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逃した魚は大きい? ザックジャパン、2戦目のイタリアに勝てなかった痛手

中村大晃カルチョ・ライター

逃した魚は大きかったのか。19日のコンフェデレーションズカップ第2戦、日本代表はイタリア代表と打ち合いの末、3対4と敗れた。「善戦」「惜敗」と日本の奮闘をたたえる声も大きいが、2試合目のイタリアから勝利を挙げるチャンスを逃したことは、あまりにも大きな痛手だ。

戦前の評価

初戦でブラジルに完敗していたにもかかわらず、イタリアにおける日本代表の評価は悪くなかった。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、試合レポートで、日本の「秩序だったプレー」をたたえている。『スカイ』のメイン解説者で、元イタリア代表のジュゼッペ・ベルゴミ氏も、イタリアが初戦で2対1と下したメキシコより、日本は脅威になり得るとの見解を示していた。

ただ彼らが、自分たちはあくまでも格上という姿勢だったことも確かだ。チェーザレ・プランデッリ監督は試合前、日本への警戒を示したが、その主たる要因として挙げたのは、休養日数が少ないこと、そして同朋であるアルベルト・ザッケローニ監督の存在だった。日本の力ではない。

だからこそ、日本にとってはチャンスだった。日本にとって有利なデータもあった。

2戦目が苦手なイタリア

『ガゼッタ』紙は、イタリアが主要大会の2戦目で白星を挙げたのが13年ぶりだったと紹介している。準優勝に終わった2000年のEURO以降、W杯、EURO、コンフェデレーションズカップにおけるイタリアの第2戦の成績は、7試合で5分け2敗。その大半が1対1というスコアで、エジプトに敗れ、ニュージーランドと引き分けるなど、格下相手にも勝てていなかった。

短期勝負であるトーナメントのグループリーグにおいて、初戦が重要なのは言うまでもない。だが、第2戦もラウンド突破の鍵を握る重要なポイントだ。イタリアはその2試合目で、初戦の結果にかかわらず、結果を出せないことが多かった。一方で、この13年間、アジアカップとW杯、コンフェデレーションズカップにおける日本の第2戦の戦績は、10試合で7勝1分け2敗だ(敗れたのは2003年のコンフェデレーションズカップのフランス戦、2010年W杯のオランダ戦)。

だが、日本は勝てなかった。そこには、追い詰められなければ力を出せない、だが出せば強さを見せるイタリアの特徴がある。

後がなくなると強いイタリア

日本戦の試合レポートで、『ガゼッタ』紙はイタリアの悪癖を嘆いた。日本の休みが1日多かったことや、80%という高い湿度だけでは、快勝したメキシコ戦との違いを説明できないとし、モチベーションの問題だと指摘。「我々が全力を出すのは後がなくなったときで、1試合うまくいったら次の試合で気を抜いてしまうのはなぜなのか」と訴えている。

実際、日本との試合でも、イタリアが調子を取り戻したのは、2点を先行されてから、つまり追い詰められてからだった。『ガゼッタ』紙は、「そう、我々の好みどおり、後がなくなってイタリアは走り始めた」と皮肉を込めて伝えている。

しかし、それでも競り勝てるというのがイタリアの強さだ。プランデッリ監督も、ビハインドを跳ね返した精神力をたたえた。昨年のEUROで準優勝と躍進し、チームが経験を積んで成熟しつつあると実感しているのだろう。逆にそれこそ、日本に欠けていたものだ。

勝ったことがあるという経験

評価の仕方は人それぞれとはいえ、日本に勝つチャンスがあったことは確かだ。初戦で快勝したイタリアと2戦目で対決というタイミングも、日本の味方になっていた。だが、日本は勝てなかった。

日本はイタリアに勝ったことがない。来年の本大会で再びイタリアと対戦することになった場合、「一度も勝てていない相手」と戦うのと、「勝ったことがある相手」と戦うのでは、大きな違いがある。相手がイタリアでなくとも、世界の強豪を下した経験は、大国と戦うときの武器となる。たった一度の経験がどれだけチームを変貌させるかは、2008年の欧州選手権で優勝して以降のスペインを見れば分かるだろう。それまでの彼らは、よくてベスト8止まりだった。

イタリアを倒していたら、新たな一歩となっていたはずだ。日本は大舞台で成長したことを示した。だが、このチャンスを物にできなかったことは大きい。おそらく、選手たちは誰よりも分かっているだろう。彼らが悔しさをあらわにしたのは、単に惜敗だったことだけが理由ではないはずだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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