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開幕前の予想を裏切って好調の4位ラツィオ、総額1億ユーロ切りはセリエ最強のコスパ?

中村大晃カルチョ・ライター
(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

攻撃ではリーグ3位タイの22得点。守備ではリーグ4位タイの12失点。11試合を終えて勝ち点21の4位。ラツィオが開幕前の予想を裏切って好調だ。しかも、大金を投じることなくつくり上げたチームが躍進している。

◆開幕前は不安要素も満載だったが…

7月下旬、マルセロ・ビエルサがラツィオ監督を退任したとのニュースは世界中で話題となった。正式な就任発表からわずか2日後の出来事だったからだ。ラツィオは急きょ、サレルニターナ監督就任が内定していたシモーネ・インザーギ監督を呼び戻した。

昨季、ステファノ・ピオリが解任されてからラツィオで指揮を執ったインザーギ監督だが、これが初のトップチームでの采配だった。経験が豊富とは言えない青年監督にフルシーズンを任せることになったラツィオは、さらにミロスラフ・クローゼやアントニオ・カンドレーヴァといった主力が退団。主力の一人であるケイタ・バルデも、契約延長をめぐってクラブと衝突していた。当然、期待値は下がる。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、開幕前の順位予想でラツィオを9位としていた。

ところが、開幕戦で4-3とアタランタとの乱戦を制したラツィオは、続くユヴェントス戦や第5節ミラン戦で敗れたものの、以降の6試合で4勝2分けと負けなし。不振のインテルや昨季2位のナポリを上回り、4位につけている。得失点差はユーヴェ、ローマに続くリーグ3位だ。

チームをけん引する一人が、現在5試合連続得点中の新戦力チーロ・インモービレだ。ボルシア・ドルトムントやセビージャで苦しみ、昨季途中にイタリアへ戻ってきた“出戻り”組だが、今季は11試合で9ゴールをマーク。“内弁慶”と揶揄する声もあるが、エディン・ジェコに1ゴール差の得点ランク2位は見事というほかない。

◆エースを筆頭に“お買い得”な選手ばかり

そのインモービレの移籍金は、ボーナス込みで900万ユーロ(約10億3000万円)と言われる。この夏、ユヴェントスがナポリから100億円超で引き抜いたゴンサロ・イグアインが7得点であることを考えれば、インモービレの獲得は大ヒットだったと言えるだろう。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』の1日付記事によると、“お買い得”だったのはインモービレだけではなく、ラツィオというチーム全体だったようだ。同紙の試算では、ラツィオが今季のメンバーをそろえるのに投じたのは総額で9970万ユーロ(約114億6000万円)という。

◆ビッグクラブと比べると…

いわゆるビッグクラブの投資額を考えると、ラツィオの功績が際立つ。ユーヴェは総額3億8338万ユーロ(約440億7000万円)と、ラツィオの4倍近い数字を投じた。2億5869万ユーロ(約297億4000万円)を費やしたインテルにいたっては、12位と不振を極めている。

ユーヴェの対抗馬となるナポリとローマも、前者が2億588万ユーロ(約236億7000万円)、後者が1億8640万ユーロ(約214億3000万円)を使った。ユース上がりの若手の活躍で脚光を浴びる3位ミランですら、1億4795万ユーロ(約170億1000万円)を費やした。

現メンバーのうち、ラツィオが獲得に1000万ユーロ以上を投じたのは、ドゥシャン・バスタ(1050万ユーロ、約12億1000万円)のみ。ステファン・デ・フライやフェリペ・アンデルソンをブレイク前に確保し、ベルギーでプレーしていたルーカス・ビリアを手に入れるなど、イグリ・ターレSDの手腕が光る。ダニーロ・カタルディやケイタらユース出身選手たちが主力の一角なのも大きい。

シーズンはまだ3分の1も終わっていない。今後、ラツィオが難局を迎える可能性は十分にあるだろう。だが、クラブを愛するインザーギ監督のもとで躍動する若きチームへの期待値は、今や開幕前のそれをはるかに上回っている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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