爆買いに早くも異変!? モノからコトへと移行する中国人の消費志向

春節期間に合わせ、都内でも中国人向けの看板が目立つようになった

2月8日は春節(中国の旧正月)の元旦に当たる。中国は2月ごろの春節、5月のゴールデンウィーク、10月の国慶節と1年に3回大型連休があり、今回も連休前からすでに大量の中国人が日本旅行にやってきている。昨年は499万人の中国人が日本を訪れたが、今年はさらにその数を600万人から700万人へと伸ばすことが予想されている。

中国人といえば「爆買い」が代名詞となった。一昨年の秋ごろからメディアで使われ始めた言葉だが、昨年の春節から一気に広まり、今や「爆買い」という言葉を知らない日本人はいないといえるほどになった。

爆買いといえば、炊飯器10個、温水洗浄便座3個、保温ボトル10個、といった「同じものを大量買い」することを中心に、とにかく「モノ」をたくさん購入することを意味する。中国人1人当たりの購買額は約28万円、昨年の消費金額は1兆5000万円と全外国人中トップであることからわかるように、とにかく昨年は「モノ」の購入がすさまじかった。

今年もまだそれは続いているが、ここ最近、爆買いの中身に少しずつ変化が起きている。私は著書「爆買い後、彼らはどこに向かうのか?」の取材中、富裕層の中国人からおもしろい体験をいろいろ聞いた。それは「爆買い」に走る人々とは程遠い、優雅な日本旅行の体験だ。訪日の初心者や団体旅行客はまだ「モノ消費」に走っているが、富裕層や個人旅行客の一部は、すでに「コト消費」へと興味・関心が移ってきているのだ。

移り変わる中国人の日本旅行の目的

「コト消費」とは何か。たとえば、医療、健康、美容、芸術鑑賞、グルメ、スポーツ、学習、農業など、モノを購入する以外に、何かを“体験”することだ。

「温泉旅館に泊って、病院でがん検診やPET-CT検査をやってもらいます。北京の空気が悪いので、肺を悪くしているのではないかと夫婦で心配だった。日本の病院のお医者さんや看護師さんはとても親切。全身をしっかり検査して診断してもらったら、安心して中国に帰れます」(北京在住、50代夫婦)

「エステのためにわざわざ来日しました。銀座の高級エステでマッサージをして、ヒアルロン注射をしてもらった。マッサージは中国でもさかんなのでよくやっていますが、日本の高級エステに入ったら、店内も豪華だし、スタッフの教育も中国では考えられないほど行き届いていて、お姫様気分を味わえる。中国の注射器を使うのはやっぱり怖い。韓国も美容大国だけど、日本のほうがもっと信頼できる」(北京在住、40代女性)

「特等席で歌舞伎を鑑賞して、お菓子づくり体験教室に参加して、星つきレストランでフランス料理を食べました。歌舞伎の切符は知り合いの在日中国人に事前に取っておいてもらった。日本にはもう何度も旅行しているので、自分の家族、親戚の分も含めて、もう家電製品や日用品は十分ある。モノはもう溢れているから、これからはモノではなく、もっと思い出づくりや、日本でなければできない体験をしたい。日本ならではの美しい風景を見たい。中国では水泳ができる人はほとんどいないけど、今度は沖縄に行って水泳を習い、いつかダイビングもしてみたいですね」(上海在住、30代女性)

中国人の旅行はもっと多様化していく

モノの消費はわかりやすい。中国人観光客を受け入れる日本の観光施設にとって対応策が取りやすいからだ。家電量販店やドラッグストアなどでは大量の中国人スタッフを配置し、春節の「爆買い」に備えている。団体旅行の場合、ショッピングの時間が制限されるので、短時間に買い物しなければならず、そのサポート役が必要だからだ。大量に在庫を取り揃えることもできるし、ビジネスとしてやりやすい。

だが、コト消費は幅が広くて種類が多く、奥が深い。スタッフを揃えればいいというわけではないし、モノ消費に比べて、言語の壁も大きい。一度に大量の人数を受け入れることも難しいし、丁寧な説明が必要だ。だが、モノをすでに十分持ち始めた富裕層や、それに近い中間層の上の人々は、上に挙げたような未経験の日本文化に興味を持っている。それは、上に挙げた分野以外にももっと広がっていくだろうし、日本人が考えもつかなかったような分野にまで拡大する可能性がある。彼らは、母国では体験できないことを欲しているのだ。つまり、やり方しだいで、モノ消費よりも、将来性があるということだ。

中国人の行動は神出鬼没で、変化が非常に激しい。中国国内にいてもそうだが、ついこの間流行っていたものが、もう廃れるということがよくある。中国人の興味やトレンドがいつ、どのように変わっていくのかを「日本人の感覚」「日本人のスピード」で見ていたら、必ず見誤るだろう。

インバウンド大国を目指すなら、来たる「爆買い後」、「爆買いの先」に向けて、そろそろ日本人も「次の一手」を準備する必要がありそうだ。