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ビジネス書で目にした「フレームワーク」でくねくねしているオッサン注意報!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(写真:アフロ)

「ビジネスで戦略をたてるとき」などには、「フレームワーク」とよばれる「概念枠組み」が用いられます。もっとも有名なフレームワークは「SWOT」分析。その他にも、様々なフレームワークが、この世には存在します。

ただで複雑怪奇な世の中を、いかにして「単純化」して整理し、明確な戦略をたてるのか。

フレームワークという整理枠組みが、ビジネスの現場で、さまざまに提案され、消費されていく背景には、このような背景が存在します。

しかし、フレームワークというものは「諸刃のつるぎ」であることも、また事実です。

最大の問題は、

フレームワークは、フレームワーク内部で表現しうる要素に、現実を矮小化し、思考を制限してしまう

ということです。

フレームワークで表現できないものは、フレームワークで表現されることはありません。

しかし、そうした「フレームワークで表現できないもの」にこそ、本当の顧客のニーズが埋まっている場合があります。

フレームワークは、現実をある特定のフレームで切り取る技術であり、思考に制限をかける制約です。

そして、そこには抜け落ちてしまう情報が必ずあります。

フレームワークでは何を表象して、何を表象していないのか。  

賢明なわたしたちは、このことを忘れるわけにはいきません。

第二の問題は、

適用するべき現実と合致した「フレームワーク」を用いない限り、パワフルさを発揮することはできない

ということです。

仕事柄、研修などで、さまざまなビジネスパーソンにお逢いしますが、時折、

この現実を前にして、なぜ、このフレームワークを用いているかわからない状況

に出会う事があります。

ホワイトボードに空しく描かれたフレームワークの図を見ながら、僕はうなってしまいます。

ここでこのフレームワークを用いて、何をしたいのですか?

要するに、現実とはかけ離れたフレームワークを「適用」し、この場で起きていることを整理しようとするのです。

適用するべき現実や目標と、フレームワークがあっていなければ、そもそもパワーを発揮できません。

今日はフレームワークについて述べました。

この世には、

とにもかくにも、ホワイトボードの前のポジションを制し、

「妙なフレームワーク」を持ち出して、くねくねしているオッサン

が、時折見受けられるようです。

「くねくね」って、どういう意味?(笑)

うーん、なんとなく、「くねくね」してそうだから、「くねくね」

自戒をこめて申し上げますが、「妙なフレームワークで、くねくねすること」は、かっこわるいので、避けたいものです。

そして人生はつづく

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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