長崎の姉妹都市だったドイツ・マクデブルクの魅力
ドイツのガウク大統領は11月14日から18日、東京・京都・長崎の三都市を訪問された。なかでもドイツの現職大統領としてはじめて訪問した長崎の原爆資料館では、「過去の遭遇に強烈な印象を受けた」と万感の思いを語られた。
ところで、この長崎の姉妹都市だったマグデブルクをご存知だろうか。
エルベ川沿いのハンザ同盟都市マグデブルクは、ドイツ北東部ザクセン・アンハルト州の州都だ。マグデブルクは1987年から1996年まで長崎と姉妹都市提携を結んでいたものの、疎遠になったことや財政面の理由から提携を解消したという。
長崎のように原爆を受けた悲惨な過去はないものの、マグデブルクは三十年戦争、連合軍の大爆撃など幾度も戦争と破壊を体験。そんななかでも、市民は1200年の歴史を守り続け、復興を遂げてきた。
伝統と近代の融合した古都マグデブルクの魅力をお伝えしたい。
ドイツ最古のゴシック大聖堂
神聖ローマ皇帝オットー一世と妻エドギタの棺が安置されているマグデブルク大聖堂(聖マウリティウス大聖堂と聖カタリーナ教会)は、14世紀に建設された国内最古のゴシック様式建築としてドイツ史上の重要な役割を果たしている。
オットー一世は、妻にマグデブルク宮殿をプレゼントしたほど、この街のファンだったという。マグデブルクはオットーの街とも呼ばれ、市民は今日でもオットーを敬愛し誇りにしている。
現代建築・フンデルトワッサーの集合住宅「緑の砦」
大聖堂広場に立つと、歴史の重みを感じる大聖堂とは対照的なピンク色の建物が目に飛び込んでくる。その外観と緑豊かな一角は街の中心部で特異な存在だ。
この建物は、オーストリアの芸術家で建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1928年12月15日-2000年2月19日)のデザインによる最後の作品となった集合住宅。
2005年に完成した通称「緑の砦」は、ホテル、アパート、レストラン、ショップ、小劇場や診療所を併設する。
自然への回帰を唱えたフンデルトヴァサーの建築ブランド「鮮やかな色使いと緩やかな曲線デザイン」がこの建物にぎゅっと詰まっているかのようだ。
モデルルームを見学した。まるでデザイン博物館に紛れ込んだかのようで、住宅とは思えないほど斬新なイメージを受けた。ちなみに家賃は、100平方メートルの部屋で約1000ユーロ(約12万円)。
ミレニアムタワーとエルバウエンパーク
エルベ川沿いにあるエルプアウエンパークには、ミレニアムタワー、湖のステージ,蝶ハウス、遊園地、スポーツ施設、アート作品、テーマガーデンなどがある。
このパークで絶対見逃せないミレニアムタワーは、連邦ガーデンショーを機に1999年に建てられたドイツで一番高い60メートルの木製の建造物。
建築家ブルーノ・タウトの業績
旧東ドイツ・ケーニスベルク出身の建築家ブルーノ・タウト(1880年5月4日ー1938年12月24日)は、マグデブルク市の建築家長として、色彩宣言や衝撃的な発言をした。それには賛否の声があったものの、タウトは建築問題解決として共同住宅街を造成しはじめ、マグデブルクでは多くの建築を設計した。
現存するタウトの建築物は、オットー・リヒター通りの集合住宅で見られる。色彩豊かな壁のモチーフが周囲の住宅とは異なり、個性的だ。オットー・リヒター通りは街の中心から7キロほど離れており現地まで少し時間がかかるが、一見の価値があるお薦めスポットだ。
エルベ川の上を水路が交差する・驚きのウォーターブリッジ
この街を語るには、運河と運河を結ぶ「マグデブルク・ウォーターブリッジ」をはずすことは出来ない。
ヨーロッパ最大級の立体交差水路地点マグデブルク・ウォーターブリッジは、ミッテルランド運河とエルベ・ハーフェル運河を水路で結ぶために建設された、エルベ川の上を通る水路だ。この水路は全長918メートル、幅34 m、深さ4.25 m。
ちなみにミッテルランド運河は、東西ドイツを結ぶ唯一の、しかも国内最長の水路として鉄道網のなかった頃から物流の要として重要な販路でもある。
エルベ川と東西を結ぶ二つの運河を効率よく移動しようというウォーターブリッジの構築案は、1877年からあった。その後、戦争や様々な理由で建設は中断されたままだったが、2003年にようやく完成。
言葉で説明しても、なかなかわかりにくいかもしれないが、下図をご覧いただければよくわかるだろう。
かって、ミッテルランド運河(Mittellandkanal)とエルベ・ハーフェル運河(Elbe-Havel-Kanal)を行き来するには、エルベ川しか航路はなかった(赤点が旧航路)。それがマグデブルク・ウオーターブリッジ(黄色の点)を利用することで、時間も距離も短縮できるようになった。
マグデブルク・ウォーターブリッジはその利便性だけでなく、街の観光名所として大きな注目を集めている。
取材協力ドイツ観光局