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東アジアカップ惨敗 ハリルホジッチ監督のJFA批判はタブーなのか?

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
第2戦韓国戦の後半にベンチ前の備品に座り指揮を執ったハリルホジッチ監督(写真:アフロスポーツ)

Jリーグ所属メンバーで東アジアカップに挑んだサッカー日本代表は2分け1敗の勝ち点2の最下位で大会を終えた。前身の東アジア選手権も含めて6回目となる今大会において、日本の未勝利、最下位はともに史上初となった。

3戦目の中国戦を終えた直後のインタビューでハリルホジッチ監督は「あと2~3日早く現地入りできていれば、全て勝てていたと思う」と最後まで敗因を他所に求めた。

このハリルホジッチ監督の姿勢に対して、「言い訳がましい」「日程は最初からわかっていたこと」などと監督を批判する意見が噴出している。果たして彼の意見は真っ当なものなのか、単なる責任転嫁なのか、ここで検証したい。

大会前のスケジュールは確かに圧倒的に日本が不利

まず、参加4カ国の大会前の日程について整理する。

Jリーグは7月29日(水)にJ1のリーグ戦が開催されており、日本代表は7月30日(木)に開催地である中国・武漢へ移動し、練習を2日間行って、8月2日(日)の初戦(北朝鮮戦)を迎えている。

それに対して、韓国のKリーグと中国のスーパーリーグは、大会直前のリーグ戦が7月25日(土)と7月26日(日)に行われており、大会に向けた準備期間はちょうど1週間確保できていた。北朝鮮の国内リーグについての情報はないが、韓国や中国以上に長い合宿期間を設けて大会に挑んだ可能性は高い。

つまり、日本代表はライバル3カ国と比べて、大会に向けた合宿期間が3日間(もしくはそれ以上)短く、韓国や中国の代表選手は中6~7日で初戦を迎えているのに対し、日本代表選手(J2の山口蛍を除いて)は、中3日で大会に挑んだ形となる。

ワールドカップやオリンピックなどの国際大会では、試合間隔に中1日の差があるだけで有利不利の議論が巻き起こるのに、東アジアカップにおいては中6日(もしくはそれ以上)と中3日の差が大会初戦に生まれていた格好だ。例えるならば、陸上の走り幅跳びで日本代表だけ助走距離を半分に短縮されたと言っても過言ではないだろう。

日程面の差異は初戦のみであり、第2戦、第3戦は4カ国一緒の条件と反論する人もいる。しかし、中2~3日と過密日程が続く今大会において、その直前のリーグ戦でも日本代表の選手たちは中2~3日の連戦が続いていた。特にスルガ銀行カップの都合上、7月22日(水)にもリーグ戦が行われたG大阪と鳥栖の7選手はこの猛暑日が続く中、なんと中2~3日で6連戦を戦っていたのだ。疲労の蓄積という面では、日本代表は相当なハンデを負っていたといえる。

更にハリルホジッチは日本代表監督に就任後、まだ半年も経っておらず、今大会は特に初招集のメンバーが多く含まれていたため、できるだけ長く合宿期間を設けて、新しい選手たちに戦術を徹底的に叩き込みたかったのだろう。そういった面で、監督が執拗に日程面の課題に言及するのは、メディアもサポーターも一定の理解を示してあげるべきではないか?

日本サッカーの発展に向けて、建設的な議論が必要

ハリルホジッチ監督のJFA批判はすなわち、日本サッカー界への提言とも言える。日本サッカー協会には、以下の点でもう一度、課題解決への道を模索してもらいたい。

  • 東アジアカップ直前の水曜開催のリーグ戦を、別の週の水曜に開催することはできなかったのか?

Jリーグとの調整が必要だが、もう一度年間スケジュールを見直して、折衷案となる別の水曜リーグ開催の日程を検討してほしい。

  • 東アジアカップの開催時期をシーズンオフに変更するよう東アジアサッカー連盟に働きかけることはできないのか?

2ステージ制が導入され、過密日程に拍車のかかったJリーグとの調整が難航するならば、大会自体をJリーグと被らない時期に開催するように、東アジアサッカー連盟に提言してはどうだろうか。実際に5年前の第4回大会は、2月のオフシーズンに行われていた。

歯に衣着せぬ物言いが目立つハリルホジッチ監督は、時に物事の本質を突いてくる。協会批判について責任転嫁と一蹴するのではなく、建設的な議論を望みたいところだ。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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