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アタランタは「イタリアのレスター」になれるのか? ユヴェントス戦が試金石に

中村大晃カルチョ・ライター
躍進するアタランタを今季から率いるガスペリーニ監督(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

6連勝中で9試合8勝1分けのリーグ4位タイ。欧州のビッグクラブの話ではない。イタリアのプロヴィンチャ(地方の中小クラブ)、アタランタの成績だ。彼らは3日、ユヴェントスと対戦する。彼らは本当に「イタリアのレスター」となれるのか。王者との大一番は、真価を問われる試金石となる。

新たにジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が就任したアタランタは、開幕直後こそ5戦4敗と苦しい船出だった。だが、第6節クロトーネから連勝街道を突っ走る。ナポリ、インテル、ローマといった強豪たちも次々と撃破。9月末からの2カ月で欧州主要リーグのどのクラブよりも多くのポイントを稼ぐと、驚異の快進撃に「イタリアのレスター」との呼び名も生まれた。

原動力の一つは、若手の存在だ。もともと育成に定評のあるクラブだが、アンドレア・コンティ、マッティア・カルダーラ、ロベルト・ガリアルディーニの「1994年生まれ組」がブレイク。21歳アンドレア・ペターニャらも頭角を現した。イタリア代表のジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督は、先日の強化合宿にアタランタから7選手を招集している。

イタリア人ではないが、特に絶賛されているのが、ヤヤ・トゥーレとも比較されるコートジボワール代表の19歳フランク・ケシーだ。チームの得点王でもある彼には、すでにユヴェントスなどが触手を伸ばしている。来夏のマーケットで人気銘柄となること間違いなしの逸材だ。

若き力の勢いはすさまじい。11月30日のコッパ・イタリア4回戦でも、アタランタはホームでペスカーラを3-0と一蹴。一部の主力を休ませたにもかかわらず、公式戦7連勝を達成した。

アタランタにとって追い風となるのが、ユヴェントスの状態だ。チャンピオンズリーグで決勝トーナメント進出を決め、6連覇を目指すセリエAでも首位に立っているが、大金を投じてゴンサロ・イグアインやミラレム・ピアニッチを獲得し、欧州制覇を目標に掲げただけに、内容と結果が期待を下回る現状に周囲からは批判が浴びせられている。

前節ジェノア戦では開始早々のミスを皮切りに、29分間で3失点。敵地だったとはいえ、らしくない完敗を喫した。おまけに、レオナルド・ボヌッチとダニエウ・アウベスが負傷。アンドレア・バルザーリに続く長期離脱となり、守備陣は多くのレギュラーを欠いている。中盤は現在の弱点とも言われているほどだ。

前線にも不安が残る。7得点のイグアインも、14試合中6試合で枠内シュートを放てていない。相棒のパウロ・ディバラが離脱した影響をモロに受けている。マリオ・マンジュキッチとのコンビネーション不足に加え、ディバラ不在でイグアインが攻撃を組み立てようとポジションを下げることが多いからだ。そしてそのディバラは、アタランタ戦で復帰できるかどうか微妙な状態にある。

絶好調のアタランタと、低調なユヴェントス。番狂わせが起きる条件はそろっている。ガリアルディーニの出場停止や、アタランタがアウェーなのは事実だが、敵地で王者相手に勝ち点をもぎ取ることができれば、彼らはさらに自信を深めるはずだ。レスターのように優勝とまでいかずとも、欧州へのチケットを手に入れられるかもしれない。実際、周囲からは期待するコメントが増えつつある。

だが、レスターで奇跡を成し遂げたクラウディオ・ラニエリ監督は先日、こうコメントしている。

「アタランタがレスターみたい? 早すぎるよ。リーグ戦は本当に長いんだ…」

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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