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よいインタビューをするために知っておきたい「4つの質問」!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(写真:アフロ)

僕の専門は「企業の人材開発」です。仕事柄、僕はたくさんのインタビューをさせていただきます。人材開発の研究は大学のなかに閉じこもっていてはできません。常に、企業・組織の抱える課題を現場の方々からうかがい、それと真正面から向き合っていくことが大切です。

つい昨日も、ある企業でビジネスパーソンの方に貴重なお時間をいただき、ヒアリングをさせていただきました(心より感謝です!)。

ヒアリングやインタビューをする際、どのようにお話をふったら、なるべくリアルなお話が伺えるかについて、よく考えます。

なるべくリアルに、生々しく、そして、人の機微があふれ出るような本音をいかに引き出すか。

これが僕の最もおおきな関心のひとつです。

まだまだ修行中の身なので満足できるインタビューやヒアリングが毎回できるわけではないのですが、相手をぐっと考えさせる「問いかけ」としては、たとえば、Tomm(1988)の介入的インタビューの技法というのがあります。今日は、それをご紹介しましょう。

1.線形的質問(Lineral question)

誰が、いつ、どこで、どんな理由で、誰に対して、何をしたのかをダイレクトにきいていく質問です。5W1Hを徹底的に詳細にきいていき、当人が経験した出来事をきいていきます。

非常に基本的な質問に思えますが、実は、最も難しいものです。

働くビジネスパーソンが意外に苦手なのは、この質問だったりします。理由は2つ。

第1の理由は「皆さん、クソ忙しいので、いちいち、出来事を憶えていないこと」

第2の理由は、インタビューにもらえる時間は1時間なので、ここを掘り下げて聞くことに、なかなか時間がかけられないことです

ちなみに僕は50分で引き上げる事をいつも目標にしています。忙しいビジネスパーソンの皆さんにお時間をいただくのは、撤収時間を含めると、50分がよいのかなと思っています。

「Aさんは、いつ、どこで、何をしましたか?」

「Aさんが、行動をおこした相手は、誰ですか?」

「Aさんが、そんな行動をとった本当の理由は何ですか?」

2.循環的質問(Circular question)

物事の関連性・かかわり・つながりを問う質問です。1で得られた情報をもとに、関連・つながりをつけ、比較・吟味していく質問です。'''この質問を通して、おこった出来事を、さらに立体的に浮かび上がらせていきます。

'''

「先ほどのAさんとBさんは、どのような関係ですか?」

「先ほどのAという行動は、Bさんからみて、どのように見えますか?」

「Aという出来事とBという出来事は、どのようなつながりがありますか?」

3.戦略的質問(Strategic question)

インタビューが行き詰まったり、核心に触れそうになったときにする質問です。

敢えて「〜すべき」をもちい、挑戦的なスタンドポイントにたって、相手の明確な語りをひきだします。

「そういうことになると、Aさんは〜すべきだった、ということになりますかね」

「そういうことになると、Aさんは〜すべきじゃなかったんだと、みんなは思っているんですかね」

ただし、これは多用すると、確実に雰囲気を悪くしますので、あまり僕は用いません。が、物事が核心にふれ、それに対する相手の反応を「明確」に見たい場合には、時折用います。

4.省察的質問(Reflexive question)

仮定法による質問で、相手に振り返りを促します。

自分が通常見ている風景・慣れ親しんだ物事を、敢えて「別のコンテキスト」に導いて、相手に「考えること」を迫り、ひいては物事を変化させること、自己を変化させることにつなげようとします。

「もし仮に、あのときの自分に声をかけてあげるのだとしたら、何と声をかけてあげたいですか?」

「もし仮に、このままの状態がつづけば、Aさんはどうなるでしょうね?」

「この出来事がまた起こったのだとしたら、あなたには何がなしうるでしょうか?」

ここで紹介したインタビューの技法は、ほんの一部です。

もっとも大切な事は、こういうレパートリーをたくさんもちつつも、場数を踏み、時には、自分の行ったインタビューの成果を振り返ることです。

インタビューは「場数」です。

ちなみに、インタビュー技法をまとめたスタイナー・クヴァールによると、

インタビューとは「インター・ビュー」だということになります。

要するに「インタビューをするひとと、される人が、相互に(インター)、同じ光景(ビュー)を見ることができるかどうか」だということですね。

ともに同じ時間を過ごし、同じ光景を見ること。

インタビューによって相手の貴重なお時間をいただくのであるから、受けて頂く方にとっても、よい時間を過ごして頂けるとよいですね。

よいインタビューとは「Give your partner good time!(相手に素敵な時間を過ごしてもらうこと)」

ということになるのではないでしょうか。

なかなか難しいのですが、ぜひ、その境地をめざしたいものです。

そして人生はつづく

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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