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南岸低気圧が通過中 55年前には富士山で大規模な山岳遭難

饒村曜気象予報士
富士山(写真:アフロ)

南岸低気圧が通過中で全国的に雨となっています。

日本の南岸に前線が停滞しているため、雨や曇りのところが多く、山茶花梅雨の様相を示しています。

この停滞前線上を低気圧が通過中で、ところにより強く降っていますので、高い山では危険な状態となっています。

富士山で雪崩被害

今から55年前の昭和35年11月19日、南岸低気圧の通過により富士山では大荒れとなり、吉田大沢の5合目で大きな雪崩が発生し、冬山訓練中の早大や東京理科大の学生など55名が巻き込まれ、死者11名、重軽傷32名という大惨事が発生しました。

雪崩には2種類

雪崩は、山の斜面の雪が重力の作用によって目に見える速さで崩落する現象のことで、雪崩層すべり面の位置によって全層雪崩(底雪崩)、表層雪崩などに分類されます。

全層雪崩は、主として春先の融雪期に起こる雪崩で、発生場所はほぼ決まっていて、雲面に割れ目やしわ、こぶが生ずるなど、発生の前触れが現れることが多いと言われています。

これに対して、昭和35年の富士山雪崩遭難のような表層雪崩は、主に降雪の最盛期に、多量の降雪量によって降雪中または降雪の直後に発生します。雪崩の走路は思わぬ場所まで達することもあり、過去に雪崩害の全くなかった場所で起こることもあります。防ぐことが難しい雪崩です。

表層雪崩(左)と全層雪崩(右)
表層雪崩(左)と全層雪崩(右)

山は逃げないので気象情報に注意を

南岸低気圧が通過するときは、山は平地以上に大荒れとなりますが、この時期には厳しい寒さが加わります。

休みがとれたからといっての、スケジュール通りの登山は危険です。

山は逃げませんので、気象情報に注意をはらい、再度訪れれば良いという心の余裕をもつことが大事です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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