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イグアインを失ってなお輝くナポリ 後継者も活躍し、「過去10年で最も美しいチーム」?

中村大晃カルチョ・ライター
早くもナポリファンのハートをつかみつつあるミリク(写真:ロイター/アフロ)

66年ぶりにリーグ記録を更新した絶対的エースを失えば、影響は計り知れない。だが、ゴンサロ・イグアインをユヴェントスに引き抜かれたナポリは、今季も好調を保っている。キャプテンのマレク・ハムシクは、過去最高のチームと感じているようだ。そしてそれに同調する声も上がっている。

100億円を超える大金を手にしたとはいえ、昨季のセリエAで36ゴールと驚異的な得点力を発揮したイグアインの離脱は、ナポリとそのファンに小さくない衝撃を与えた。だが、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長が代役に獲得したアルカディウシュ・ミリクは、早くもナポリサポーターにイグアインの存在を忘れさせつつある。

ナポリは13日のチャンピオンズリーグ(CL)初戦で、ディナモ・キエフに敵地で2-1と勝利した。2ゴールを挙げて勝ち点3をもたらしたのが、ポーランド代表のミリクだ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のルカ・カラマイ記者は「まるでイグアインだ。天才的で、冷徹で、決定的。ゴールのアーティスト」と絶賛。「ミリクはイグアインの後継者」と断じた。

実際、ミリクはデビューからの4試合の数字でイグアインを上回っている。『コッリエレ・デッロ・スポルト』によると、ミリクはリーグ戦3試合とCLの1試合で合計276分間プレーし、4得点。69分あたり1得点という数字だ。イグアインもリーグ3試合とCLの1試合で計342分間プレーし、3得点。114分あたり1得点にとどまる。

ミリクが4得点のうち3得点をヘディングで決めた点も注目される。『ガゼッタ』によると、今季のナポリは11得点のうち36%にあたる4得点を頭で決めているのだ。昨季は合計で106得点挙げているが、頭で決めたのは7%の8得点。イグアインにもなかった空中戦での強さが、今季のナポリには加わったのである。

基本システムは4-3-3で変わっていない。両翼を務めるのも、ホセ・マリア・カジェホンにドリース・メルテンスと以前からの主力だ。だが『ガゼッタ』は、両選手が合計6得点を挙げているのは、ミリク加入やマウリツィオ・サッリ監督の指導の恩恵でもあると分析する。

そのサッリ監督の戦術にほれ込んでいるのが、セリエAの現役外国人選手としては最長となる同一クラブでの10シーズン目を迎えたキャプテンのハムシクだ。ディナモ・キエフ戦後、主将は現在のチームが「過去10年で最も美しいナポリ」だと称賛した。

かつてナポリを率いたエディ・レヤ元監督と、ピエルパオロ・マリーノ元ディレクターも、ハムシクの主張にうなずいている。

ナポリをセリエA昇格に導いたレヤは、「1試合見れば、仕事ぶりが分かる。組織的で、スペクタクルなサッカーを楽しんでいる。本当にサッリは優秀だ」と指揮官を絶賛。コンセプトとしては、あのバルセロナに似たものがあり、守備に関してはより魅力的だとまで述べた。

マリーノも「まだ始まったところだから、最も魅力的かは分からない」としつつ、「マレクに賛同できると思う。以前も美しさはあったが、今は継続性もあり、拍手に値する」と賛辞を寄せている。

ハムシクが加入してからの9年、ナポリはセリエAで8位、12位、6位、3位、5位、2位、3位、5位、2位という成績だった。「最も美しいナポリ」は、27年ぶりに1位の座を手にすることができるだろうか。ライバルは、史上初の6連覇を目指す王者ユヴェントスだが…。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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