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晴れて風が弱くても海辺は注意 台風20号から変わった温帯低気圧からの高波

饒村曜気象予報士
気象衛星ひまわりの可視画像(平成27年9月21日11時、気象庁HPより

日本の東海上にある台風20号は9月21日3時に温帯低気圧に変わりましたが、台風によって生じた2mのうねりが北海道から本州の太平洋沿岸に入っていますので、シルバーウィークは、高波に注意が必要です。

図 沿岸波浪実況図(平成27年9月20日21時、気象庁HPより)
図 沿岸波浪実況図(平成27年9月20日21時、気象庁HPより)

風浪とうねり

波は風浪とうねりが合わさったものです。

海面を吹く風によって直接起こされた波を「風浪」といい、波の波長は短く、個々の波は尖っています。

一方、ある海域で発生した風浪が他の海域に伝わっていった波や、風浪を起こしていた風が弱まった後に残された波を「うねり」といい、風浪に比べて波は丸みをおび、波長も長くなっています。

波は水深が浅くなると海底の地形の影響を受けて、波高が高まって波形が険しくなって砕けやすくなったり、岬付近では波が集中して波が高くなったりするなど、複雑なふるまいをしますが、これらの変化は、うねりのような波長の長い波ほど大きくなります。つまり、沿岸部では、うねりは危険な波なのです。

休日で好天の時は「うねり」に注意

風が強いときに大きくなる風浪と違って、うねりがやってくる時は、風が弱いために油断しがちです。休日は多くの人が海辺で楽しみますが、好天で風が弱くても、台風のうねりがやってくるときには、特に注意と言うことになります。

休日と好天とうねりが重なった時の海の事故

平成6年(1994年)9月18日(日曜日)は、台風24号が日本の東海上をかなり離れて北上しています。しかし伊豆諸島や関東から四国までの各地で、ダイバーや釣り人が高波にさらわれる事故が相次ぎ、6名が死亡しています。

また、平成14年10月13日(日曜日)は、台風22号が日本の東海上をかなり離れて北上していますが、東北から九州の太平洋側にかけての広い範囲で、堤防を歩いていた人や釣り人が高波にさらわれる、あるいは釣り舟などが転覆するという事故が相次ぎ、8名が死亡しています。

台風20号が温帯低気圧に変わったといっても、「腐っても台(風)」です。シルバーウィークの海辺では、しばらくは、うねりに注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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