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人前で話をするとき「あがらなくなる」ための3つのコツ!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(提供:アフロ)

「中原さん、講演とか研修とかセミナーなどで「舞台」にあがっても、めっちゃ"フツー"にやりますよね。全然緊張していない。あがらないコツって、なんか、あるんですか?」

つい先日、ある方から、こんな一言をいただきました。

なるほど、「あがる」ね。

なかなか難しい問題ですね。

今日は、それについて書きましょう。

まず最初に、誤解をといておきますと、僕は「全然緊張していない」のではなく、「めちゃめちゃあがっている」ということです(泣)。

それが証拠にー機会があったら、講演前・講演中にぜひ僕の背中を触って頂きたい(辞めた方がいいね、小汚いから、笑)ーのですが、「汗びっしょり」です、、、いや、気持ち悪いくらい。

僕の場合、めちゃめちゃ緊張してくると、滝のように背中に汗が流れます。

「こりゃ、華厳の滝か?」

というぐらいに汗が流れるのです(笑)。

ですので、講演終了後は、早々に「水風呂に入りたく」なります。

仕事後はいつも「すんません、おかみさん、ビール1本ね」という感じです。

あと、こんなことを知っても一銭の得にもなりませんが、講演前のトイレ付近で、緊張した面持ちの僕と遭遇する確率は、かなり高いのではないでしょうか。

なぜなら緊張しはじめると、僕の場合、

「講演中に、便意をもよおしたらどうしよう」

という「強迫観念」にかられはじめるのです。半分、ビョーキのレベルです。ですから、事前には、何度も無用に便所に行きます。実際は1ミリリットルもでないのですが・・・。

ただ、こんな風に僕は「緊張」もしますし、いつも「あがり」ますが、それでは仕事になりません。

僕も相当の「場数」を踏んでおりますので、その中で「あまり緊張していなく見えて、かつ、自信をもって話している風の演技」をすることはできるようになってきました。

そう、演題にあがった後は、「あがらないように見える演技」をしているのです。

ここに「視点の転換ポイント」があります。

要するに「あがってもいい」んです。

「あがっていない演技」ができさえすれば。

たとえ「あがって」いても、「あがっていない」ように「見えれば」よいのです。

とはいえ、「あがらない演技」をするのも、なかなか勇気がいります。だって、もともと「あがっている」のですから、そんな余裕はなかなかないわけです。

じゃあ、その「あがらない演技=あがっていないように見えること」を成功させるために、僕がいつも心がけていることは何か。

あがっていなく「見える」ためには、緊張していなく「見える」ためには、どうしているか。3つのポイントがあります。それを下記に書きましょう。

1.お客さんを「仲間」にしちゃう

ひとつめは「聞いて下さる方々と、事前に仲よくなっちゃう」ということです。

講演などでは、よく開始時刻より30分くらい前から、お客さんが入ります。僕は講師控え室があまり好きではなく(準備をしてくださっている場合は感謝です!)、会場をウロウロして、お客さんと名刺交換や雑談をします。

そうすると、なんか「お仲間」ができたような気がして、自然体に振る舞うことができる気がします。また、お客さんの知りたいことや、興味関心、様子がわかるので、その後の講演中での話し方も工夫することができます。

お客さんも、そんな様子をみて、「中原はあがっていない」ように見えるのだと思います。「講師も自然体だなぁ・・・」と。

実際は、汗びっしょり、あがりまくりなのですが・・・(笑)。

2.いつもどおりの言葉と、いつもどおりの道具

ふたつめは、舞台の上では「いつもは使わない言葉を使わない」「いつもは使わないPCや道具は使わない」ということです。

僕は講演では、極力、いつも自分が使っている言葉遣い、いつも慣れ親しんでいる僕なりのものの言い方、そうしたものを、そのまんまお届けするようにします。また、使っているPCや道具も、他人のものを借りることはしません。

いつもどおりの物事が近くにあり、それに満たされていると、僕の場合は、自然体に振る舞えるような気がします。

それがもし講演のときだけ、妙な丁寧語や敬語を使い出すと、僕は破滅できる自信があります。そんな僕を見ていれば、お客さんは、「あの講師はあがっている」と思うでしょう。

だからいつもどおり。

いつものように、今までどおり。

敢えて、それを守ります。

3.ペアトークを入れる

僕の講演を聴いて下さった方はおわかりと思いますが、僕は、たとえ一方向の講演をご依頼いただいた場合でも、60分話し続けることはありません。

おそらく15分に一度くらい、お客さんお隣同士で、少し講演内容について自分が思うことを話し合っていただく時間ーペアトークの時間ーを3分ほど設けます。

学びを深めるためには、内化(物事を頭に叩き込むこと)と外化(自分の考えをだすこと)のバランスが必要です。講演では一般的に「内化」の機会に なりますが、ときに「外化」を行っておかなければ理解が深まりません。ですので、ペアトークは講演内容の理解をますためにやっております。

が、実際は、このペアトークをしてくださっている5分間が、僕にとっては「自分を立て直す作戦タイム」です。

進行が時間通りにいっているか、捕捉しておくことはないか。会場をまわり、お客さんの様子を観察しながら、そのことを考えています。

ペアトークの時間をもうけると、自分的にもリラックスできますので、自然体に振る舞うことができるようになります。

また、ペアトークの間は、お客さんの視線や目が僕から離れます。

たとえ僕自身があがっていたとしても、「見られること」自体が少なくなるので、自分を立て直すことができます。 

いいんです、たとえ「あがっていて」も、「見られていない」んだから(笑)

駆け足になりましたが、今日は、舞台であがらないコツについて3点ほど書かせて頂きました。

上記の3点は、あくまで僕のやり方であり、どの程度一般性があるかはわかりません。

僕がお話したかったのは「あがらないコツ」でもあり、「たとえ、あがっていても、あがって見えないコツ」でもありました。いかがでしょうか。

皆さんが、どういうやり方で、ステージフライト(あがり症)を克服なさっているか、シェアできると面白いかもしれませんね。たぶん、いろんな「マイメソッド」があるんだろうなぁ。。。

そして人生はつづく

(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」の 2015年11月 6日の記事に、加筆・修正を行ったものです)

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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