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難しいことをやさしく書くこと、難しいことをより難しくすること

中原淳立教大学 経営学部 教授

昨日読んでいた本で見つけました。作家の井上ひさしさんの言葉だそうです。久しぶりにうなってしまいました。まさに我が意を得たり。

むずかしいことを やさしく

やさしいことを ふかく

ふかいことを ゆかいに

ゆかいなことを まじめに書くこと

(井上ひさし)

特に一行目に関して、自戒を込めていいますが、学者・専門家というのは、とかく「むずかしいことを より難しく」書いたりしゃべったりしがちですね。己の権威を維持するために。

もちろん、誤解を避けるために申し上げますが、正確な議論を行うために専門用語は存在しますので、学者・専門家が、専門用語を記憶すること、使用することが悪いことではありません。

でも、時に、それが「必要以上」になることがあります。

どう考えても、不必要な場面で相手を煙にまくために、「むずかしいことを より難しく」喋る事例が、たまに見受けられます。このことは、自戒をこめて申し上げます。

これにゆるやかに関連して、最近、よく思うことがあります。

少なくとも僕の研究領域に関する限り、

重要なことは「シンプル」である

そして

本当のことは「簡潔」だ!

ということです。一見難しく複雑に見えることでも、分析を続ければ、その意味するところは、実に「やさしく」かつ「シンプル」である。

むずかしいことを やさしく

やさしいことを ふかく

ふかいことを ゆかいに

ゆかいなことを まじめに書くこと

今日は、井上さんの名言の特に1行目について書きました。

2行目から4行目は、ペーペーの修行中の小生には、まだまだ想像すらできぬ域ですが、いつか、何時の日か、僕もそんな「書き手」になりたいな、と願っています。

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この記事はNAKAHARA-LAB.NET(2009年11月26日)記事に加筆・修正したものです。NAKAHARA-LAB.NETは、人材開発・人材育成に関する記事が毎日投稿される中原淳のブログです。Yahoo「個人」の方には、しばらくはNAKAHARA-LAB.NETの過去記事の中でアクセスが多かったものをのせていきます。

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立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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