日本代表のそれとは桁違いだった。

日本代表選手よりも明らかに技術面で劣っているのに、それをカバーするには余りあるほどの気迫あふれるプレーを彼らは披露していた。スタミナが切れた後半終盤の時間帯でもキモチだけで最後の寄せができていたり、何が何でも勝つんだという、魂のこもったプレーが随所に垣間見れた。

まだサッカー選手として未完成の時期において、このメンタルの差はフル代表の世代よりも顕著に出ると僕は思う。潜在能力の120%や150%の力を精神力の強さで引き出せる選手は強い。マンガで喩えるならスーパーサイヤ人になれるかどうかの差だ。国を背負って戦う気概を戦闘力に上乗せできるかどうかだ。

加えて、劣悪なピッチコンディションなどに代表される途上国特有の「アウェイの洗礼」がよくあるアジアが舞台なら、なおさら苦境に動じない精神力が重要になってくる。

この部分で平成生まれの日本人は圧倒的に弱い。ゆとり教育の弊害と言ってもいい。ならばそのビハインドを日本サッカー協会の指導の下で、取り返すしかない。U-19日本代表に専属でメンタルトレーナーを付けたり、J40クラブのアカデミーに対してメンタル強化のメニューを指導したり、やり方は色々とあるはずだ。ここは是非日本サッカー協会に専門家を招聘し、メンタル強化施策の詳細化をお願いしたい。

「トカゲの尻尾切り」は不毛 健全な組織運営を望む

繰り返すが、結果を出せない者は淘汰されるべきだ。何十億円という予算を組み、1億2千万人の日本国民の期待を一身に背負うサッカー日本代表をマネジメントする日本サッカー協会が、成果主義とは程遠い慣れ合いの組織で良いはずがない。

この「育成の失敗」は必ずや近い将来、フル代表がワールドカップに出場できない形でつけが回ってくるだろう。そうなってしまってからでは手遅れだ。抜本的な変革が急務である。

代表監督の首を切って示しを付ける「トカゲの尻尾切り」はもう御免だ。結果が出なければ、然るべきポジションの者が引責する健全な組織運営を望む。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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