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おしりの健康は持ち歩く時代 〜携帯用おしり洗浄器を海外旅行、災害時に〜

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
(写真:アフロ)

※おしりの健康の話なので食事中の方はお気をつけください。

海外旅行やアウトドアでウォシュレットが無くて困ったりおしりが痛くなってしまった経験がある人は多いのではないだろうか。

筆者も年に2回ほど仕事でヨーロッパに行くが、そのたびにウォシュレットがない一週間を過ごしお尻を痛めて帰国している。それが嫌で海外への滞在を短くしようかと考えるほどである。肛門の清潔を考えてもあまり良くはないし、ウォシュレットに慣れきった日本人にはそれがない一週間の滞在はなかなか辛い。また、女性は生理中の不快感などで困ることも多いと聞く。

先日筆者は大腸肛門病学会(1940年創立)という学会に参加した。この学会は肛門の専門家たちが集まる日本で一番大きな学会である。

そこで紹介されていた「携帯おしり洗浄器」という器具に出会ったので紹介したい。この「シュピーラーSP170」という道具はいわば携帯用のウォシュレット。片手でちょうど握れるくらいの大きさのボトルで、ふたを外すとあの見慣れた形のノズルが出てくる仕組みだ。

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厚生労働省ホームページによると、日本に186,000人(痔核・痔瘻・裂孔)いるといわれている痔の患者さん。そんな人々にとって、おしりの洗浄は重要だ。

学会会場で知人の肛門科医師に聞いてみた。

痔におしり洗浄がいい理由は、

・肛門を清潔に保てる

・洗浄の刺激でスムーズな排便を促せる

・温水を使えば肛門の緊張を和らげられる

だそうだ。

また、痔の患者さん以外にも、妊婦さんや高齢者など肛門のトラブルで困っている人は実はかなり多い。

そんな方にとっても肛門の清潔はもちろん重要である。

そして特筆すべきは、これを災害用にも利用できるということ。あまり知られていないことだが、災害時におしりの清潔が保てないことは避難中の方にとって大問題だ。食料や飲料水など必須物資が優先され、下(しも)のほうまでケアが届きにくい。しかしおしりから健康を損ねたり、不快感から気分が落ち込むことはとても多い。排便や排尿などおしり周りのことは、普段無意識に機能しているためそれが失われると著しくQOL(Quality of Life;生活の質)が低下するのである。

また、この製品はビデとしても使えるため、生理中の女性の不快にももちろん良い。事実、通販生活の「女性の避難袋」にも採用されている。

洗浄器を実際に噴射しているところ(写真は株式会社シュピューラー・ジャパンより)
洗浄器を実際に噴射しているところ(写真は株式会社シュピューラー・ジャパンより)

海外旅行やアウトドアに、また災害時の備えにひとつあると重宝するだろう。

※記事中に使用した「ウォシュレット」はTOTO株式会社の商標として登録されており正しくは「洗浄機能付き便器」などとすべきですが、一般に広く通用しもっともわかりやすいため使用しました。

※紹介した製品の販売会社と筆者に利害関係はありません。

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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