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「エア取材」告発側の自浄作用は?カンゼン社運営のフットボールチャンネルがエア取材を理由に謝罪文を掲載

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
カンゼン社が発行している雑誌『フットボール批評』

カンゼン社が運営するウェブメディア『フットボールチャンネル』が本日9月22日、謝罪文を自社サイトに掲載した。

9月18日に掲載した「大宮VS川崎、大荒れの一戦が場外にも飛び火。サポーター同士の乱闘で逮捕者も」という記事についてお知らせします(当該記事は削除済み)。

9月18日午前8時15分頃掲載された当該記事の中で、「サポーターが連行、逮捕された」という主旨の記載がありましたが、これは事実の確認が明確にとれているものではありませんでした。よって、当日午前10時30分頃、当該記事を削除致しました。

不正確な記事を配信してしまったことを、読者のみなさま、当該クラブ、当該クラブのサポーター、ならびに関係者のみなさまに深くお詫び致します。

フットボールチャンネル編集部

出典:訂正とお詫び|フットボールチャンネル

問題となった元記事は削除されているが、配信先には残っているので以下に引用する。

川崎フロンターレと大宮アルディージャの一戦で生じた乱闘騒ぎが、試合終了後にサポーターにも飛び火したようだ。

J1 2ndステージ第12節が17日に行われ、川崎フロンターレと大宮アルディージャが対戦。初のチャンピオンシップ(CS)出場をかけて挑んだ川崎だったが、2-3で大宮に敗れている。

この試合はイエローカード6枚にレッドカード1枚が飛び交う波乱の試合となった。まず前半の36分に川崎の元日本代表FW大久保嘉人が大宮のMF横谷繁に報復行為を行い、一発退場となる。

そして、試合終了後には両チームが整列しようとした時に川崎のDFエドゥアルドと横谷が激しく揉め合い、乱闘寸前にまで発展した。

これに触発されて、スタジアム外でもサポーター同士が乱闘騒ぎを起こしている。大宮サポーターが煽ると数十名の川崎サポーターが襲い掛かり、乱闘に発展。その後に警察が出動し、複数人連行されている。

出典:大宮VS川崎、大荒れの一戦が場外にも飛び火。サポーター同士の乱闘で逮捕者も

逮捕者など一切出ていないのに、タイトルに「逮捕者も」というでまかせを書いて、嘘の情報をばら撒いた責任はどう取るのか?

まずメディアというものは、その情報が事実か否かの確認をした上で情報を発信するのが常識である。「材料を取ってくる」と書いて取材と読むわけで、その裏取りを怠るのは「エア取材」と言っていい。

先日、Yahoo!の特集で他社の「エア取材」を告発する田崎健太氏の記事が話題を呼んだ。当記事は元々、カンゼン社が発行する雑誌『フットボール批評』内で書かれたコラムが元となっている。

まるで「ミイラ取りがミイラ」

「エア取材」を告発する側に立ったカンゼン社が、「エア取材」を理由に謝罪文を出すことになるとは、何とも皮肉である。

私が大宮関係者に取材したところ、「カンゼン社のライター、ならびにフットボールチャンネル編集部からの事実確認はなかった」との回答を得た。『フットボールチャンネル』が何をソースとして「逮捕者が出た」と報じたのか、理解に苦しむ。

ちなみに『フットボールチャンネル』は昨年においても、植田路生編集長が大宮アルディージャがあたかも不正会計をしているかのような、事実に基づかない情報発信を行い、謝罪文を掲載している。

人間誰もがミスをする。それは当然のことだ。ただし、プロフェッショナルとして仕事をする人々は、そのミスを糧にして、同じ過ちを繰り返さない。

2年連続で似たような「エア取材」が原因で謝罪文を掲載しているカンゼン社および『フットボールチャンネル』は果たしてプロのメディアと呼べるのだろうか――。

他メディアに“自浄作用”を求めているカンゼン社だが、まずは自社における自浄作用をしっかり行ってほしいと切に願うばかりだ。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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