日本を襲う台風18号を「ひまわり」が監視中 38年前の初画像には沖永良部島を襲う台風
台風18号が北上し、東海地方から四国地方に上陸する可能性が高くなっています。この台風18号を静止気象衛星「ひまわり」が2機体制で常時監視をし、これに基づいて台風情報が発表されています。
日本初の静止気象衛星「ひまわり」が初めて画像を送ってきたのは、今から38年前の昭和52年(1977年)9月8日12時の可視画像(図1)です。オーストラリアの東海上では時計回りに渦をまく低気圧、沖縄の南海上に反時計回り渦をまく台風9号の雲が見えます(低気圧の渦の回りは北半球と南半球では逆です)。
沖永良部台風で陸上の最低気圧907.3ヘクトパスカルを観測
台風9号は、その後、勢力を落とさずに9日23時前に沖永良部島を直撃、907.3hPaと言う日本最低気圧を観測したことから、気象庁は「沖永良部台風」と命名しました。沖永良部台風が直撃した沖永良部島では、最大瞬間風速は60.4m/sを観測し、半数の住家が全半壊しするなど、死者1名、住家損壊5119棟、進水3207棟などの被害が発生し、奄美諸島ではさとうきび等の農作物に大きな被害が発生しました。
東シナ海であわや漁船の大量遭難
気象庁は、台風9号が北上して九州上陸という予報をしましたが、予想に反し、東シナ海を西へ進み、中国の揚子江河口付近に上陸しました(図2)。このため、東シナ海で操業していた約300隻の底引き漁船が台風に巻きこまれ、あわや大惨事ということがおきています。これは、日本東方の太平洋高気圧が急速に勢力を強めて西に張り出してきたこと、上層の低気圧との相互作用が予想できなかったこと、その場所が東シナ海の真中という気象データの空白地域であったからです。
早められた気象衛星による観測開始
台風9号の進路予想に失敗したとき、「ひまわり」の運用が始まっていれば、もう少し台風予報がうまくいったのではとの指摘がありました。このため、「ひまわり」の機能チェック作業などのスケジュールが前倒しとなり、9月17日からはチェック作業の合い間を縫って、1日2回観測が始まりました。設計寿命から「ひまわり」は、約3~4年毎に1個打ち上げないと連続して観測を続けることができません。このため、昭和56年に「ひまわり2号」が、昭和59年に「ひまわり3号」が打ち上げられています。
「ひまわり」は2機体制に
「ひまわり6号」で観測継続の危機がおきます。「ひまわり6号」が、平成11年11月15日の打ち上げに失敗したためですが、このときは、「ひまわり5号」の延命措置とアメリカの中古衛星「ゴーズ9号」借用(アメリカ西海岸上空から西へ移動させて利用)で何とか継続させています。平成17年2月26日に「ひまわり6号」が打ち上げられて「ゴーズ9号」の観測を引き継ぎ、翌年に打ち上げられた「ひまわり7号」が「ひまわり6号」のバックアップになっています。これは、気象衛星の重要性が増し、長期間の欠測を避けるためで、正確に言うと、平成18年9月4日以後は、「ひまわり」は2機体制の運用となっています。現在は「ひまわり8号」が観測運用中、「ひまわり7号」が待機運用中ですが、平成28年度に「ひまわり9号」が打ち上げられて待機運用となると、「ひまわり7号」が引退となります。
図の出典:饒村曜(1986)、台風物語、日本気象協会。