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すぐに「大丈夫です!」と口にしまう人は、なぜ成長しないのか?:フィードバック拒絶の代償!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(写真:アフロ)

もうすぐ12月ですね、、、組織によっては、考課や面談、フィードバックの機会が実施される頃でしょうか。

先だって、あるところで、志ある方々と若年層の育成について対話になりました。ゆるゆるとした対話だったので、特にICレコーダを回していたわけではないのですが、もっとも印象的だった話題に、下記がありました。

「成長しない若い人」には、どんな特徴があるか?

若い人とふだん日常を過ごしている多くの関係者が、同様に口にしたのは、

「どんな指摘をしても、すぐに大丈夫ですと言ってしまう人かなぁ・・・」

でした。

おそらく言葉をかえれば、

全然大丈夫じゃないんだけど、すぐに「大丈夫です」と口にすることで、他人からのフィードバックを拒絶する人

ということになるのでしょうか(笑)。フィードバックに対して反論するのでもなく受け入れるのでもなく、拒絶する。

それも、「大丈夫です!」と口にして「本当に大丈夫」ならいいんですけど、どこからどうみても、「アンタ、大丈夫じゃなさそうだよね」というところで、フィードバックを拒絶する、というところがポイントかと思います。

そして、関係者が同様に口にしていたのは「そういう若いが最近増えている気がするなぁ」とも話していたのがとても印象的でした。もちろん「最近の若者は・・・」という論ほど怪しいものはないので、割り引いて考える必要はありますけれど(笑)。

フィードバックを正しく受ける

フィードバックを正しく行う

ことは、学習や成長にとって非常に重要なことであると思います。

このことを、某所である大学の先生に話したら、

「あー、中原君、そりゃ、ロケットと同じだね」

とおっしゃっていました。

「まっすぐ飛べるエンジンロケットは存在しないの。ロケットってのは、飛んでいるうちに傾いてくるので、そうしたら自分の傾きを検出して、ジェットの吹き出し口の傾きをかえるためのフィードバック機構がついてます。そういうフィードバックがなくては、正しく飛べないんだよ・・・」

絵にしてみれば、下記のようなものでしょうか?

ロケットとフィードバック
ロケットとフィードバック

こんなグラグラなロケット、乗るの、いやだよ、オレは(笑)

でも、なるほど、とても勉強になりますね。ありがとうございます。そうか、フィードバックがあるから、はじめて「正しく飛べる」のね。

さらに話を先にすすめて申し上げるのだとすれば、「フィードバックを正しく受けること」ができなければ、将来、自分がマネジャーになったときに「フィードバックを正しく行うこと」は難しいように思います。

「フィードバックを自分は正しく受けることができない」のに、他者に対しては、「絶妙なフィードバックをかえすことができる人」

というものに、僕は出会ったことがありません。

今日はフィードバックについて書きました。

フィードバックの受け方や、送り方は、「教科」でもなんでもないので、学校で教えてくれることではありません。でも、これほど大切なことはないのにな、とも思ってしまいます。

正しく力強く飛ぶために

そして人生は続く

(この記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に2015年8月18日に掲載された記事に一部、加筆・修正を行ったものです)

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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