ベンチャー企業の「成功」を決めちゃう「意外な要因」!?
先だって、大学院の研究会で、ベンチャー企業の成功・不成功に関する研究論文を読みました(Hormiga et al 2010)。
この論文は、130社のベンチャー企業の調査研究で、ベンチャー企業の成功 / 非成功を決めてしまう要因についての分析が報告されていました。
具体的には、
「ベンチャー企業の起業家(創業者)の知的資本は、ベンチャー企業の成功にどのような影響を与えるか」
というリサーチテーマのもと、このテーマに対して実証的な量的分析をおこなっていたということになります。ま、世の中には「例外」もたくさんあるんだろうけど、定量的に分析すると、こんなことが言えるんじゃない、ということですね。
ここで論文の中核概念となっている「知的資本」とは、
ベンチャー企業の社長本人の個人的資質、人脈、他企業との連携関係
のことですね。
分析の結果、ベンチャー企業の成功を決める要因は、
1.ベンチャー企業経営者の「固い決意」
2.ベンチャー企業が初期にどの程度の良好な評判を、「周囲」から勝ち取ることができるか?
3.ベンチャー企業の創業を支援するインフォーマルグループ(非公式の集団)が発達しているか、どうか?
などであることがわかりました。
興味深いのは、ベンチャーの成功を左右するのは、
「企業経営者のむさ苦しいほどの熱意・決意」だけではなく、彼以外の「周囲の協力や評判や支援」
を勝ち取ることができるかどうかにあるということです。
一方、
「オラ、この事業で一山あてて、金をジャボジャボ稼ぐだべ! 銀座でベコ買うだべ!」
といったような「ベンチャー企業・社長の外発的動機付け」は(?)、成功に対してマイナスに寄与することがわかりました。
要するに、ベンチャー企業においては、
「これで一山あてて、金儲けがしたい!」という動機で起業しても、成功しない確率の方が高い
ということになりますね。
これらの発見をつきあわせ「妄想」するに、要するに言えることは
ベンチャー企業は「孤独な一匹狼」では成功しない
ということになります。
ま、例外はあるんだろうけど、一般論では、そういうことになります。
一般に、ベンチャー企業というと、その創業者は「ギラギラ社長」ともうしましょうか、「一匹狼」などを想像しちゃいますけれども、その成功には、「周囲のサポートや良好な評判」が必要です。
とくに、社長の固い決意、すなわち「ココロザシ」のもと、周囲のサポートや評判をえながら、何とか成功させるものであるということになるのでしょうか。
やっぱり、周囲がついつい応援したくなっちゃう「志のある社長」ー「ココロザシ社長」が、よいのでしょうねぇ。
皆さんの周囲には「ココロザシ社長」はいらっしゃいますか?
▼
一方、研究会には実務家の方も多数いらっしゃったので、伺いましたが、ベンチャー企業の経営者の中には、「ギラギラ社長」とでも形容するにふさわしい方が、少なくない数いらっしゃるそうですね。
「ギラギラ社長」とは、
「ひと山あてて、金儲けをすることしか興味がない臭」が身体全体から滲み出ているベンチャー企業の社長で、虎視眈々といろいろなところに接近し、ギラギラとした目で、いかに、それらを「踏み台」にして自分が儲けるかを考えている社長
のことです。
いや、逢ったこともないから、知らんけど(笑)。
この研究の知見によりますと「ギラギラ社長」は、結果が芳しくないようですね。
あんまり、ギラギラしてると、引かれるよ(笑)。
▼
今日はベンチャー企業では、ギラギラ社長ではいけないかもよ、という話をしました(そんな話だったか??)。
もちろん、この研究、データも130と限られていますし、また、概念的にも議論が必要な部分や課題はあるとは思いますが、いろいろ「考えさせられる論文」でした。
興味深いですね。
やっぱり、社会的成功を保証するのは、ついつい周囲が応援したくなるような「誠実さ」なのではないでしょうか。
そして人生は続く
(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に2015年6月24日掲載されていた記事を、加筆・修正したものです)