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「夏は7月まで、冬は1月から11月に」 アッレグリの補強期間変更案にカルチョ界が賛同

中村大晃カルチョ・ライター
ユヴェントスを率いるアッレグリ監督が補強期間の変更を提案(写真:ロイター/アフロ)

ユヴェントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督が、14日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』のインタビューで興味深い提案をし、イタリアサッカー界で議論の的となっている。夏の補強期間を前倒しし、7月15日までに終わらせるという案だ。冬のマーケットも1月から11月に変更すべきという。

『コッリエレ』紙が報じたワルテル・ヴェルトローニ元ローマ市長によるインタビューで、アッレグリ監督は次のように述べている。

「マーケットがこれほど長く続き、リーグ開幕以降に終わるのは、間違えだと思う。60日も続くべきではない。7月15日に終えるべきだ。そうすれば、キャンプやプレシーズンで選手たちが落ち着くことができ、監督はそのときにいる選手たちでチームづくりを進められる。マーケット最終日に10選手もの出入りに対応しなければいけない監督たちもいるんだ。これはイタリアサッカーの計画性や技術面の損害となる。その結果は欧州カップ戦予選にも表れている。監督に即興を求めることはできないし、選手たちをずっと不安定なままにすべきではない」

「1月のマーケットもバカげている。2月に選手が加入しても、プレーの枠組みを吸収させる時間がない。シーズン途中のマーケットは、11月に移すべきだ。技術的に安定させ、選手たちを落ち着かせられる。マーケットが続く中で価値を高めるために選手を起用しろという、理解はできるがほめられるものではない代理人たちのプレッシャーからみんな解放させられる」

このアッレグリ監督の提案は、現場で戦う指揮官たちやディレクターから賛同を得た。『コッリエレ』紙は15日、満場一致でライバルたちもアッレグリ監督のアイディアに賛成したことを報じている。

例えば、ユーヴェと上位を争うクラブの首脳陣も同意見だ。

ナポリのマウリツィオ・サッリ監督は、アッレグリ監督のアイディアが「すべての指揮官が思っていること」と訴える。アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は、7月中旬は難しいものの、7月いっぱいで補強終了にすべきと同調した。

ローマのルチアーノ・スパレッティ監督も「アッレグリは賢い提案をした」と称賛。前シーズンの終了後すぐにマーケットを開き、終了を早めて新シーズンに備えられるようにすべきだと述べている。

インテルのフランク・デ・ブール監督も「興味深いアイディア」で「監督にとってアドバンテージ」と賛同する。ただ、ピエロ・アウジリオSDは「前倒しするのが正しい」と賛成しつつ、「変えるならイタリアだけでなく、欧州レベルでの変更が必要」と指摘した。「そうしないと、ほかのクラブが我々の選手を獲得できるのに、我々が買うことはできないという状況になってしまう」

ビッグクラブだけではない。そのほかにも、ラツィオのシモーネ・インザーギ監督とイグリ・ターレSD、カリアリのマッシモ・ラステッリ監督、エンポリのジョヴァンニ・マルトゥシエッロ監督やマルチェッロ・カルリGM、アタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督、クロトーネのダヴィデ・ニコラ監督、トリノのジャンルカ・ペトラーキSDなど、アッレグリ案を支持する声は絶えない。

代理人サイドの意見としては、クラウディオ・パスクアリン氏が「2年前から言っているが聞いてもらえなかった」と賛成の意を表している。

ただ、「前倒しすべき」と一致する夏のマーケットと異なり、冬のマーケットについては意見が分かれているようだ。

スパレッティ監督は「私やアッレグリが現役のころはそうだった」と11月前倒し案に賛同。だが、ターレSDは、「1月31日に獲得したら、選手が馴染む時間が少ないのは事実だが、それはレアなケース」と主張し、前倒ししても「何も変わらないだろう」と述べた。ペスカーラのマッシモ・オッド監督も「11月は早すぎる」と反対している。

必ずしも11月に前倒しする必要はないが、期間を短縮すべきとの声もある。デ・ラウレンティス会長は「11月だろうが1月だろうが、試合がないときに、できれば15日間にすべき」と提案。ボローニャのロベルト・ドナドーニ監督も「1月のままだとしても10日間に減らしてほしい」と訴える。同クラブのリッカルド・ビゴンSDも「冬は2週間に」という立場だ。パレルモのダニエレ・ファッジャーノSDは「12月10日から30日まで」と提案した。

サッスオーロのジョヴァンニ・カルネヴァーリCEOの提案も面白い。冬は試合の日程そのものを変更すべきというのだ。「他国のようにクリスマス期間中に試合をすべき。我々の製品はショーだからだ。もちろん、休養期間は1月末までに延長する。その間にマーケットをすればいい」

いずれにしても、アッレグリ案が簡単に実現するとは考えにくい。疑問や懸念も少なくないからだ。例えば、夏の補強終了後に重傷者が出た場合、穴を埋めるために選手を獲得することができないのは痛手となる。前シーズン終了後すぐにマーケットを始めることで、シーズン終盤に去就問題に悩まされるようになる恐れもあるだろう。

ビッグクラブに関しては、夏の補強でチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ予選の結果を考慮できないのも、経営の観点からはマイナスポイントだ。アウジリオSDが指摘する他国との兼ね合いもあるだろう。他国も巻き込んでの変更を目指すのであれば、実現への道はさらに険しくなる。実際、ウディネーゼのネレオ・ボナートSDは「賛成だが、現実的ではないと思う」と述べた。

だが、サッカーの主役は選手たちであり、その選手たちをマネジメントとして質の高い“ショー”を見せようとしている監督たちだ。その彼らが同じ意見なのであれば、検討する価値があるのではないだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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