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「260円でポグバをユヴェントスに残そう!」 作家の訴えはクラブに届くか

中村大晃カルチョ・ライター

1月の移籍市場もあとわずか。各クラブのラストスパートが注目されるが、一方ですでに夏の去就が騒がれている選手もいる。イタリア王者ユヴェントスのフランス代表MFポール・ポグバだ。

移籍の噂が絶えないポグバを、ユーヴェは大金で売るべきなのか。それとも、選手が満足できるサラリーを用意して残すべきなのか。議論が激しくなる中で、一人の作家の提案が注目されている。スローガンは、「みんなで2ユーロ(約260円)を出し、ポグバをチームに残そう」だ。

■イタリアに来てから大ブレイク

昨年のワールドカップでもフランス代表の主力として活躍したポグバは、トップチームデビューを飾ったマンチェスター・ユナイテッドと契約を延長せず、2012年にユーヴェに加入した。

1年目こそ2回の練習遅刻でアントニオ・コンテ監督(当時)の怒りを買い、チームから外されたこともあったポグバだが、この「ムチ」が功を奏したのかもしれない。以降は謙虚な姿勢で右肩上がりの成長を遂げる。今ではユーヴェとフランス代表に欠かせない中盤の大黒柱だ。

■欧州各国から誘い

クラック(超一流選手)が少なくなったセリエAで異彩を放つポグバには、レアル・マドリーやバイエルン・ミュンヘン、マンチェスター勢にパリ・サンジェルマンと、名だたるメガクラブがこぞって熱い視線を送っている。

不況にあるイタリアのクラブには、これらのメガクラブに匹敵するサラリーを支払うことができない。そしてプロである選手は、自分をより高く評価するクラブに向かうものだ。それだけに、ミーノ・ライオラ代理人をはじめ、ユーヴェがポグバを引きとめるのは難しいとの見方は少なくない。

■メッシやクリロナ以上の価値?

飛躍的な成長を遂げるポグバだけに、市場価値もうなぎのぼり。ユーヴェのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、その金額は1億ユーロ(約130億円)とほのめかした。ライオラ代理人によると、あのリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドを上回ってもおかしくないお値段になるそうだ。

それだけに、ユーヴェがポグバを売り、複数のトッププレーヤーを獲得すべきという意見もある。例えば、元ユーヴェ監督のマルチェッロ・リッピ氏だ。同氏は、かつてジネディーヌ・ジダンを売却し、ジャンルイジ・ブッフォン、パヴェル・ネドヴェド、リリアン・テュラムを獲得した例を挙げている。

■作家の訴えはクラブに届くのか

だが、作家のサンドロ・ヴェロネージ氏の考えは違うようだ。同氏は『ガゼッタ・デッロ・スポルト』を通じてユヴェントスに手紙を書いた。その中で、サポーターが2ユーロずつ募金を集め、そのうちの1ユーロ(約130円)をポグバのサラリーにあてようと呼びかけたのである。

ヴェロネージ氏は、リッピ氏の「売却して複数選手を獲得」戦略がヒットする保証はなく、より確実にさらなる成長が見込まれるポグバを残留させるべきと主張。イタリア随一のサポーター数を誇るユーヴェだけに、2ユーロずつでも集めれば大金となり、ポグバのサラリーを用意できると訴えた。なお、もう2ユーロのうちのもう1ユーロは、クラブ主導の慈善事業などへの寄付にあてるという。

ヴェロネージ氏の提案には、ユーヴェファンの政治家たちも賛否両論、それぞれの意見を述べるなど、すでに盛り上がっていたポグバ去就をめぐる議論をさらにヒートアップさせている。

ユヴェントスがヴェロネージ氏の提案に乗り、ファンに募金を呼びかけることは現実的でないだろう。だが、それだけポグバ残留を望む熱烈な声があるというのも事実。現在のセリエAで最大のタレントとも言われるポグバをどうするのか、ユーヴェの決断が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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