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明らかに4年前よりも退化! キリンカップで見えた日本代表の厳しい現状

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

依然、厳しい状況にあるハリルジャパン

9月にスタートするW杯アジア最終予選前に行われる最後のインターナショナルAマッチ。今回のキリンカップは、そういう意味で、日本代表の現在地を確認するための貴重かつ最後の機会だった。

しかも、相手の問題で大勝したブルガリア戦は論外としても、7日に行われたボスニア・ヘルツェゴビナ戦は、相手が高いモチベーションで戦ってくれたこともあり、試合は真剣勝負さながらのハイテンション。ハリルホジッチが監督に就任してから、最もクオリティの高い相手との試合となった。1-2で敗れたとはいえ、スタンドを埋めたファンにとっても十分に見応えのある内容だったに違いない。

とはいえ、あくまでもボスニア・ヘルツェゴビナは主力不在で、遠い日本に大遠征してきた若手主体のチーム。さらに初戦のデンマーク戦で退場処分となったブラニェシュに加えてシャルケのコラシナツもメンバーから外れ、日本戦ではわずか8人のサブで戦ったという事情もあった。

たとえ本田と香川が欠場していたとしても、この試合における日本の出来を評価する中で、そこは注釈をつけておく必要があるだろう。

では、勝敗は別として、アジア最終予選に向けた準備状況はいかなるものなのか。そして、ロシアW杯本大会に出場した場合、このまま行けばどのような成績が予想されるのか。

日本の実力を計るうえでは、つねにこの2つの視点で見なければならないが、結論から言えば、残念ながらどちらについても状況は厳しいと言わざるを得ない。冷静に見て、このボスニア・ヘルツェゴビナ戦でそのことを再確認できたのが、皮肉にも今回のキリンカップ最大の収穫だったと思われる。

改善しないディフェンスの問題

とりわけ問題となっているのは、改善の兆しが見えないディフェンスだ。

アジア2次予選で格下相手に戦った際は、カウンターに対するディフェンスの問題が幾度となく露呈された。下がって守備を固める相手の試合では、どうしてもサイドバックとボランチが前がかりになりすぎて、後ろが疎かになってしまう。これについては以前にも書いたが、センターバック2枚だけで対応できずにピンチを招くシーンが目立っていた点は、早急に修正する必要があった。

しかし、今回対戦したボスニア・ヘルツェゴビナはそういった戦い方はしない。それだけに、ハリルホジッチ監督が就任当初から公言していた「しっかり守って、縦に速いサッカーを目指す」というスタイルを初めて試す機会を得たわけだ。

ところが蓋を開けてみれば、対カウンター対策のみならず、目指しているはずのディフェンスもままならないという現状が浮き彫りになってしまった。

そもそも7-2で大勝したブルガリア戦後、指揮官は次のように述べていた。

「ブロックをもう少し管理する必要がある。相手がさらに高いレベルになると、今日のようにはいかない。今日も『まずブロックをしっかり作るように』と、ずっと叫んでいた。私としては、まずブロックをしっかり作ってからプレスに行かせたかった。そして中央ではなく、相手をサイドに誘ってからプレスをかけたかった」

ブルガリア戦はアジア2次予選と同じような状況で戦ったので目をつむるとしても、積極的に攻撃をしかける格上のボスニア・・ヘルツェゴビナ戦こそ、ハリルホジッチが目指すサッカーを実践する絶好の機会だったはず。にもかかわらず、日本のディフェンスはまったく機能しなかった。

たとえば相手のボスニア・ヘルツェゴビナは、完璧とは言わないまでも、前線と最終ラインまでがコンパクトな陣形を保ち、連動性のあるディフェンスを実践していた。一方の日本はと言えば、立ち上がりから中盤と前線が前がかりになりすぎ、前線と最終ラインの距離が離れて全体が間延び。相手ボール時のポジショニングも動き方もバラバラで、連動性の部分で大きな問題を抱えていた。

もっとも、この原因が選手だけにあるとは思えない。指揮官の言う“デュエル”、つまり1対1での球際の強さを求めるあまり、選手たちがボールに行きすぎて、ポジショニングの意識が薄れてしまっているかもしれないからだ。むやみに自分のポジションを空けてしまえば、相手に裏のスペースを与えてしまいやすい状況が生まれてしまう。少なくとも、この部分から修正しなければ、指揮官の目指すサッカーは実現できない。

この点についてハリルホジッチは「トレーニングでは強調してきた」と語っているが、実戦の場で自らのスタイルを選手に実行させられないとなれば、それこそ指揮官にそのメソッドはないのかと、その手腕に疑問符がつく。

確かに後半に遠藤をボランチで起用したことでDFラインの前のスペースは多少埋まったが、それでもトータルとして問題が解決したとは言えないレベルだった。しかもカウンターに対する対策も放置されたまま。これでは、W杯本大会でグループリーグ突破が困難なことはもちろん、アジア最終予選で痛い目に遭う可能性が十分にあると見るのが当然だ。

今から4年前のザッケローニ時代。少なくとも、そのような初歩レベルのチーム作りは完成した状態で最終予選に臨むことはできていた。就任直後からディフェンスの基本をチームに徹底させようとした結果、ディフェンスには安定感があった。

なかなか新しい選手が台頭しない点も含め、現在の日本が明らかに4年前よりも厳しい状況に見える理由だ。

確かに今回のキリンカップでは、心身ともに良い状態の清武が相手にとって脅威となること、宇佐美がドリブルで相手をはがせる貴重な戦力であることは確認できた。これは収穫のひとつだと言える。

しかしながら、ディフェンスの構築をせず、攻め勝つだけで勝ち抜けるほどアジア最終予選は甘くはないだろう。

とにもかくにも、時は待ってくれない。3ヵ月近い空白を置き、9月1日のUAE戦からアジア最終予選がスタートしてしまう……。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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