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「ハラキリ」の声も…マンチーニ退任報道のインテル、開幕直前の監督交代は正解なのか

中村大晃カルチョ・ライター
インテル監督退任と報じられるマンチーニ氏(写真:ロイター/アフロ)

イタリア各メディアは8月7日、インテルがロベルト・マンチーニ監督との決別を決めたと報じた。8日ないし9日にも退任が正式発表されると言われている。開幕まで2週間を切ったこのタイミングでの監督交代には、疑問の声もあるようだ。

マンチーニ監督をめぐっては、以前から不穏な空気が漂っていた。オーナーの蘇寧グループやエリック・トヒル会長、マイケル・ボーリングブロークCEOとの確執が報じられ、電撃辞任が騒がれたのも記憶に新しい。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、最終的には蘇寧グループが事実上の解任を決意したようだ。同紙は、そこに至るまでの確執のポイントとして以下の4つを挙げた。

◆契約

蘇寧グループは2017年までの契約を2019年まで延長すると打診したが、チャンピオンズリーグ出場などの条件つきであることに指揮官が納得せず。さらに、トヒル会長は監督交代を主張。トッテナムとの親善試合で1-6と大敗したことも後押しとなり、蘇寧グループも踏み切った。

◆補強権限

マンチーニ監督は補強への関与を望んでいたが、蘇寧グループが提示した新契約案には含まれず。これが関係破たんに向かうさらなる一歩となった。

◆決定権の不透明さ

トヒル会長とボーリングブロークCEOは、ファイナンシャルフェアプレーを理由に主力放出をやむなしとしていた。だが、蘇寧グループはビッグネーム売却を考えていない。これでは、誰に決定権があるのかが分からない会社のようだ。

◆旧体制への委任

マンチーニ監督は蘇寧グループに、新オーナーの意向を示す人物の入閣が重要と主張していた。だが、権限は依然として旧体制に委任されている。

また、マンチーニ監督がマンチェスター・シティ時代にカルロス・テベスの処遇をめぐって衝突したキア・ジョオラビシアン代理人が、蘇寧グループと深い関係にあることも問題の一つと言われる。

『ガゼッタ』によれば、インテルは2週間前に後任候補のフランク・デ・ブール監督にアプローチ。そして6日、ピエロ・アウジリオSDがボーリングブロークCEOとともにロンドンで再びデ・ブール監督に接触したという。マンチーニ監督はアウジリオSDからではなく、違う形でこのことを知り、もはやクラブ内に味方がいないと悟ったそうだ。

また、クラブは一部の主力選手たちに指揮官について調査し、国内キャンプとアメリカツアーのフィジカル・戦術トレーニングにインテンシティーが欠けていたとの証言を得たとのこと。それらも監督交代に向けて蘇寧グループを後押したとみられる。

だが、開幕直前での監督交代には、やはり懸念の声が上がっている。アンドレア・ラマゾッティ記者は『コッリエレ・デッロ・スポルト』のコラムで、インテルにとってリスキーな選択だとし、「マンチーニもインテルもこの一件で勝者ではない」と締めくくった。

また、ルイジ・ガルランド記者は『ガゼッタ』のコラムで、マンチーニ監督が補強への発言権を求めたのは当然と主張。デ・ブール監督についても、トップチームの指揮官になってわずか5年、それもトップリーグではないオランダでの経験しかないと指摘している。

ガルランド記者は「インテルはモウリーニョの3冠を忘れ、勝つことを再び教えてくれた指揮官に、彼のほかにはアンチェロッティしかなし得えていないイタリアとイングランドでの優勝を実現したイタリア人監督に別れを告げる」と、マンチーニ監督の退任を惜しみつつ、最後にこう記した。

「今のインテルはリーグ2位に値するチームだ。だが、2年間の仕事を捨て、開幕までわずかというのに、最初から再出発するのである。中国語で『ハラキリ』はなんと言うのだろうか?」

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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