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組織の中の「物語」を探せ!? : あなたの会社にもある「大物物語」!?

中原淳立教大学 経営学部 教授

佐藤郁哉他「制度と文化」を読んだ。企業文化論、組織文化論、組織アイデンティティ論などの知見を整理した良著であった。

その中に、「組織の中で流布するストーリー」に関して、下記のようなことが書いてあった。とても興味深かったので、引用する。

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組織心理学者のジョアンヌ・マーティンは、企業組織の中で流布している様々な物語を採集・分析したうえで、それらを以下の7つのタイプに分類した。

1.ルール破り物語

2.大物物語

3.出世物語

4.クビ物語

5.転勤物語

6.上司のミスに対する対応物語

7.障害克服物語

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組織には- 人の集まるところには- 必ず「物語」がある。そして、その多くは「その組織に独自なもの」だと思われている。しかし、そうした認識は多くの場合、誤解であることが多い。組織の中で流布している物語を類型化すると、上記のようなパターンがあらわれてくる、というわけである。

ふりかえって考えてみれば、あなたの組織にも、上記のような物語がありませんか? 僕の所属組織は大学だけれども、それでも、「うーん、あるある」と思ってしまった。自分がかつていた組織、そして、今ある組織にも、これに類する一定のパターンの物語は存在する。もちろん、大学組織は企業組織とちょっと違って、たとえば「変人奇人ストーリー」とか「大発見ストーリー」とかだと思うけど(笑)。

この知見を目にした際、真っ先に僕の脳裏に浮かんだのは、ロシアの文学研究者ウラジミール=プロップである。

プロップは100編あまりのロシア魔法昔話の分析を行い,そこには「普遍的なパターン」「普遍的な物語展開のパターン」があることを明らかにした。

プロップの構造主義的な物語分析は、のちの物語研究に強い影響を与えた。ジョアンヌ・マーティンの研究は、プロップの行った昔話分析の「組織バージョン」と言えるのかもしれない。大変興味深い知見である。

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物語は、組織構成員が属する「文化」の制約を多分にうけることが容易に予想できる。

いったい日本の企業では、どのような物語が流布しているのだろうか。

そんなことを考えていたら、なんだかワクワクしてきた。「組織」と「物語」、一見、何にも関係なさそうな両者ではあるけれど、これに焦点をあてた研究が、もっとあってもよい、と思う。

人間が組織を生きるとき

組織の中には物語もまた、生きている。

あなたの組織には、どんな物語がありますか?

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この記事はNAKAHARA-LAB.NET(2007年10月23日 7年前!)再掲記事です。NAKAHARA-LAB.NETは、人材開発・人材育成に関する記事が毎日投稿される中原淳のブログです。Yahoo「個人」の方には、しばらくはNAKAHARA-LAB.NETの過去記事の中でアクセスが多かったものをのせていきます。

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立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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