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インドが変わる、世界が変わる!

にしゃんた社会学者/タレント
インドが変わる、世界が変わる!インドと日本は相思相愛!?

世界の目がインドに注がれている

「インドが変る!世界が変わる!」在日インド人の友人が私の顔を見るなり、手を振りながら大きな声で、唐突にそう叫んだ。顔が何とも嬉しそうだった。1ヶ月以上かけて83 万箇所の投票所を使って行われたインド総選挙が5月16日に開票された。長いインドの歴史の新たな時代の幕開けとなるか、今世界の目がインドに一極集中している。インド政治名門ネール・ガンディー・ファミリの末裔ラーフル・ガンディーが率いるインド国民会議に圧勝したインド人民党を率いるナレンドラ・モディ(Narendra Modi)が第18代インド首相に選ばれた。66%を超える過去にない高い投票率は他ならぬ現状のインドに対する国民の不満の高さと改革への望みの表れでもあった。

モディに対する国民の支持、期待を支えたのは3度再選、13年にわたるグジャラート州首相として積み重ねた実績である。任期中に州民の収入を4倍にした。高い経済効果を支えたのは民営化の促進および外国投資の積極的な受け入れであった。誘致に当たりインフラ整備充実を徹底させた。中でも電力不足がインドで慢性化している中で、グジャラートは唯一停電と無縁の州と言われるまでになった。モディの経済政策としては、新自由主義に近く、小さな政府や民営化の推進を主張しており、元イギリス首相マーガレット・サッチャーになぞられ、インドのサッチャーと揶揄される。

モディは政治一家とは無縁で屋台で紅茶を売る父のもとで生まれ、政治家として後ろ盾のない苦労人で叩上げである。本人や家族関係者が現在でも質素な生活を送っているなどのクリーンな姿が伝えられ、汚職疲れしたインド国民の目には理想的なリーダーに映った違いない。さらにシン前政権への国民の不満もそのままモディ支援に転じた。5月26日に盛大な式典においてモディがインド首相として誓いを立てた。世界一の民主主義国としてのインドに世界中から熱い眼差しが向けられている。

日本のインド ー 西葛西

ごく一部の人間除いてインドは日本人にとってどこか遠い存在である思われている。インドを少し近く感じてもらうきっかけを求め、日本有数のインドコミュニティである江戸川区の西葛西を訪れた。

在日インド人といえば、元々は貿易に関わっているインド人(印橋)が多く、港のある神戸や神奈川で定住している人が多かったが、江戸川区・西葛西は、新渡来のインド人によって形成され、職業としては主にIT技術者が多い。今では在インド人全体の約1割となる2万2千人がここに生活している。もうここは日本のインドとしか表現しようがない。

西葛西の駅降り改札を右側に出て10数分程度歩くと清新町がある。30年前は何もなかったこの一帯が西葛西の駅が出来たあたりから新興住宅地として発展し、現在は80棟の大きなマンションが軒を並ぶまで巨大化した。「団地に住むインドの割合」について地元住民に聞くと「半分」や「半分以上」と答えた人も多かった。より正確に住人を把握しようと地元の不動産屋に聞いたところ、団地全体6000世帯あるうちの2、3割はインド人であった。ちなみに任期付きでインドから日本派遣されているエンジニアも多く、ここのマンションでは分譲はごく一部で賃貸で住んでいるインド人が圧倒的に多い。また徐々に増えてきているものの、福島放射能漏えい事件をうけて逃亡帰国者がどっと増え、西葛西のインド住民が一気に減った。客がいなくなったため閉店したが、以前は団地のショピングモールの中にはインド雑貨専門店などもあった。

インド人が西葛西に住む所以としてガンジス河を彷彿させる荒川が側に流れているためと紹介したら面白いが、実際のところ違う。彼らがここに住むようになった大きなきっかけは、それほど昔ではなく記憶に新しいいわゆる2000年問題である。コンピュターの不具合が生じるのではないかと日本中に緊張が走った中、その対策要員として重宝がられたのはインド人IT技術者であった。IT企業が多く集中している都心からの近さ、例えば大手町辺りからここまで10分程度でアクセス出来、同じアクセスで言うとインド行きの飛行機が飛ぶ成田空港にも近い。

ここの団地はニュータウンでしがらみがないこともプラスに働いているだけではなく、賃貸の安価に加え、礼金、保証人、更新料だけではなく、手数料までもが不要の物件が多い。インドのゴッドファザーこと、江戸川インド人会会長、チャンドラニ氏の存在も大きい。同氏は1970年代後半に来日し、紅茶などの輸入物を商売にしていた関係で倉庫街の東京湾が便利だった西葛西を選んだ理由だった。その彼が自然の流れで1900年代後半から徐々に増えた新渡来インド人の相談を買って出るようになった。住まいや食事まで生活全般の相談に乗ってくれるここに住む頼れるこの先輩の存在がインド人コミュニティーをここまで大きくするにあたって果たした役割が大きい。

10月にはインドのヒンドゥ教の新正月を祝う「ディーワーリ西葛西」が盛大に開催される。遠くからやってきて参加する日本人も非常に多い。今年で15年目を迎え、インドからの渡来人の歴史に思いはせることができる。今年に入り、インド人学校もここに引っ越してきており、他のインターナショナルスクールと比べ経済的で、わが子を通わせている日本人も多い。もちろん近くにはヒンズ寺院(船堀)もインドさながらのベジテリアン・レストランもあり、連日にぎわっている。江戸川区、西葛西がインド人コミュニティーとして、そしてインド・日本の交流の場として今後とも発展する一途をたどることは間違いないだろう。

(次回に続く)インドが変わる、世界が変わる、モディが変える!?

社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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