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「8.6秒バズーカー」、“ラッスンゴレライ”は3軍ネタだった!

中西正男芸能記者
“ラッスンゴレライ”で大ブレイク中の「8.6秒バズーカー」

“ラッスンゴレライ”で大ブレイク中のお笑いコンビ「8.6秒バズーカー」。3月23日には吉本興業の笑いの殿堂・なんばグランド花月で単独イベント「ラッスンゴレライ」を開催します。超スピード出世と言われたお笑いコンビ「キングコング」でもデビューから2年6ヵ月かかった偉業をわずか11ヵ月で達成。まさに、異例づくめの快進撃を生んだ“ラッスンゴレライ”ですが、実は、どうにかこうにか引っ張り出してきた“3軍ネタ”だったそうです。

田中シングル(以下、田中)「今はおかげさまで、本当に忙しいです。1週間のうち6日は大阪と東京を行き来してます。東京では主にテレビのお仕事をさせてもらい、大阪は大阪で週4、5回は舞台に出してもらっているので、どうしても行って帰ってになるんです」

はまやねん(以下、はま)「今は移動時間イコール睡眠時間という感じですね。新幹線がベッドみたいになってます(笑)。ありがたいお話なんですけど、多い時は1日10本くらいお仕事をさせてもらってます」

ブレイクの実感なし

田中「だから、実は、今が一番お金的にはしんどくて…。本当に、本当に、お金がないんです。ありがたい話、今は忙しくさせてもらってますんで、当然、まったくアルバイトができない。ギャラというのは2~3ヵ月遅れて振り込まれるんですけど、僕らがお仕事をもらえるようになったのが昨年12月の下旬くらいから。そこまではアルバイトをしてて、ま、ある意味、安定した収入があったんです。ただ、今はそこが完全に断たれている。でも、まだギャラは入ってきていない。10月とか11月にちょこっとさせてもらっていた芸人のギャラが入ってくるだけなので、アルバイトしていた時の4分の1くらいの収入になってるんです…。今月末のギャラからは今の仕事量が反映されるとは思うんですけど、そこまで何とかたどり着かないと…と必死です(笑)」

はま「僕らはサングラスと衣装のイメージが強いからか、街を歩いていても『あっ!!』と気づかれることがないので、(ブレイクした)実感は本当にないですね(笑)。“ラッスンゴレライ”だけは有名になったかもしれませんけど『8.6秒バズーカー』はそこまで有名になってない。実感のないまま、今は目の前にあるものを乗り越えるだけで精いっぱいの毎日です」

最初から“一発屋狙い”

田中「そもそも、芸人を始める時に、いわば“一発屋狙い”ではあったんです。もともと、僕らは中学の同級生でして、大学の時に成人式で再会してから頻繁に会うようになったんです。互いに大学を卒業するとなった時、僕はいくつか内定をいただいてたんですけど、相方が全然決まってなくて、ま、都合よくというか『夢を追っかけようぜ!!』みたいな話になりまして。だから、とにかく1年やってみようと。そこで結果を出す。ということは“一発屋”的に短期間で名前を知ってもらわないといけない。そこに方向を定めて一生懸命やりきって、1年で無理やったらキッパリあきらめようと」

はま「そうするためにはどうしたらいいのか。“そのためのネタ”を考えました」

田中「だから、キャッチーなリズムネタというのは最初から頭にありました。ただ“ラッスンゴレライ”に関しては、僕がふと思いついて、ただただおもしろいから口ずさんでいたくらいの感覚で『これは、お客さんには伝わらんやろうな…』と思ってたんです。全く人前ではやらなかった。それが、デビューから半年くらい経った頃、ネタのストックも尽きてきたところで、本当にお出しするネタがなくなってきて、最後の手段として、ライブで1回やらせてもらったんです。そしたら、そのライブで1位を獲得した。『エッ、これって、おもしろいと思ってもらえるの…?』と驚いたのが最初の感覚でした」

はま「こちらが思っていたのと全然違うウケ方やったんで『まさか、こんなことがあるなんて…』という感覚でしたね」

1軍どころか…

田中「細かいことを言いますと“ラッスンゴレライ”をやるまでは、リズムネタと言っても、普通のコントの中にちょっとリズムネタも入ってるみたいなことをやってたんです。ただ“ラッスンゴレライ”はネタが始まったら、最後の最後までずっと歌いっぱなし。となると、お客さんの反応を見てネタのテイストを変えるとか、間を変えるといったことができない。1曲の歌みたいなものなので、いったんスタートしたら最後まで決まったトーンでやり続けるしかない。1回お客さんが離れちゃうと離れっぱなし。実はやりにくいネタなんです。だから、ストックの1本として置いてあるという意識も当初はなくて、ネタとしたら、1軍どころか、3軍みたいなネタやったんです。…ホンマに何があるか分からんと思います」

はま「ただ、まだ芸歴が1年もないんで、自分らのネタだけやる番組はまだどうにかなるんですけど、たくさんの芸人さんに混じってトークをするようなところは本当に戸惑います…。テレビに出してもらい始めた昨年末、関西テレビ「緊急生放送!(秘)個人情報流出!よしもとランキング」という番組に出演したんです。西川きよし師匠、東野幸治さん、藤井隆さんら60人の芸人が出る番組やったんですけど、僕ら以外で一番若手が『天竺鼠』さん。その間でも10年以上、芸歴の差があるんです。だから、誰とも一切関係性ができてない中(笑)、番組の打ち合わせでスタッフさんから『どなたかの暴露ネタって、ありますかね?』と尋ねられたんですけど、一切ないわけです(笑)。『すみません、テレビで見ていた感想とかでもいいんですかね…』という世界です…。これはメッチャ困りましたね」

向かって左が田中シングル、右がはまやねん
向かって左が田中シングル、右がはまやねん

タイミングが難しい

田中「ネタ自体でも“ラッスンゴレライ”の次を、常に考えてます。ありがたいことに今もしっかりと劇場に出してもらっているので、そこで日々“次”の準備をしています。ただ、タイミングが難しい。いつ出すのが、“ラッスンゴレライ”からの切り替えが一番うまくいくのか。ネタ自体ももちろんですけど、その時期が重要だなと」

はま「やっぱり、今は“ラッスンゴレライ”を求めてもらってますし、それを新たなネタで埋もれさせるのがどうなのか。かといって、コンビには旬があるのも事実。難しいです…」

田中「当然、いろいろ考えないといけないですもんね。僕、デビューして一人暮らしを始めてから、趣味で観葉植物を部屋に置くようになったんです。何とも言えない癒しを感じまして。最初は部屋にちょこっと植物があるくらいやったんですけど、よう考えたら、今、部屋が観葉植物だらけになってます(笑)」

■8.6秒バズーカー(はってんろくびょうばずーか)

1991年3月10日生まれのはまやねんと、91年2月26日生まれの田中シングルのコンビ。ともに大阪府吹田市出身で中学時代の同級生。大阪NSCの36期生で、2014年4月にデビューを果たす。コンビ名は、はまやねんの中学時代の50m走のタイムと、インパクトのあるバズーカーという言葉を組み合わせたもの。“ラッスンゴレライ”のフレーズが昨年11月ごろから動画サイトで話題になり、一躍ブレイク。DVD「ラッスンゴレライ」(3月18日発売)に続き、大阪・なんばグランド花月で単独ライブ「ラッスンゴレライ」(3月23日)も開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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