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電撃辞任説が浮上のインテル監督、中国オーナーに抱く5つの不満

中村大晃カルチョ・ライター
退任説が浮上したマンチーニ監督(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

ミランの中国資本への身売りが騒がれていた6月初旬、ライバルのインテルは一足先にチャイナマネーへのクラブ売却を決めた。それから約1カ月。新オーナーとロベルト・マンチーニ監督の関係が取りざたされている。電撃辞任の可能性まで報じられたほどだ。何が起きているのだろうか。

「補強に関する基準となる人物が誰か分からない」。先日、マイケル・ボーリングブロークCEOと会議をしたうえで、マンチーニ監督はこう述べた。クラブとの関係が、かつてのマッシモ・モラッティ元会長とのそれのようではなくなっていることがうかがえる。

イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は16日、マンチーニ監督とクラブの見解の相違を5つのポイントにわたって報じた。以下がその5点だ。

1. 補強戦略

ユヴェントスとの差をすぐに縮めるために、マンチーニ監督はヤヤ・トゥーレやアントニオ・カンドレーヴァ、パブロ・サバレタといった経験豊富なベテランを希望。補強活動への関与も望んでいた。だが、クラブはジョアン・マリオやガブリエウ・ジェズスといった、いずれにしてもコストがかかり、実現が簡単ではない若手の獲得を目指すことにした。

2. 契約延長

自分を中心とする将来の計画があるならば、マンチーニ監督は契約最終年を迎えることを問題としないだろうが、それをクラブから感知できていない。クラブのコンセプトは、「まずピッチでの結果」だ。また、ディエゴ・シメオネ、レオナルド、(おそらく)マルセロ・ビエルサといった指揮官たちとコンタクトを取っている。

3. アシスタントコーチ

ジュリオ・ヌチャーリが去り、マンチーニ監督は信頼できる右腕を要望。昨季アレッサンドリアを率いた元チームメートのアンジェロ・グレグッチを選んだ。だがクラブは、10月から11月にライセンスを取得するシウビーニョにも給料を払っていることもあり、テクニカルスタッフはそろっているとして急がなかった。ただし、この件は近く解決する見込み。

4. 内部でのコミュニケーション

マンチーニ監督はクラブ売却や補強について、エリック・トヒル会長や蘇寧グループが状況を知らせることを望んでいた。今はトヒル会長と話せるが、「財布を持たない会長」だ。それでも、蘇寧グループは同会長を全面的に信頼しており、指揮官との接点として託している。

5. シーズンの目標

現在の戦力、さらにはファイナンシャルフェアプレーの影響で一部選手の売却を迫られた場合、マンチーニ監督はインテルがチャンピオンズリーグ出場に値するチームではないと考えており、サポーターを勘違いさせないためにそれを明確に伝えるべきとの考えだ。だが、蘇寧の張近東会長やトヒル会長は3位以内を争えると確信し、チャンピオンズリーグ復帰を「至上命令」としている。

イタリアメディアは、マンチーニ監督が退任した場合の後任人事についてもすでに報じている。インテルは16日、アメリカツアーに向けて出発。このツアー中に、マンチーニ監督はトヒル会長や張近東氏との会議に臨むとみられるが、クラブとの冷えた関係は修復されるのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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