Yahoo!ニュース

糖質制限ダイエットって効果があるの?

成田崇信管理栄養士、健康科学修士
(写真:アフロ)

糖質制限ダイエットが最近注目を集めているという話を耳にしました。なるほど、テレビの健康番組でも夕食にごはんを食べない食事方法が紹介されていたのはその流れなのでしょう。

糖質制限というと、以前からアトキンスダイエットという、糖質の摂取量を非常に減らす食事法がありました。また、糖尿病の食事療法としても有効であるとされ、血糖コントロールを目的とする糖質制限食が広まりつつあるようです。

しかし、糖質制限といっても定義もあいまいで勧める人によって食事内容が異なるような実情です。

今回は、糖質制限には減量効果や安全性について現在わかっている事や、私の意見を書いてみようと思います。

■糖質制限食ってどんな食事?

主食を1食だけ抜くものから、1日の食事からのエネルギー(いわゆるカロリー)のうち、糖質の割合を30~45%ぐらいにする緩やかな制限のもの、糖質を食事から極力排除して、たんぱく質や脂質で補うものまで様々です。

大まかな理屈としては、糖質(主にデンプン)を摂取すると消化吸収され、血糖値が上昇し、それを細胞が栄養として利用するために必要なインスリンが分泌されるのですが、インスリンには体脂肪の合成も促進する働きがあるため、糖質を抑えると肥満防止になるかもしれない、というものです。

もう一つは、食事に占める割合で一番多い糖質を減らすことで、難しいことを抜きにエネルギー摂取量を減らせるということです。肉や魚などを抜いてしまうと、体に必要なビタミンやミネラルの欠乏になりやすいですが、主食を減らす場合にはそうした危険が比較的少ないと考えられるためです。

■実際の効果は?

では、糖質制限で期待できる減量効果はどれぐらいあるのでしょうか?

糖質を制限し、その分をたんぱく質や脂質に置き換える食事と、通常のエネルギーバランスの食事の減量効果を見た研究では、当初6ヵ月程度は糖質制限の食事で大きな体重減少が見られるものの、その差は1kg程度で、その後は横這い(1年半以後は差が殆ど検出できないが、食事が続かなかったためである可能性もある)になり、糖質制限自体のダイエット効果というのはあまりなかった、という結果がでております。

食事からの総エネルギーが同じならば、減量効果は一緒という当たり前の結果がでたわけですね。

次に、主食を抜いて糖質摂取量を減らす食事について考えてみます。おかずを増やす事なく、単純に主食を抜いたり減らしたりするのであれば、十分に減量効果が期待できるでしょう。しかし、それがお酒を飲む口実であったり、間食をとる切っ掛けになれば台無しです。どの減量方法であっても、1日に消費するエネルギー量を超えないように食べることが大事なのはかわりありません。

目標は長い目で見て体重が減少することです。そのダイエット方法は長く続けることができるだろうか、という視点で選ぶのが良さそうです。

■健康への影響は?

極端に糖質を減らす食事方法は体に悪い影響を与えてしまう可能性があると考えられます。しかしながら、長期的に糖質制限の健康影響を見た信頼性の高い研究はほとんど見当たりませんので、健康に悪いとはっきりいえないのが実際のところです。

糖質を減らした分は脂質やたんぱく質から確保するため、食費が余計にかかりやすいという問題点が先ず考えられます。食費を安く抑えようとすると、魚の割合が減り飽和脂肪酸多めになりがちです。肉の摂取量が増えすぎれば、先日話題になった大腸がんなどのリスクも気になるところです。また、たんぱく質の摂り過ぎは腎機能に問題がある人にとっては、病気の悪化を招くことがわかっております。栄養学を良く理解している人が、自分の体の状態に配慮しながら行う場合には問題は少ないと思いますが、一般の人がカジュアルに行うような食事法としては推奨できません。

糖質を減らす食事法に共通する問題点としては、食物繊維の確保が難しいということでしょう。便秘の予防や腸内環境を整えるためにもある程度の糖質と食物繊維は採りたいところです。豆類やナッツ類などは積極的に食べるようにしましょう。

■今回のまとめ

・食べたエネルギー量よりも消費量が上回ればやせますし、下回れば太ります

・極端な糖質制限で栄養バランスをとろうとするとお金がかかります

・極端な糖質制限食をする場合には、栄養学の知識と健康チェックが大事です

・糖質を減らすと食物繊維が不足しやすいですので豆やナッツを食べましょう

・無理なく長く続けられる方法かどうかが大切です

様々なダイエット方法がありますが、どの方法であっても健康を損なうことのないよう、どうぞ気をつけて欲しいと思います。そして、メディアの方におかれましては、ダイエット法を紹介するときには安全面に対する周知についても十分な配慮をしてほしいと願います。

参考文献

Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids. Trumbo P, Schlicker S, Yates AA, Poos M; Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine, The National Academies. J Am Diet Assoc. 2002 Nov;102(11):1621-30.

Low carbohydrate versus isoenergetic balanced diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis. Naude CE, Schoonees A, Senekal M, Young T, Garner P, Volmink J.PLoS One. 2014 Jul 9;9(7):e100652.

糖尿病食としての糖質管理食について知りたい人へ

筆者ブログ

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120731/1343725208

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120801/1343814599

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120808/1344412205

管理栄養士、健康科学修士

管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で「食と健康」に関する啓もう活動を行っている。猫派。著書:新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK (内外出版社)3月15日発売、共著:謎解き超科学(彩図社)、監修:すごいぞやさいーズ(オレンジページ)

成田崇信の最近の記事